国内生産拠点を整理し、約2割の生産能力を削減
2017年10月4日、ホンダが「日本の四輪車生産体制を進化」するという発表をした。前向きにいえば、確かに生産拠点の効率化だが、実情は生産能力の余剰を削減するということだろう。
100万台強を維持してきたホンダの国内生産能力は約80万台となり、関連会社やホンダの生産工場と取引している部品会社などにも一定の影響がありそうだ。
EVシフト、自動運転など新たな時代に対応
ホンダによると、埼玉製作所における狭山工場の閉鎖、そして寄居工場への集約は、「電動化や知能化など新技術の急速な進展により、自動車産業は過去にない大転換期を迎えています。クルマづくりはこれから大きく変化することから、開発現場だけでなく生産現場も大きく進化させます」という前提があるという。
東京モーターショーでもホンダが披露、提案するいわゆる「EVシフト」やAIを使った新しいドライブ体験や自動運転技術などを実現するには、寄居工場を最新生産技術が備えられた寄居完成車工場に集約する必要があり、この集約は、2021年度を目処に完了する予定としている。
寄居工場は、モノづくりをリードする日本から海外の生産拠点として、世界の工場をリードする体制を構築するとしていて、つまりマザー工場化されるという。なお、人員削減はせず、寄居完成車工場を中心に異動し、これまでに培ってきた生産ノウハウを最大限に活かすそう。
鈴鹿製作所なども…最適な少量生産体制に進化
今回の生産拠点の整理は埼玉製作所にとどまらず、鈴鹿製作所を競争力のある軽乗用車およびスモールカーを生産拠点として、引き続きグローバルに水平展開する役割を担わせるとしている。
また、軽スポーツカーのS660や福祉車両などを生産している八千代工業の四日市製作所を子会社から完全子会社化。同車が蓄積してきた技術や人材を活かしながら、最適な少量生産体制に進化させ、さらなる高効率化を図るとしている。
他メーカーの戦略にも影響はあるか?
狭山工場閉鎖により、埼玉製作所の生産能力は約2割減り、高効率化が図られることになるが、日本の自動車市場が減少傾向にあることに加えて、使用部品が減る「EVシフト」を考慮すると、今回の生産拠点の整理、残される寄居工場の高効率化は妥当なのは理解できる。
今回の狭山工場閉鎖は、大手サプライヤーだけでなく、中小部品メーカーの取引先などにはあらかじめ伝えられていたのか分からないが、埼玉製作所周辺への影響は少なくないはず。
ホンダの生産拠点整理が他メーカーにも波及するかは分からない。しかし、日産のいわゆる「ゴーン・ショック」以来の大きな変革期に差しかかりつつあるようだ。