「アラスカ」と「クルーズ」……日常から縁遠いワードが並び、「アラスカクルーズに乗船した」というとびっくりされる。実はアラスカは、カリブ、地中海とともに世界三大クルーズエリア。港には数千人を乗せた客船がいくつも停泊し、氷河の崩落や野生動物の観察、時期によってはオーロラなど、サプライズな体験を求める旅行者で賑わっている。
値段もさぞかし高いのでは?と想像するが、今回乗船した8日間のクルーズでは10万円をきるなど意外に手頃。更にこれには宿泊、移動、食事、エンターテイメントなどが含まれるというから驚きだ(※出航地のシアトルまでの飛行機代は除く)。
今回はプリンセス・クルーズの客船「ルビー・プリンセス」によるアラスカクルーズに乗船。アラスカクルーズの魅力、そして自然環境へ配慮した取り組みなどを紹介する。
アラスカクルーズのハイライト「グレーシャー・ベイ国立公園」とは?
今回乗船したクルーズは、インサイド・パッセージと呼ばれるアラスカの東南部、カナダに張り付くように位置する太平洋側の地域の航海だ。米国シアトル発着で、主な寄港地は、アラスカの州都「ジュノー」、ゴールドラッシュに湧いた「スキャグウェイ」、フィヨルドが織りなす自然美と原住民の文化が色濃く残る「ケチカン」など。それぞれの寄港地で、氷河や野生動物、あるいはアラスカの歴史・文化に触れる豊富なエクスカーションが楽しめる。
ただなんといっても、アラスカクルーズのハイライトといえば「グレーシャー・ベイ」での航海だろう。グレーシャーとは氷河の意で、直訳すると「氷河の湾」。実に16もの氷河が流れ込み、4000年前からの長い歳月を経た自然の営みを体感できると人気だ。また、野生動物も豊富に生息し一帯は自然保護区域。独自の自然環境や生態系から、世界遺産の一部にも登録されている。
マージェリー氷河の迫力ある崩落シーンに感嘆の声
グレーシャー・ベイの入り口付近には、クジラやイルカ、ラッコなどの海洋生物、陸には熊やオオカミ、そして空には鳥類というように数多くの野生動物が生息。航海日は、早朝にパークレンジャーが乗り込み、動物などの解説をしてくれるという。
ただ、この日はあいにくの濃霧。汽笛を鳴らしながら航海するほど視界が悪く、鳥の鳴き声はするものの動物の姿は確認できず……残念。それでも湾の奥へと進んでいくと徐々に霧は晴れ、4000Mを超える富士山より高い山が連なる圧巻の景色が目に入る。その中を船はゆっくりと進み、やがて目的地「マージェリー氷河」へ到着した。
青みがかったマージェリー氷河は高さ60M、奥にずっと続く様は迫力満点だ。ここで約1時間滞在し、船は左舷、右舷のどちらからも氷河を眺められるように旋回する。バルコニー付の客室なら、ルームサービスのコーヒーを片手に、部屋にいながら快適に絶景を楽しめる。雷のようなドーンという音がすると、ポロポロと氷河が崩落するのがみてとれ、その度にデッキでは感嘆の声があがり賑やかだ。
そしてひときわ大きな音とともに、氷河の大崩落が起こった。その模様がこちら。
客室のバルコニーからの光景とは思えず、思い返しても不思議な感じがする。地球規模の絶景を、整った環境の中で見学できるのは、クルーズならではのメリットだろう。
環境への配慮から、クルーズ船の運航は一日2隻のみ
マージェリー氷河を後にして湾を引き返すと、別のクルーズ船とすれ違う。実はこのグレーシャー・ベイを航海できるクルーズ船は、環境への配慮から1日2隻と決められている。そのうちの一隻が「プリンセス・クルーズ」の客船というわけだ。
また、航海したグレーシャー・ベイは、1794年にイギリスの探検家に発見された際には、氷河で覆われていたという。約100年後には70キロ近く後退し、そこが湾になったといい、地球温暖化を考える機会にもなる。
ただ、先にみたマージェリー氷河は現在も活動中だという。4000M級の山頂から崩落の見られた氷河の出口までは約30キロの急こう配。山に積もった雪に押し出され、氷河が崩落するのは自然現象とのこと。安心してダイナミックな自然の営みを楽しみたい。
プラスチックの利用は禁止。自然と共存するクルーズの取り組み
クルーズ船の数を規制する他にも、グレーシャー・ベイの奥にはアザラシの出産場所があり、シーズン中には近寄らないなど環境への配慮を行っている。
更にプリンセス・クルーズでは、船内でアラスカの自然や文化をより深く知るためのプログラム「ノース・トゥ・アラスカ」を開催。大自然に触れ、専門家による講演(※英語)を通じて、アラスカへの造詣を深めることができる。
また、グレーシャー・ベイの航海日には、船上のデッキには朝から以下のような案内看板が出され、自然環境を壊さないように注意を呼び掛けていた。
カフェでは、通常は使い捨てのカップで提供されるコーヒーをマグカップに入れて提供。風で飛ばされる恐れのあるストローや紙ナプキンはグレーシャー・ベイ航海中は控えるなど、自然に配慮をする様子が各所でみられた。
余談だが、こちらのカフェは24時間営業。スペシャリティコーヒーは有料なものの、ケーキやペストリー、ちょっとした軽食などが無料でいつでも楽しめる(※時間帯によりメニューは変わる)。グレーシャー・ベイ航海中は、食事に時間をとられるのがもったいないほど見どころが多く、カフェやルームサービス(※無料)が重宝する。
意外と手軽!シアトル発着アラスカクルーズ8日間で8万円~
今回乗船したコースは、米シアトルを出発し、冒頭のアラスカの都市の他、カナダのビクトリアにも寄港する。日本からシアトルまでの飛行機代は別途かかるが、クルーズ代金は8日間で内側客室なら8万円から(港湾関係費用、チップ代別途。2018年実施分)。代金には、宿泊費、移動費、一日5食ともいわれる食事、エンターテイメントやアクティビティも全て込みとなっている。
プリンセス・クルーズはプレミアム船で、船内サービスや施設のレベルも高く、紹介のインサイド・パッセージのコースには、日本人スタッフが乗船。船内新聞やレストランのメニューなど日本語でのサービスを提供してくれる。一生に一度は体験したいプライスレスな内容が満載でこの値段なら、現実的な選択肢といえるだろう。
アラスカクルーズのシーズンは5月から9月。クルーズシーズンが始まる春は、山に残雪があり白一色の景色が美しいという。気温が上がる夏にはバカンス気分も味わえ、9月になると、オーロラを見るチャンスも到来する。既にプリンセス・クルーズでは来シーズンの予約も開始。昨今、外国客船による日本発着クルーズが人気だが、ぜひ次は世界の寄港地へも足を延ばしてみてはいかがだろうか?
<関連リンク>
- プリンセス・クルーズ:2018年インサイド・パッセージ8日間(ルビー・プリンセスが運航。日本語サービス対象コース、予約受付中)
- 今回体験した模様をレポート中「シアトル発着アラスカクルーズ乗船記byルビー・プリンセス」
- まずは日本発着クルーズからという方は、オールアバウトクルーズサイトをご覧ください。