都道府県別では東京が29人と最多
総務省消防庁は9日、1~7日の1週間に全国で422人が熱中症によって救急搬送されたと発表した。うち1人が死亡した。都道府県別では東京が29人と最多で、大阪の22人、神奈川の21人となっている。なお、昨年同時期の搬送者数は413人だった。
これから本格的な夏を迎えることになるが、気温や湿度が高い日には熱中症予防が必要となる。どのようなことに注意が必要だろうか。医学博士の清益功浩氏がAll Aboutで以下のように解説している。
**********
熱中症とは
清益氏によると、暑い夏の日に強い日差しの下や熱い気温下にいた時に起こる熱中症は非常によくある病気といい、ちょっとした工夫で予防できる一方、重度の症状になると命の危険も伴うとする。
清益氏は、熱中症の種類は、以前は体温や状態によって以下の4つに分けられていた(旧分類)。
- 熱射病(日射病):体温上昇により腎臓の機能が壊れ、尿が出なくなる
- 熱失神:体温は平熱。顔色が悪くなり血圧が低下する
- 熱痙攣:体温は平熱。手足の筋肉がピクピクする
- 熱疲労:体温は平熱。気温の暑さで夏バテのようになる
熱中症の分類(新分類)とそれぞれの症状・治療法
清益氏によると、熱失神、熱痙攣、熱疲労、熱射病の旧分類はわかりにくいということで、現在熱中症は治療の必要性と国際的な評価から重症度をI度、II度、III度の3つに分類されている。
I度…軽症(熱失神、熱痙攣)
II度…中等症(熱疲労)
III度…重症(熱射病)
治療は、それぞれに応じて行われる。
■I度……現場での応急処置で回復できる軽症
主な症状
- めまい、失神…熱失神に相当
- 筋肉の硬直…熱痙攣に相当
- 大量の汗
■II度……医療機関への搬送や受診を必要とする中等症
主な症状
- 頭痛、気分の不快、吐き気、嘔吐、倦怠感、虚脱感…熱疲労に相当
■III度……入院して集中治療の必要性がある重症
主な症状
- 意識障害、痙攣、手足の運動障害
- 高体温…熱射病に相当
清益氏によると、この分類によって、重症化の早期発見と早期治療が可能となり、一般にもわかりやすくなっている。この分類で年齢別に考えてみると、子どもはI度が多く、高齢者はIII度が多くなっているという。
熱中症を起こしやすい因子
熱中症は、実は、猛暑の日より梅雨明けに多く発生しているという。清益氏は熱中症の危険因子として
- 気温が高い
- 湿度が高い
- 風が弱い
- 日差しが強い
- 照り返し(輻射熱)が強い(地面が暖まって発生する熱を「輻射熱」と言います)
- 気温の急な上昇
- 体調や、汗をかきやすいかどうかの体質
を挙げ、「これらの因子に対する対策が予防になります」と述べている。
熱中症の対策
熱中症は予防できる病気と清益氏はいい、以下のような対策を挙げる。
- 気温が高い…日陰に移動したり、冷房のある屋内に移動したりする
- 湿度が高い…屋内なら除湿機を使う
- 風が弱い…扇風機、団扇、扇子などで風を起こして、体温の上昇を防ぐ
- 日差しが強い…日陰に移動したり、直射日光を避けたりする
- 照り返し(輻射熱)が強い…コンクリートやアスファルトの上を避ける
- 気温の急な上昇…天気予報に注意して、暑くなる時には水分補給などで脱水予防をしておく
- 体調や、汗をかきやすいかどうかの体質…規則正しい生活、バランスのとれた食事が大事。暑さを徐々に体に慣らしていく
熱中症I度の応急処置
II度、III度は医療機関での処置になるので、I度の対処方法を紹介している。
熱中症を疑う上記の症状があれば、まずは、意識の状態を見る。意識が無い場合は救急隊に連絡した方がいいとしている。意識がある場合は、まずは、涼しい所に移動させる。
次に、できれば衣服を脱がせて、熱を逃がす。皮膚に水をかけたり、団扇や扇子であおいだり、氷で冷やしたりして、体温を下げるようにするという。水分補給が可能なら水分を、高血圧でなければ、塩分を含む水分を十分に取るようにする。
「これで改善がないと、I度ではないので、救急隊に連絡しましょう」と清益氏は呼び掛けている。
【関連リンク】
・熱中症の症状・治療・応急処置
・熱中症の重症度とその対処方法