折り紙の老舗もダイヨが破産…
出資法違反容疑で元社長らが逮捕された科学雑誌「Newton(ニュートン)」の発行元「ニュートンプレス」(東京都渋谷区)は20日、東京地裁に民事再生手続きの開始を申し立てたと発表した。
また21日には、折り紙の老舗であるダイヨ(大與紙工)が大阪地裁から破産開始決定を受けていたという報道もあった。
ニュースでよく聞く「倒産」や「破産」、「民事再生」「会社更生」にはどのような違いがあり、それぞれどのような手続きをとらなければいけないのだろうか。これに関して弁護士の榊原正治朗氏がAll Aboutの『倒産とは?倒産時に取るべき4つの法的手続き』で解説をしている。
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「倒産」は企業の経営破綻状態を広く指す用語
榊原氏によると、「倒産」の用語が用いられている法律としては、中小企業倒産防止法などがあるくらいで、殆どの法律では「破産」等の用語が用いられているという。
一般に言われている「倒産」は
- 破産手続(破産法)、再生手続(民事再生法)、更生手続(会社更生法)、特別清算(会社法)といった裁判所の関与する法的整理手続の申立がされたとき
- 6か月以内に2回の不渡りを出して、銀行取引停止処分がされたとき
- 資金不足等で債務の支払いをできなくなった債務者が、債務の減額、免除、支払いの猶予等を債権者に求める私的整理(任意整理、内整理ということもある)を開始したとき
を指すことが多く、通常、企業の経営破綻状態を広く指す用語として使われているようだ。
倒産の手続きは「清算型」と「再建型」の2つがある
倒産した企業がとる手続きは、大きく分けて以下の2つがあるという。
- 事業を停止し、企業を清算する手続き(清算型)…破産手続、特別清算
- 事業を継続し、企業を存続する手続き(再建型)…再生手続、更生手続
破産手続きの特徴は
倒産手続のなかで、裁判所での取扱い件数が多いのが破産手続。破産手続の主な特徴として榊原氏は以下の3つを挙げる。
- 清算型の手続であること
- 個人でも法人でも利用できること
- 債務を免責するための手続があること(個人の場合)
破産手続は、債務者自身のほかに、倒産した企業の債権者や一部の役員も申し立てることができるが、殆どは債務者自身による申し立てで、この場合を特に「自己破産」ともいう。
清算型の代表である破産手続は、原則として債務者の全財産を換金したうえで、債権の種類による優先順位や債権額に応じて公平に弁済(配当)して手続を終結することが予定されているという。一連の手続は、裁判所が選任する破産管財人(一般に債務者や債権者と利害関係のない中立な弁護士)が行う。
破産手続と特別清算の違いは
特別清算は、清算手続に入っている株式会社に関して、債務超過等の疑いがある場合に裁判所の関与を強めた清算型の倒産手続という。会社の資産を換金して、債権者に分配するという点では破産手続と共通だが、その手続を行う(特別)清算人が必ずしも裁判所の選任する人物ではなく、多くの場合、従前の会社の取締役という点に相違がある。
ただ、債務返済に関する協定案は、債権者集会に出席した議決権者の過半数の同意、かつ、議決権総額の3分の2以上の同意で可決されなければならないことから、実際には親会社が唯一または最大の債権者で、債務超過の子会社を解散するケース等で稀に利用される。
「再建型」倒産手続の筆頭が「民事再生」
民事再生は再建型の倒産手続の筆頭という。一定規模以上の法人では、事業の清算による社会的影響も大きいことから、再建型の手続が選択される傾向にある。
民事再生手続の主な特徴として榊原氏は以下の3つを挙げる。
- 債務者主導の再建型の手続であること
- 個人でも法人でも利用できること
- 債務の返済に関する再生計画案が、一定の債権者の同意が得られる等の要件を満たし、裁判所によって認可されなければならないこと
民事再生手続では、倒産した法人が主体となって、事業を継続し、再生計画案を立案することが基本。ただし、日常業務にあたらない重要な財産の処分等については、法人の資産状況が悪化しないよう、裁判所により選任される監督委員の同意を得なければならないという制約が課せられるという。
民事再生手続は、個人でも、法人と同様に利用できるが、負債総額が5000万円以下の場合、個人用に手続が簡略化された「小規模個人再生」と「給与所得者等再生」とのどちらかを利用するのが一般的という。
法人、個人のいずれの民事再生手続でも、破産手続と比較して返済率が高くないと、債権者にとってメリットがないことから、これを上回ることが再生計画案の条件とされる。
民事再生と会社更生の違いは?
会社更生も、特別清算と同様、株式会社が利用できる手続だが、再建型の手続という点で民事再生に類似する。
会社更生手続と民事再生手続との主な相違点は以下の2点にあるという。
- 会社更生手続では、裁判所により選任される更生管財人が手続を主導する
=裁判所に収める予納金等も民事再生手続と比較して高額になり、費用をかけるだけのメリットのある会社(比較的規模の大きい会社)に向く - 会社更生手続では担保権者も手続外で担保権の行使をできなくなる
=事業継続のうえで重要な資産に担保権が設定されており、担保権の実行を阻止した方がよい場合には会社更生手続が向く(民事再生手続の場合は、手続が開始されても担保権には影響しないので、競売を申し立てられてしまう場合がある)
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