8月4日開幕「ヨコハマトリエンナーレ2017」、注目は?

2017年8月4日(金)から始まる現代美術の国際展「ヨコハマトリエンナーレ2017」の記者発表会が行われ、出展作家が明らかとなった。今回発表されたのは26組、1プロジェクトで、最終的には40組程度が出展予定となっている。

記者会見に登壇した逢坂恵理子さん、柏木智雄さん、三木あき子さん、小沢剛さん、宇治野宗輝さん(2017年4月18日撮影)
記者会見に登壇した逢坂恵理子さん、柏木智雄さん、三木あき子さん、小沢剛さん、宇治野宗輝さん(2017年4月18日撮影)

 

6回目となる「ヨコトリ」は横浜の歴史や横浜らしさを意識する

同展は2001年に始まり、今回で6回目、横浜美術館が主会場となってからは3回目となる。今回は、横浜美術館、横浜赤レンガ倉庫1号館、横浜市開港記念会館地下を主会場とし、会期は8月4日(金)~11月5日(日)。「横浜の歴史や横浜らしさ」を意識し、美術だけではなく他方面の専門家の協力を得て、対話、協議を重視した、これまでとは異なる方法で準備をすすめている。展覧会、構想会議、さまざまな分野の専門家が円卓を囲むように対話・議論を重ねるヨコハマラウンドを三位一体とし、展開する。

 

展覧会タイトルは「島と星座とガラパゴス」。世界の「孤立」と「接続性」の状況について、アートを通してさまざまな角度から考察しようとする思いが込められている。3名のディレクターズ(逢坂恵理子 横浜美術館館長、柏木智雄 同副館長、三木あき子 ベネッセアートサイト直島インターナショナルアーティスティックディレクター)と、世代や分野の異なる専門家で構成された6名の構想会議メンバー(スハーニャ・ラフェル、スプツニ子!、高階秀爾、リクリット・ティラバーニャ、鷲田清一、養老孟司 ※敬称略)が2016年から議論を重ね、展覧会タイトルとコンセプトを決定した。

横浜の歴史、横浜らしさをより一層打ち出すことが発表された(2017年4月18日撮影)
横浜の歴史、横浜らしさをより一層打ち出すことが発表された(2017年4月18日撮影)

 

これまでよりも少ない40組、第一線で活躍するベテラン勢がずらり

出展作家数はこれまでよりも少ない約40組だ。作家数を厳選したのは、鑑賞者が個々の作家の創作世界により深く触れられるように意図したもので、作家の多くが複数の作品を展示する予定となっている。これは、異なる星や島が緩やかに繋がり星座や多島海を形成するように、作品世界が連なっていくイメージを反映しようという狙いもあると、三木コ・ディレクターは説明した。


また、今回は出展作家の年齢層が高いようにも見受けられるが、それは「目新しさを第一に考えなかったから」と三木コ・ディレクター。「国際展に興味がない」という作家や「アーティストをやめる」宣言をした作家などのもとに出向き、対話しながら進めていたらこのようになったという。
 

「今回は、作品の質と鑑賞体験の深度にこだわりたい。引きこもりや震災関連の作家も予定しています」(三木コ・ディレクター)

 

「大政奉還から150年。近代化をけん引してきた横浜の歴史を意識する」

逢坂コ・ディレクターは、「2017年は、大政奉還、パリ万博日本正式参加から150年。その間に日本は大きな発展を遂げました。本トリエンナーレでは、異文化、新しい情報、人々の交流を受け入れてきた“横浜ならでは”の趣向を凝らしています。複雑な状況を抱える昨今、人間はひとりひとりでは暮らしていくことはできません。異なるものや孤立したものなど、バラバラのものをつないでいくことを想定しつつ、想像力、創造力、対話、そして本トリエンナーレを通して、アートの持つ創造力、可能性を皆さまとともに考えていきたい」と、全体像について述べた。
 

柏木コ・ディレクターは、テーマ設定について次のように語った。

「本トリエンナーレでは、これまで以上に、横浜の歴史を意識しています。逢坂館長も述べましたが、大政奉還から150年。江戸時代にはガラパゴス的な、孤立した状況だった日本が、明治時代になり、他者と複雑に接続し、近代化が進んでいきました。横浜は開港の地ということで、他の国のものを受け入れ、新たな文化を築きあげ、近代化の最前線に位置し、けん引してきた街のひとつ。その近代化を象徴する横浜赤レンガ倉庫1号館や横浜市開港記念会館も主会場としました。横浜の歴史を取材して、新作に取り組んでいる作家もいます。また、本トリエンナーレと合わせて、横浜の歴史的背景とテーマに共鳴する場所・施設等との連携も検討中です」

会見後、笑顔を見せる5名(2017年4月18日撮影)
会見後、笑顔を見せる5名(2017年4月18日撮影)

 

ギリシャにたどり着いた難民着用のライフジャケットを使った大型展示も

具体的な作品についても紹介された。横浜美術館の正面入口には、中国のアーティストであるアイ・ウェイウェイさんによる、ギリシャにたどり着いた難民たちが着用していたライフジャケットを使った大型作品を展示予定。
 

ドン・ユアンさん(中国)はビデオメッセージで「《おばあちゃんの家》を出品します。この作品は祖母の古い家が区画整理で取り壊されると聞き、誕生しました。取り壊し期限が迫ってきたため、このような手段で記録を残そうと思いました」と、作品が生まれた背景を話した。
 

自作のテキストを街の中にさまざまな手法で展示するジェニー・ホルツァーさん(アメリカ)は、「今回、参加の招待を受けて大変うれしく思います。横浜らしい場所で、自分のことばが展示されることを期待しています」とのメッセージを寄せた。
 

会見に登場した出展作家の小沢剛さんは、歴史上の気になる人物の人生をベースに、ストーリー仕立てで紹介する作品“帰ってきたシリーズ”第4弾を出展すると発表。「横浜で生まれ、インドのコルカタ(=カルカッタ)にゆかりのある人物にスポットを当てました。彼の足跡をたどり、大胆な再解釈で展開します」と、新作への意気込みを語った。

作品について語る小沢剛さん(左)。第1回のヨコトリに《トンチキハウス》という作品を出展、そこで宇治野宗輝さん(右)がパフォーマンスしたエピソードも披露した(2017年4月18日撮影)
作品について語る小沢剛さん(左)。第1回のヨコトリに《トンチキハウス》という作品を出展、そこで宇治野宗輝さん(右)がパフォーマンスしたエピソードも披露した(2017年4月18日撮影)


もうひとりの出展作家の宇治野宗輝さんは、楽器とミキサーやテレビなどの生活用品を組み合わせた装置で音と光を発しながら、出品作品と「島と星座とガラパゴス」に対する思いをDJのようなパフォーマンスで表現し、会場を沸かせた。
 

パフォーマンスしながら抱負を述べる宇治野宗輝さん(2017年4月18日撮影)
パフォーマンスしながら抱負を述べる宇治野宗輝さん(2017年4月18日撮影)

最後は、楽器と連動させたミキサーでできあがったバナナジュースで乾杯(2017年4月18日撮影)
最後は、楽器と連動させたミキサーでできあがったバナナジュースで乾杯(2017年4月18日撮影)


これまでよりも“横浜”感にあふれることが期待される、現代美術の国際展「ヨコハマトリエンナーレ2017~島と星座とガラパゴス」に注目したい。
 

ヨコハマトリエンナーレ2017 島と星座とガラパゴス

  • 会期:2017年8月4日(金)~11月5日(日)
  • 会場:横浜美術館(横浜市西区みなとみらい3-4-1、横浜赤レンガ倉庫1号館(横浜市中区新港1-1-1)、横浜市開港記念会館地下(横浜市中区本町1-6)
  • 開館時間:10:00~18:00 (10月27日~29日、11月2日~4日は20:30まで)※最終入場は閉館の30分前まで
  • 休館日:第2、4木曜日
  • 料金:一般1800円、大学・専門学校生1200円、高校生800円、中学生以下無料
  • 参加アーティスト・プロジェクト(2017年4月18日時点):
    アイ・ウェイウェイ(艾未未)/ブルームバーグ&チャナリン/マウリツィオ・カテラン/ドン・ユアン(董媛)/サム・デュラント/オラファー・エリアソン/アレックス・ハートリー/畠山直哉/カールステン・ヘラー、トビアス・レーベルガー、アンリ・サラ&リクリット・ティラヴァーニャ/ジェニー・ホルツァー/クリスチャン・ヤンコフスキー/川久保ジョイ/風間サチコ/ラグナル・キャルタンソン/マップオフィス/プラバヴァティ・メッパイル/小沢剛/ケイティ・パターソン/パオラ・ピヴィ/キャシー・プレンダーガスト/ロブ・プルイット/ワエル・シャウキー/シュシ・スライマン/ザ・プロペラ・グループ/宇治野宗輝/柳幸典/Don’t Follow the Wind
  • URL:ヨコハマトリエンナーレ2017 http://www.yokohamatriennale.jp/2017/

 

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