言い訳したい材料もあるが…ブラジルに1-3で敗れる
評価を下すのは、4日後にしたい。
11月10日に行なわれたブラジルとのテストマッチで、日本は1-3で敗れた。
いくつかのエクスキューズはある。15年3月のヴァイッド・ハリルホジッチ監督就任からこれまで、このチームはアジア最終予選突破をターゲットとしてきた。テストマッチの対戦相手はアジアの国々が多く、他地域との顔合わせはごく限られ、それも国内で消化してきた。
日本を離れて世界のトップ・オブ・トップと対戦するのは、くしくも14年10月のブラジル戦までさかのぼらなければならない。所属クラブでブラジル代表選手とマッチアップをしてきた海外組もいるが、クラブと代表ではチームのメカニズムが異なる。クラブと同じ対応では物足りない。
さらに加えれば、チームが招集されるのはほぼ1か月ぶりだ。複合的な意味で〈空白〉が重なりあった今回の一戦は、決して簡単でなかった。そもそも、彼我の実力には歴然とした開きがある。
ゲームを変えたビデオ判定とPK
霧雨が降りしきるなかで動き出したゲームでは、想定外の不運に見舞われた。試験的に導入されたVAR──ビデオ・アシスタント・レフェリーによって、強制的に試合が巻き戻されてしまう。CKの守備で吉田麻也が相手選手を倒したとして、ブラジルにPKが与えられたのだ。ネイマールにきっちり流し込まれてビハインドを背負ったのは、キックオフから10分である。早すぎる失点は、その後の試合展開を難しくした。
次にネットを揺らしたのもブラジルだった。川島永嗣が2度目のPKを阻止した直後のCKで、井手口陽介がセカンドボールをクリアしきれない。このボールを左サイドバックのマルセロが、利き足の左ではなく右足を振り抜く。所属するレアル・マドリーでほとんど見たことのないようなパワフルショットが、ゴール左上に突き刺さった。
南米予選で一度も逆転負けしていないブラジル
リードを奪ったブラジルは強い。首位通過を果たした南米予選で、彼らは一度も逆転負けを喫していないのだ。
日本にとっては悩ましい展開である。できるだけ高い位置でボールを奪うのは、追撃態勢を整える前提となる。一方で、前がかりになるとカウンターを発動される。
ブラジルのカウンターは秀逸だ。ミディアムテンポでゲームを運んでいる時間帯でも、突如として、それでいて確信的にカウンターを仕掛けてくる。
果たして日本は、38分に致命的な鉄槌を受けるのだ。
右サイドからカットインした久保裕也がボールを失うと、黄色いユニフォームが日本のゴールへなだれ込んでくる。カウンターの第一波こそ跳ね返したものの、帰陣を最優先した守備陣形はセカンドボールの回収まで手がまわらない。吉田が蹴り出したボールをカゼミロがフリーで収め、日本の左サイドで2-1を作られる。オーバーラップした右SBダニーロのクロスを、ファーサイドのガブリエル・ジェズスにフリーでプッシュされてしまうのだ。
「ビデオ判定のPKでチームのバランスが崩れた。ブラジルはその状況を利用した」とは、試合後のハリルホジッチ監督の見立てだ。指揮官は「二面性があった」と続け、「後半はまったく違う状況になった。かなり満足がいく」と話している。
槙野のシュートなど後半には評価すべき点もあるが…
ブラジル相手に0-3から試合を引っ繰り返すのは、世界のどの国にとっても最高クラスの難易度だ。その意味では、流れのなかで意図的にボールを動かすことができ、CKから槙野智章がヘディングシュートを決めた後半は、ハリルホジッチ監督のレビューどおりに評価できるところがある。
ただ、ブラジルが意図的にペースダウンしたのは間違いない。日本にとって世界での現在地を知る機会は、ブラジルからすれば次のイングランド戦への助走だ。ブラジルの熱量が下がったから日本が盛り返した、との見方は成立する。
誤解を恐れずに言えば、ブラジル戦の目的は勝利ではなかった。アジア相手に戦い続けてきたなかで、何ができるのか、何ができないのかを確認する機会である。
だとすれば、次のベルギー戦が重要である。ブラジル戦の後半のような戦いを相手のテンションが高い時間帯にできれば、サッカー王国から受けたレッスンは無駄ではなかったということになる。
ベルギー戦へ評価を持ち越したいのは、そういう意味である。