中国でEVやSUVがモテる訳とは?上海モーターショーに見る各社の狙い

4月19日に開幕した上海モーターショーでは、新しいコンセプトカーのEVやSUVが多数出展されている。その背景には環境問題などがあるという。今後自動車メーカーはどのような自動車を提供していくのか、2017年の上海モーターショーから分析する。

上海モーターショーが4月19日に開幕。注目は?

4月19日に開幕した上海モーターショーでは、新しいコンセプトカーのEVやSUVが多数出展されている。その背景とは?

I.D.CROZZ
上海モーターショーで世界初公開されたフォルクスワーゲンのコンセプトカー「I.D.CROZZ」

 

中国の大気汚染が深刻なのは周知のとおりで、PM2.5など日本への影響も懸念されている。石炭を使った火力発電や自動車の排気ガスなど、様々な原因があげられているが、こうした流れから排気ガスの削減を目指し、EVカーに注目が集まるということは自然な流れだろう。
 

中国ではとくにSUVの存在感が急増

そんな情勢の一方、中国の自動車市場で主役を占めてきたセダン(とくに、中国専用にロングホイールベース化されたタイプ)は健在だが、急激に存在感を増しているのがSUVだという。
 

実際に中国専用モデルを含めて多数の自動車メーカーがSUVを投入している。SUVブームは中国に限ったことではないが、高い営業利益率が期待できるSUVは、オーナーにとっては見映えもよく、ベース車よりも高い価格を払ってでも手に入れたい魅力があるのだろう。
 

なぜSUVをベースにEV化するのか?

さらに、背が高くて広いSUVは、EVはもちろん、EVの1種ともいえるプラグインハイブリッド(PHEV)化しやすいという特徴がある。SUVをベースにEVやPHEV化すれば、時代の要請である環境規制とエコカーの開発、高い利益率などが一挙に手にできるわけだ。

アウディ
アウディの「e-tronスポーツバック コンセプト」は500kmを超える航続可能距離を見据えている

 

2017年の上海モーターショーでは、フォルクスワーゲンが「I.D.CROZZ(I.D.クロス)」と呼ぶSUV型のEVを世界初披露した。302psという十分なパワーに加えて、最高速は180km/hに到達し、1充電あたりの航続可能距離は最大500kmに達する。急速充電を使えば、電池容量の80%まで約30分で充電できるなど、高い利便性を備えている。同じグループのアウディも「Audi e-tronスポーツバック コンセプト」と呼ぶEVのコンセプトカーを出展するなど、EV花盛りという状況になっている。
 

日本勢もEV、PHEV、FCVなどの次世代エコカーに注力

ほかにも、トヨタはPHVや最近注力すると発表したEVのほか、燃料電池車(FCV)の「MIRAI(ミライ)」の実証実験を開始すると公表するなど、中国に持てるエコカーを投入する構えを見せている。GMやフォードなどのアメリカ勢はPHEVやEV、ホンダも中国で来年にはEVを発売するという一部報道もある。

三菱
三菱も2台のSUVコンセプトを上海モーターショーで披露。「MITSUBISHI GT-PHEV Concept」はプラグインハイブリッド、写真の「MITSUBISHI eX Concept」はコンパクトSUVのEV

 

EVやPHEVに注目が集まる流れは、中国だけでなく、世界中で広まっているのだ。2016年には、自動車の排出ガスに関しても世界でも厳しい規制が敷かれると現地で報道されている。排出ガス規制強化により、達成できなければメーカーが罰金を支払うなど、生き残りをかけた死活問題だからだ。
 

SUVをベースにEVやPHEV化するのは、先述したように開発上の都合などもあるが、今後はさらにコンパクトカーなどでも電動化車両が不可欠になるかもしれない。
 

そのためには、バッテリーなどの基幹部品のコスト削減が必須で、SUVなどの大型車で電動化の技術を磨きつつ、手の届く電動化車両をいかに生み出せるのかも重要になるだろう。そのあたりは、中身はシリーズハイブリッドではあるが日産のノートe-POWERや、三菱のi-MiEVなどを生み出した日本勢にも十分に勝機がありそうだ。
 

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