野党は罷免要求も、政府は拒否
稲田朋美防衛相が東京都議選の応援で「自衛隊としてもお願いしたい」と発言し、撤回した問題が波紋を広げています。
参照:
4野党、防衛相罷免を要求 党首が声明、官房長官は拒否
稲田氏発言で臨時国会召集要求 4野党、首相を追及
民進、共産、自由、社民の野党4党首は安倍晋三首相に「罷免(ひめん)」を要求する声明を発表しましたが、菅義偉官房長官は拒否しています。29日は、野党4党の国対委員長らが大島理森衆院議長に申し入れたほか、民進党の山井和則国対委員長は自民党の竹下亘国対委員長に、稲田氏の罷免等を要求しました。
4党首は首相の任命責任を問うため、臨時国会の召集も求めています。これは、都議選に向けてのアピールとみる報道もあります。
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稲田氏の発言はどこに問題があった?
この発言はどのような問題があるのでしょうか。野党は公職選挙法などに抵触しているとしています。これに関連した説明を、社会ニュースに詳しいファイナンシャルプランナーの伊藤亮太氏は『政治家や後援会がしてはならないことって?』でしています。
伊藤氏によると、公職選挙法により禁止されている事項に、「地位利用による選挙運動の禁止」と「寄付の禁止」があるとしています。地位利用による選挙運動の禁止とは、「国又は地方公共団体のすべての公務員はその地位を利用して選挙運動をしてはならない」というものだそうです。
「例えば、市町村長が部下(公務員)に人事権などの影響力を行使して、選挙運動をさせるといったことはできません」(伊藤氏)
つまり、稲田氏は防衛庁のトップなので、今回の発言が部下に影響を与えかねないということから同法に抵触しているのではないかという意見があるのです。また、それに加えて自衛隊員は自衛隊法により選挙権の行使を除く政治的行為が制限されていることもあり、発言がより厳格に見られているようです。
なぜ野党は安倍首相に罷免を要求する?
なお、現代の日本では、国会議員ら政治家たちが大臣となり、財務省や外務省、防衛庁などの中央省庁で働いている官僚たちを監督、コントロールするしくみになっています。大臣は正式には「国務大臣」といい、内閣総理大臣が任命します。また罷免、つまり辞めさせることも内閣総理大臣の専権事項です。そのため、野党が安倍首相に罷免を要求しているということです。
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臨時国会はどういう時に召集できる?
臨時国会の召集も求めているということですが、どのようなものなのでしょうか。これについては社会ニュースに詳しい松井政就氏が『国会にはどんな種類があるのか、基礎の基礎を解説』で解説しています。
臨時国会は、臨時の必要がある際に招集されるものだといいます。
「例えば災害対策など緊急を要する事態への対応や、そのための法律や予算案の審議をする必要が生じた場合に開かれるのも臨時国会です」(松井氏)
また、衆議院あるいは参議院のどちらかの総議員の4分の1以上から要求が出された場合や、衆議院議員の「任期満了」による総選挙や参議院議員選挙の後にも臨時国会を召集しなければならないことになっているのだといいます。
相次ぐ閣僚の失言…どうして続くのか?
なお、内閣を組織している国務大臣、つまり閣僚の失言というのはここ最近相次いでいます。どうしてこうも続くのか、という問いについては企業コンサルタントの大関暁夫氏が『相次ぐ「閣僚の失言騒動」をマーケティング目線で読み解く』で解説をしています。よく言われる「一強のおごり」は、高度成長期における「プロダクトアウト戦略」から抜けられないからではないかというものです。
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東京都議選の投開票は7月2日に迫っています。社会ニュースに詳しい西村創氏は『いよいよ都議選! 議席数など、選挙の仕組みと基本』で、都議選は地方自治体の議会選挙といっても、日本全国で最も多くの有権者を抱える東京における大型選挙であることから、選挙結果は、直近の政治情勢を反映するものとして日本全国から注目されていると説明しています。
稲田氏の発言が今後どのように影響してくるのか、注目されます。
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