天才少年がJ最年少得点記録を更新
まだ15歳の少年が、日本サッカーを変えようとしている。J3リーグのFC東京U-23(23歳以下)でプレーする久保建英(くぼ たけふさ)だ。今春に高校1年生となった彼は、4月15日のJ3リーグでJリーグ最年少得点をマーク(15歳10ヶ月11日)したのだ。
これまでの最年少記録は、元日本代表の森本貴幸(川崎フロンターレ)が持っていた(15歳11ヶ月28日)。ただし、森本はJ1リーグでの得点で、久保はJ3である。戦いのレベルは違うので、最年少得点記録の更新には「J3の」という但し書きをつけておくべきだろう。
だからといって、久保の未来に影が差すわけではない。J1、J2に次ぐ国内3番目のカテゴリーとなるJ3は、大人たちがしのぎを削るリーグである。そのなかで、15歳の少年がプレーしているのだ。
久保はなぜ、年齢の壁を超えてプレーできるのか。彼の経歴に大きな理由がある。
“日本のメッシ”?バルセロナが認めた逸材
スペインの世界的強豪FCバルセロナに憧れを抱いていた久保は、バルセロナの下部組織の入団テストに合格し、10歳でバルセロナへ渡る。身体は小さいものの高い技術を持つ彼は、出場した大会で何度も得点王を獲得するなどの活躍を見せていく。トップチームに在籍するアルゼンチンのスーパースターと比較して、“日本のメッシ”と報道されることもしばしばだった。
バルセロナの首脳陣にも、久保の才能は高く評価されていた。彼が不運だったのは、公式戦に出場できなくなってしまったことだ。バルセロナが18歳未満の外国人選手の獲得と登録について、ルール違反を犯したことが理由だった。18歳の誕生日を迎えるまでは処分が解けないため、2015年の春に帰国したのだった。
帰国後は「飛び級」も…2017年は4つのチームでプレー
FC東京のU-15チームに加入した久保は、2016年に中学3年生でU-18チームへ昇格した。高校3年生の18歳を最高学年とするチームでも、周囲が驚くようなテクニックとアイディアで得点やアシストを記録していった。
日本を含めた世界のサッカー界には、力のある選手にはより高いレベルでプレーさせるとの考え方がある。“飛び級”と言われるものだ。
U-18で結果を残した久保は、昨秋からJ3リーグのFC東京U-23に選手登録された。ここでも久保は、周囲を驚かせる。大人の世界に迷い込んだ子どもではないことを、堂々たるプレーで示していくのだ。そして、J3リーグ通算7試合目の出場となった4月15日のゲームで、初ゴールをマークしたのである。
2017年の久保は、4つのチームでプレーすることになりそうだ。
日本代表の一員としては、5月20日開幕のU-20W杯、10月開催のU-17W杯の出場を期待されている。FC東京の一員としては、U-18チームとU-23チームでプレーすることになるだろう。
世界では高校生年代のプロデビューは例外ではない
世界のサッカー界を見渡せば、日本の高校生年代がプロに混じってプレーすることが例外ではない。ドイツ・ブンデスリーガのレバークーゼンでは、17歳のカイ・ハフェルツがスタジアムを沸かせている。
6月4日に16歳となる久保は、その若さゆえに今後も注目を集めていくに違いない。ただ、高校生のプロリーグデビューが当たり前になるぐらいでなければ、日本のサッカーが世界と肩を並べることはできない。久保の足跡はそのまま、日本サッカーの未来を映し出していくかもしれない。彼が年齢の壁を打ち破っていくことで、この国のサッカーは世界に近づいていくのだ。