訓練を装い暴行、上司に暴言…
福岡県の糸島市消防本部で、40代の男性職員2人を中心とした13人が数年にわたり、職員の3割にあたる約30人にパワーハラスメントをしていたとして、市が懲戒処分を念頭に調査していると報じられている。
部下に訓練を装って暴行したというパワハラのほか、上司の自宅に押し掛け暴言を吐くといった「逆パワハラ」などもあったという。パワハラに遭ったとみられる若手職員3人が退職した。
パワハラに関するニュースは後を絶たないが、一体どのようなことがパワハラにあたり、パワハラに気付いた人はどのように対処するべきだろうか。これに関して精神保健福祉士の大美賀直子氏はAll Aboutの『「パワハラ」と言われる前に知るべき6つの行為類型』で以下のように解説している。
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パワハラ行為類型とは
パワーハラスメント(パワハラ)には「6つの行為類型」があるといい、2012年に厚生労働省の円卓会議によって発表されていると大美賀氏は説明している。(※ただし、これだけをパワハラだと限定しているわけではない)「6つの行為類型」は以下の通り。
- 身体的な攻撃(殴ったり、蹴ったりという身体的暴力、暴行、傷害)
- 精神的な攻撃(脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言、指導を超えた相手の人格否定など)
- 人間関係からの切り離し(隔離・仲間外れ・無視)
- 過大な要求(業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害)
- 過小な要求(業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと)
- 個の侵害(私的なことに過度に立ち入ること、プライバシーの過剰な詮索)
パワハラ=「上司から部下へ」ではない
また、一般に「パワハラ」は、「上司から部下へ」の行為と限定的に捉えられがちだが「地位」の上下関係に限ったものではなく、もっと広い範囲で行われている。厚生労働省の『職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議ワーキング・グループ報告2012』では、「職場のパワーハラスメントとは、同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為をいう」と示されている。
ここの「職場の優位性」とは、職場の中には、「地位」以外のさまざまな上下関係があり、そこでもパワハラが起こり得る。たとえば、古参の社員が新入社員を仲間外れにする、有能な後輩社員が先輩社員を馬鹿にする、気の弱い上司の指示を部下が集団で無視するといった行為も、すべてパワハラにあたる可能性があるという。
「業務の適正な範囲」の解釈も必要になる。相手の誤った行動を指摘して、その行動を端的に注意するのは「適正な範囲」での指導だが、一度言えば分かることを何度も繰り返して、長時間叱り続けたり、相手の人格を否定したりするのは、「適正な範囲」の業務から逸脱しており、パワハラにあたるとされる。
パワハラから身を守るには
こうしたパワハラ行為を受けていることが分かった場合は、以下のようなところに相談してみることを大美賀氏は勧めている。
- 周りの信頼できる人
- 職場の相談窓口
- 自治体にある電話相談窓口
- 都道府県労働局、労働基準監督署の総合労働相談コーナー
大美賀氏によると、「このくらい耐えられなきゃ、生き残っていけない」「上司だって、同じようなパワハラを受けてきたんだ」といった考えから、我慢してしまう人もいるというが、そうしてストレスを抱え込むと、心の病を発症してしまうこともあるというので注意が必要だ。
「『嫌だ』『怖い』『不快だ』といった、素直な感じ方を大切にすること。そして、周囲に相談をしましょう。すると、自分1人では気づかないような、よい解決策が見つかるかもしれません」(大美賀氏)
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