テレ朝が2時間ドラマ枠を朝に移行する大改編
テレビ朝日は4月改編で土曜・日曜に21時台に報道・情報番組を新設。土曜は『サタデーステーション』、日曜は『サンデーステーション』が始まります。MCはそれぞれ高島彩と長野智子、奇しくも両方とも元フジテレビ女子アナ。また『サタデーステーション』はディーン・フジオカが出演するのも話題。
両番組が始まることにより、ともに長い歴史を持つ『土曜ワイド劇場』と『日曜洋画劇場』が終了。2時間ドラマ枠は『日曜ワイド』と名前を変え日曜朝10時に移行、映画枠は消滅することになります。『土曜ワイド劇場』は1977年から40年続く日本初の2時間ドラマ枠。その老舗の終了に2時間ドラマの危機がささやかれています。
2時間ドラマを放送していない2時間ドラマ枠
2時間ドラマ放送枠は日本テレビ系が2007年に撤退した以外は、各民放系列、一枠ずつ持っています。ただし2時間ドラマばかり放送しているわけではありません。
『土曜ワイド劇場』は正確にいうと『土曜プライム』という映画、バラエティ、ドキュメンタリーなどを放送する枠の中に『土曜ワイド劇場』もある、という形に2016年4月に変わっています。他の民放系列もすべて同じ形で2時間ドラマだけを放送しているわけではありません。
2017年1〜2月の約8週間でどれだけ2時間ドラマがつくられるかを数えるとTBS系『月曜名作劇場』は4作、テレビ東京系『水曜ミステリー9』は5作。『土曜ワイド劇場』は5作プラスいわゆる「2時間ドラマ」ではないミステリー、本田望結主演の『探偵少女アリサの事件簿』1作とたくさん作っている方。
フジ系『金曜プレミアム』に至っては今年になってゼロ。2時間ドラマを放送したのは昨年12月9日の『所轄刑事10』までさかのぼります。
2時間ドラマ誕生はトレンディドラマの影響
2時間ドラマがなぜ少なくなってきたのか? これは見方を逆にして、以前は多かった理由を考えるとわかります。2時間ドラマがもっともたくさんつくられた全盛期は1988年から1991年にかけて。日本テレビ系3枠、テレビ朝日系2枠、TBS系とフジ系が各1枠の計7枠、日曜を除きほぼ毎日放送されていました。
この時期の連続ドラマの主流はいわゆる「トレンディドラマ」。1988年にフジテレビは『君の瞳をタイホする』『抱きしめたい!』を制作、一気にブームになりました。1991年には『東京ラブストーリー』『101回目のプロポーズ』の純愛ドラマ路線にシフトし、1990年代のフジテレビドラマ全盛期につながります。
それまでのテレビドラマは家族みんなで見るものが主流でした。ところがトレンディドラマは主に若い女性をターゲットに絞り込んでいます。連ドラがトレンディドラマ化したことで、中高年を中心にそれになじめない層が向かったのが2時間ドラマ。テレビ局側もそれに対応するため放送枠を増加。トレンディドラマを生み出し好調のフジテレビと、当時は「ドラマのTBS」といわれ連ドラを得意としていたTBSは1枠を維持し、連ドラが弱かった日本テレビとテレビ朝日が多いのもそのためです。
壁を崩したのは『相棒』だった
若者を中心とした連続ドラマと中高年層を中心とした2時間ドラマ。1990年代は住み分けしていましたが、これを崩したのが『相棒』。2000〜2001年に『土曜ワイド劇場』で3作つくられ、2002年から連ドラ化。『相棒』のヒットとともに他の連続ドラマでも刑事・事件ものが増加。また4月からシーズン2が始まる内藤剛志主演『警視庁・捜査一課長』など2時間ドラマを連続ドラマ化するパターンも見られます。似たような内容になった結果、2時間ドラマが連続ドラマに食われているのが現状です。
住み分けが崩された影響を受けているもう一つはトレンディドラマの流れを受け継いでいるフジテレビの月9枠。近年、次々と最低視聴率記録を更新。あまりの不振に打ち切りのウワサさえあります。これも連ドラの主流が刑事・事件ものになり、月9が得意の恋愛ドラマを見る若い視聴者が少なくなってしまったのが理由。2時間ドラマの減少と裏表の関係にあります。
日曜午前に引っ越して成功した例も
さて日曜10時に引越しするテレビ朝日の2時間ドラマ枠は成功するのでしょうか。日曜午前への枠移行にはテレビ朝日系で成功例があります。『スーパー戦隊シリーズ』です。以前は土曜18時台の放送でしたがマンネリ化で長期低落傾向にありました。そして1997年に現在の日曜7時30分スタートに移動。2000年に始まった『平成仮面ライダーシリーズ』とセットでイケメンヒーローブームを生み出し、復活を果たしました。さらに『プリキュアシリーズ』も成功、他局も『ポケモン』を放送するなど日曜朝は変身ヒーロー、アニメ番組が増えています。
2時間ドラマも同様に、変化を機に新たな魅力をつくりだすことができれば、復活は可能です。しばらく見守っていきましょう。