神戸製鋼の強度偽装問題は約200社に及ぶ?
神戸製鋼所によるアルミ材の強度偽装が大きな問題になりつつある。三菱重工業の国産ジェットMRJやボーイング社の航空機、新幹線、そして身近なクルマまで、一部報道によると出荷先は約200社と幅広い分野に及ぶ見込みだそうだ。ここでは、自動車業界への影響について考えてみたい。
今回の神戸製鋼のデータ改ざんは、2016年9月1日から2017年8月31日に出荷されたアルミ・銅製品の一部で行われ、主にアルミ板、アルミ押出品、銅板条、銅管およびアルミ鋳鍛造品が対象の製品になると同社は公表している。
ただし、一部報道によると、データ改ざんは10年くらい前から組織ぐるみで行われていたそうで、その影響はさらに広範囲、過去まで遡りそうだ。
自動車メーカーで神戸製鋼製のアルミ材を使っていたのは、トヨタ、ホンダ、日産、マツダ、SUBARUなどが確認されたとしていて、ほかの輸入車メーカーなどにも拡大する可能性もあるかもしれない。
「強度偽装」があると安全性や耐久性に影響が出る可能性も
クルマに限った話ではないが、アルミ材に強度偽装があるとどうなるのだろうか?
アルミに限らずスチール(鉄)でもCFRP(炭素繊維強化プラスチック)であっても決められた強度(剛性)により安全性が担保されている。簡単にいえば、安全性に悪影響があり、場合によっては耐久性に影響がある可能性も否定できない。
自動車の分野では、かなり以前からアルミが使われてきた。日本車では1990年誕生の初代NSXなど、スポーツカーや高級車中心だったが、現在では軽量化を図るべく幅広い車種に使われつつある。
材料置換の主役であるアルミ材だったが…リコールや訴訟につながる?
アルミはスチールよりも強度に対する比重が小さく、軽量化に向く。スチールよりもコストがかかり、成形しにくい、という課題があるものの、「軽量化=燃費や運動性能向上」という利点により、クルマ業界における材料置換の主役になってきた(自動車メーカーが軽量化を進める理由はこちらの記事を参照)。
自動車メーカーにとって影響が大きいのは、大規模なリコールに発展した場合だろう。ようやく出口が見えてきたタカタ製エアバッグ・インフレーターによるリコールに加えて、クルマの場合は車種によって異なるが、ボンネットやテールゲート、ルーフなど幅広い部分に使用されているだけに、リコールになった際の対処方法も多岐にわたりそうだし、代替え部品の供給、入手という問題も起こりかねない。
日本ではこうした問題に対して比較的「大人しい」反応を見せる印象があるが、米国では訴訟に発展するケースもある。神戸製鋼製アルミが使われたクルマは、米国でも販売されているはずで、そうなると訴訟リスクも出てくる可能性があるだろう。