ネイマールはわがままなのか?
パリ・サンジェルマン(以下パリSG)に移籍したネイマールが、ピッチの内外でネガティブな話題の主役となっている。
パリSGにはウルグアイ代表FWエディンソン・カバーニがいる。在籍5シーズン目の彼は昨シーズンのリーグ得点王で、これまでチームを支えてきたとの自負は強い。今シーズンも開幕から5試合連続でゴールを記録しており、絶対的な得点源として君臨している。
一方のネイマールは、前所属チームのバルセロナでチームのシンボルになれないことから、パリSGに新天地を求めた経緯がある。移籍に当たっては挑戦という言葉を何度も使い、プロ選手としての純粋な向上心を強調したが、ブラジル代表で背番号10を背負う男だ。自身のアイドルだったメッシのもとを巣立ち、ヨーロッパでより高みに辿り着きたい気持ちは否定できないだろう。メッシやクリスティアーノ・ロナウドにあって自分にはないもの、つまりバロンドールのような個人タイトルを獲得したい、との野心もあるに違いない。
シーズン開幕直後に移籍したネイマールは、すでに埋まっていた背番号10を譲り受けた。クラブ側から「エース」の信任を受けたと、彼が受け取っても不思議ではない。
そうした経緯から、このブラジル代表はPKやFKも自分の仕事だと考えるようになったのではないだろうか。かといって、カバーニが素直に納得するはずもない。結果的に、チームがPKやFKや獲得するたびに、どちらが蹴るのかがニュースになっている。
本来ならば監督が仲介するべきだが…
こうした衝突は例外ではない。プライドも実力もある世界的なビッグネームがチームメイトになれば、意見がぶつかり合うこともある。大切なのは監督が交通整理をすることだが、パリSGのウナイ・エメリ監督は積極的に介入していない。
スペイン出身の45歳は、母国のバレンシアやセビージャで結果を残してきた。ヨーロッパではそれなりに注目度の高い指揮官だが、ネイマールとカバーニのようなビッグネームをセットであずかるのは初めてだ。今回のようなケースの処方箋は手元になく、それゆえに解決へ乗り出すことを躊躇っているのかもしれない。
タイトル獲得への根本的な問題とは?
ネイマールとカバーニの対立が決着しても、パリSGは根本的な悩みを抱えたままだ。
チーム編成のアンバランスさである。
ネイマールに加えてモナコからフランス代表FWキリアン・ムバッペも獲得したことで、攻撃の陣容はヨーロッパ屈指となった。アルゼンチン代表のアンヘル・ディマリアやハビエル・パストーレ、ドイツ代表のユリアン・ドラクスラーといった実力者が、ポジションを保証されていないほどである。
対照的なのは守備陣だ。
パリSGとブラジル代表で主将を務めるチアゴ・シウバのパフォーマンスが、緩やかな下降線を辿っているのは気になる。彼が定位とするセンターバックのポジションには、23歳のブラジル代表マルキーニョス、22歳のフランス代表プレスネル・キンペンベらがいるものの、ワールドクラスのFWとの駆け引きには不安を残す。バルセロナとユベントスを渡り歩いてきたブラジル代表ダニ・アウヴェスが、今シーズンから右サイドバックにいるのは頼もしいが……。
GKの補強は急務だ。フランス代表のアルフォンス・アレオラが正GKにおさまっているが、24歳の彼は安定感にいまひとつ欠ける。チームの危機を救って勝点を運ぶレベルには達しておらず、チャンピオンズリーグのような大舞台で結果を求めるならば、冬の移籍市場で経験豊富な守護神を獲得するべきとの指摘がある。
国内リーグのタイトルをモナコから奪い返し、欧州の頂点に立つのがクラブの野望でありネイマールの願いだ。しかし、超えるべきハードルは多い。