熊本大震災から14日で1年…日本の地震リスクに備えるために

震度7の地震を2回観測し、228人の犠牲を出した熊本地震の発生から、14日で1年を迎えた。これを機に改めて自分が生活する地域にどのような地理的な地震リスクがあるかを確認したい。現在関心が集まっている南海トラフや首都直下地震の対策について紹介する。

4万7千人以上が避難を続けている

熊本城
2016年4月15日の熊本城の様子。現在は復旧工事が本格化している(写真:YONHAP NEWS/アフロ)

震度7の地震を2回観測し、熊本県や大分県で関連死を含め228人の犠牲を出した熊本地震の発生から、14日で1年を迎えた。熊本県の被災者は3月末現在、4万7千人以上が県内外の仮設住宅などで避難を続けているという。
 

身近にどんな地震リスクがあるか、今一度認識を

現地視察をした災害危機管理アドバイザーの和田隆昌氏はAll Aboutの『熊本地震から1年…震災に学ぶべき教訓とは何か?』の中で、日本列島においては「自分のところだけは安全」という場所はないとし、自分の住む家屋、生活する地域にどのような地理的な地震リスクがあるかを今一度認識した上で、「家屋の耐震化、不燃化だけではなく、家族の避難計画や備蓄など、出来る限りの対処をしておくことが求められます」と述べている。
 

日本では現在、南海トラフ地震や首都直下地震などの地震リスクに対して、関心が寄せられている。それぞれ、どのような対策をしていけば良いだろうか。和田氏はAll Aboutの『超広域災害となる南海トラフ地震に備えるには?』と『阪神淡路大震災に学ぶ、直下型地震への備え』で解説をしている。
 

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南海トラフ地震はどのような被害になるか

和田氏によると、内閣府はM9クラスの南海トラフ地震が発生した場合、死者数は最大32万人、避難者は一週間後で最大950万人、断水人口は3440万人に及ぶと発表しており、行政側の支援は大幅に遅れると予想されるため、市民には、これまでの「3日分の備蓄」から「一週間分の備蓄」を呼びかけているという。
 

「津波浸水地域」は早急な対策を

南海トラフ地震が発生した場合の被害者数の7割は津波によるものといい、20万人が津波によって命を失くす危険にさらされていると和田氏は説明する。その半数は駿河湾沿いに集中し、静岡県では10万人を超える死者数が想定されているという。
 

首都圏にも及ぶ南海トラフ地震の影響

南海トラフ地震の震源が駿河湾中心に発生した場合、首都圏の被害は東日本大震災のときとは比較にならないほどの影響を及ぼす可能性もある。震度6弱~6強の地震動が数分で関東にも到達し、約9000棟の家屋が全壊、大規模な火災も発生すると想定されているという。
 

特に首都圏の湾岸地域、内陸部においても河川の流域など地盤の弱い地域に被害が集中し、東日本大震災でも発生した液状化により道路が寸断され、停電・断水などのインフラ被害も大規模なものになる可能性があると和田氏は述べている。
 

さらに南海トラフ地震で駿河湾の沿岸地域が水没した場合、東西の大動脈である新幹線・高速道路に被害が及ぶ可能性が高く、その経済的な被害は220兆円という天文学的な数字が示されているという。
  

自分の住む地域の最大リスクに備える

南海トラフ地震が発生した場合、沿岸地域に最大30mを超える津波を発生させるだけでなく、その地震動は広範囲に建造物を破壊、交通・生活のインフラを停止させ、大規模な火災をも発生させる想定がある。広範囲に影響が及び、公的機関の支援は大幅に遅れ、何らかの被害を受ける人は、実に日本全住民の50%以上にも及ぶとする試算もあるという。
 

また、日本経済に与える影響も、過去に例がないものになる可能性が高く、地震による直接的な被害を受けなかった人においてもダメージがありそうだ。
 

南海トラフ地震の被害リスクを下げるには

南海トラフ地震の被災リスクを下げるために必要なこととして、和田氏はいかのポイントを挙げている。

  • 津波到達エリアでは万全な避難対策を
  • 自宅の耐震性を再度確認・公的支援を受ける
  • 地域の最大リスクは何か、確認する
  • 延焼の可能性を確認する
  • 健康被害を受けないための十分な備蓄をする
  • 高齢者・幼児の家族への避難対策を万全にする
  • 地域コミュニティへ継続的に参加する
  • 広域避難が必要な場合の親類との連携をする
  • 「どこでも生きていける」ための技術の習得する

  

首都直下地震の被害はどのようなものになるか

南海トラフ地震とは別に、将来発生が想定される首都直下地震の特徴はどのようなものなのだろうか。
 

阪神淡路大震災など直下型地震で発生しやすい1~2秒の周期の「短周期地震動」は「キラーパルス」と呼ばれ、東日本大震災で発生した「長周期地震動」とは違って、家屋に決定的なダメージを与えやすいという。首都直下の内陸部を震源とする巨大地震が発生すると、この「キラーパルス」によって多くの建物が倒壊、家屋内での死者数が増大し、さらに火災の発生を増やす可能性があるという。
 

首都圏が持つ特有のリスク

■交通マヒ

首都圏は天候の変化でも「交通のマヒ」が生じやすく、被害の軽微だった東日本大震災発生時も長時間大渋滞が発生した。これは想定される首都直下地震などの「被害の甚大な大地震」発生時に、緊急車両(消防車や救急車、災害復旧に係わる全ての車両)が全く機能しなくなることを示唆しており、自分の身は自分で守るしかない。

  

■人口の集中・帰宅難民

関東大震災では「火炎竜巻」のような現象が発生、逃げ場を失った人が一箇所で4万人も無くなったなどという悲劇が発生した。人口が集中している首都圏では「人口の集中」そのものが被災リスクとなり、都市部特有の「二次災害」を発生させる可能性もあると和田氏は述べている。
    

また、帰宅難民と呼ばれる通勤者や滞留する人の数は1000万人近くなり、彼らを収容できる避難場所や避難所は全く用意できていないという。実質的な被害はほとんど発生していなかった東日本大震災のときですら、水や食料が不足した事実を省みると、もし甚大な被害が発生するような災害が発生した場合には、流通は停滞し続け、市民の不安は増大、あの時とは比べようもないほどの社会不安が起こると考えられるという。
  

■長期化に備える

マンション高層階などに住む人は、長期停電などの事態に備え、避難所生活をしないためには、インフラ回復までの十分な備蓄を行っておくべきだと和田氏は述べている。
  

また、東京湾の火力発電所などが被災した場合、最悪50%程度の電力供給になる可能性があると試算しているが、被災状況によっては長期の停電も覚悟しなければならないと和田氏は指摘する。都市部特有の「複合災害」に備えるためには寝室の安全を確保するだけでは足りず、地域特有の被災リスクを十分に把握した上で、自分と家族に何が必要なのかを考えて準備する必要があると和田氏は述べている。
  

首都直下地震に備えるポイント

そのうえで、和田氏は首都直下型地震への備えとして以下のポイントを挙げている。 

  • 耐震性の高い住居に住むこと
  • 家屋内での被害を防ぐ家具の固定
  • 消火器の準備で初期消火に協力
  • 長期インフラ停止に備える備蓄
  • 地域の最大リスクを把握すること

  

【関連リンク】

熊本地震から1年…震災に学ぶべき教訓とは何か?

超広域災害となる南海トラフ地震に備えるには?

阪神淡路大震災に学ぶ、直下型地震への備え

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