希望の党の登場で、大波乱が予想された衆院選だったが…
小池百合子都知事が率いる希望の党の登場で、当初は大波乱が予想された衆院選でしたが、終わってみれば与党圧勝、希望の党惨敗、立憲民主党躍進という結果に。希望の党の敗因については、小池代表の行き過ぎた言動が主な要因であったという声が多いのですが、問題はなぜひとつの言動がそんなにも大きな影響を及ぼすに至ったのか、です。
小池氏のイメージ戦略はどこでつまずいた?
このページでは、これまでも再三にわたり小池都知事の戦略について取り上げてまいりました。繰り返しになりますが、都知事選から都議選を経てここに至るまで、一貫して小池氏の戦略の基本にあるものはイメージ戦略です。今回も「日本をリセットする」「しがらみのない政治」等の聞こえの良い言葉を巧みに操ってフレッシュな「新党」のイメージを浸透させるべく、希望の党を立ち上げました。
しかし、つまずきはすぐにやってきました。民進党との合流は、新党の「新」イメージを明らかに濁らせるとともに、落日の既存政党との合流を可とすることで、むしろ懸念されていたビジョン欠如を浮き上がらせることになってしまったのでした。さらに追い打ちをかけたのが、各メディアが敗因の筆頭に挙げている「排除」発言です。私は、「排除」発言よりも前の段階で既にイメージ崩壊が始まっており、結果的に決定打となったのが「排除」発言であると見ています。
イメージ先行の「人気」は簡単に崩れうるもの
しかし、「排除」発言の影響力の大小を云々するよりも、むしろここで究明しておくべき重要なことは、都議選で自民党を相手に完勝した小池陣営がなぜ、今回あまりに早い段階からイメージ崩壊が始まり急激な失速につながってしまったのか、です。実はこの理由は簡単な話なのです。イメージ先行で作られたガラスの人気はマイナスイメージの付加によりいとも簡単に消え去ってしまう、そんなイメージ戦略メネジメントのセオリー通りにことが運んだだけのことなのです。
すなわち希望の党が、あっという間にマイナスイメージに塗り替えられてしまったのは、新党は有権者から見て単に「新しい」だけで軸が見えなかったこと言うこと、言い換えるなら中期的にどのような政治を実現するのかという「ビジョン」とも言うべきものが、有権者に伝わらなかったということに他ならないのです。同じように「自民党をぶっ壊す」というイメージ戦略で人気を集めながらも、郵政民営化を旗頭にして行政改革を断行するという「ビジョン」を国民に提示した小泉劇場とは、そこが決定的に異なっていたのです。
立憲民主党は相手の自滅によりイメージが向上した?
逆に今回、「排除」を受けて突如台風の目となり、議席数を大幅に増やして野党第一党になったのが立憲民主党でした。では立憲民主党は「ビジョン」が明確であったのかと言えば、こちらもまた、選挙に向けた緊急避難的な結党であり決してそうとは言えませんでした。ではなぜ、彼らが国民の支持を集め躍進を果たしたのか。それは、小池希望の党から「排除」されたおかげで、なぜ「排除」されたのかの裏返しとして主義主張が明確そうに思えたということがプラスに働いたのだろうと思います。これは、希望の党と比較した上でという観点も含まれており、ある意味、タナボタ的な勝利であったと言ってもいいと思います。
国民の多くは、「排除」と立憲民主党の結党を目の当たりにして、希望の党がイメージ先行で軸が見えない政党であると気がついてしまったのでしょう。となると立憲民主党の今は、ある意味で都議選に大勝した時の小池陣営に近い状況にあるとも言えそうです。相手の自滅により、相対的評価でイメージが向上した状況です。企業イメージなどにおいても、業界首位の信用失墜から二番手企業が急激にイメージを向上させるというケースは、間々あることです。もちろんそれが本物になるか否かは、二番手の戦略次第です。
希望の党は失地挽回を、立憲民主党が人気を本物にできるか
今回、希望の党がイメージによる人気向上の次の一歩でつまずいたように、イメージ戦略はその連続だけでは確固たる地位を確保するには至りません。向上させたイメージを裏付けるビジョンの提示こそが、戦略マネジメントとしては欠かせない部分であるのです。その意味では、立憲民主党もこれからの戦略マネジメントこそが重要であると言えるでしょう。
小池氏率いる希望の党が、イメージに頼らずここからどのような失地挽回策を繰り出してくるのか、また立憲民主党が相手の自滅で得た人気を本物にするために、どのように実のある政策ビジョンを提示してくるのか。野党の主導権争いはこれからが本当の勝負であると言えるでしょう。