新入社員意識調査の「プライベート重視」傾向から見える“真相”

日本生産性本部が、「平成29年度新入社員『働くことの意識』調査」の結果をまとめ、公表しました。「プライベート重視」という回答の傾向から、働き方改革や人事マネジメントの課題を読み解きました。

新入社員の回答は社会情勢の変化を踏まえた正直な回答?

日本生産性本部が、「平成29年度新入社員『働くことの意識』調査」の結果をまとめ、公表しました。
 

調査の中で目立って増え、今年の顕著な傾向として見て取れるのは以下のような項目です。
 

  • 「同僚、上司、部下と勤務時間以外はつきあいたくない」:20.7%→30.8%(+10.1)
  • 「上司や同僚が残業していても自分の仕事が終わったら帰る」:38.8%→48.7%(+9.9)
  • 「デートの約束があった時、残業を命じられたら、断ってデートをする」:22.6%→28.7%(+6.1%)

 

これらの項目に共通する考え方は、「仕事よりもプライベート重視」の姿勢であると言っていいと思います。これだけ同じ括りの質問でばかり大きくポイントが増えているというのは、世代の変化というよりも昨今の社会情勢の変化を踏まえた正直な回答が増えた結果ではないのか、と見ています。
 

「働き方改革」の流れに、敏感に反応した新社会人

すなわち、昨年来政治的な動きも巻き込んでの「働き方改革」の流れは、企業で長年働いている人たちよりも、新たに社会人としてデビューした人たちが敏感に反応したのではないか、と思えるのです。
 

誰もが記憶にあるでしょうが、社会人なりたての段階で心底、「会社の人達とたくさん交流して仲良くなりたい」とか「デートの約束より仕事を優先したい」とか、思うはずがないのです。要は、過去の新社会人たちは叩き込まれた古い「社会人としての心構え」に従い、気持ちとは裏腹な回答をしていた人も多いと思うのです。
 

ところが、今は彼ら新社会人にとって、世間が味方です。政治が味方です。マスコミが味方です。ワタミが叩かれ、電通が叩かれ、残業が悪とされ、ワークライフバランスが声高に叫ばれ、プレミアム・フライデーが話題を集め、「働き方改革」が闊歩する……。そんなこんなのこの4月に新社会人になった彼らは、この時代に後押しされて本音でアンケートに答えた。それがこの調査結果の真相ではないのか、そんな風に思えるのです。
 

組織は新社会人の能力をどう生かしていくべきか

若手社員

では、企業側はどうするべきなのか。アンケート結果がこうだからといって、ビジネス界の右も左も分からない新社会人を彼らの意のままにしていたのでは、せっかくの新戦力が十分に活躍の場を得られるのか、そちらの方が不安になるのです。何といっても、経営の3大要素「ヒト」「モノ」「カネ」のトップに来る、企業躍進に向けた最大の原動力ですから。そして、ビジネスの社会で自身の能力を活かしきれずに十分な活躍ができないことは、何より本人たちに最も気の毒なことでもあるはずなのです。
 

しかしながら、マネジメント的に心しなくてはいけないことは、過去の時代よろしく有無を言わせず「いいから、社会常識に無知な君たちは会社の言う事を聞け」的なやり方は通用しないのだということ。もしそんなことをしようものなら、彼ら新社会人たちは逃げ出し、会社はメディアに叩かれ、「ブラック」のレッテルを貼られてしまうことでしょう。
 

「やりがい」をいかに生み出すかというソフト面改革が必要

ならば、どうするべきなのか。一昔前の転職雑誌のCMで、背中に大きな貝をしょった人が「転職でやり貝が大きくなりました」と言うものがありました。そうです、使い古された言い方ではありますが、「やりがい」をいかに感じさせ、前向きに会社や仕事と向き合う姿勢に方向づけするのかが、今の時代、最大の人事マネジメント的課題であると思うのです。
 

機械的な人事マネジメントの時代から、給与や福利厚生を充実させたハード面改革による人事マネジメントの時代を経て、いよいよ「やりがい」をいかに生み出すかというソフト面改革による人事マネジメントの時代が到来したと言ってもいいでしょう。
 

新入社員

そのキーになるのは管理者です。管理者が、部下から見て信頼感にあふれかつ魅力的な存在として、時には「デートより仕事」、「プライベートよりチーム」と思い仕事に向かわせることができるか。これまでも本当に強い企業は、その部分にこそ底力の源があったと思います。
 

過去の人事労務がらみの問題事象は、経営者を含めた管理者の姿勢や意識に起因したものがほとんどです。いかにして、管理者を部下から見て魅力的な人間に育て上げるのか。新社会人たちがアンケートで見せた時代を反映した傾向に答える、すなわち本気で「働き方改革」に応える企業づくりの回答は、そこに存在していると私はみています。

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