8日に18歳の若さで亡くなった、女性アイドルグループ「私立恵比寿中学(エビ中)」のメンバー、松野莉奈さんの死因が「致死性不整脈の疑い」であることを、所属事務所が公表した。
「致死性不整脈」とはどのような病気なのか。これに関して心臓血管外科専門医の米田正始氏がAll Aboutの『不整脈の重症度とそれぞれの治療法』の中で説明をしている。
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不整脈にも種類がある
「脈が異常に速くなる」「脈が異常に遅くなる」「脈が不規則になる」といった状態を指す不整脈。米田氏によると、不整脈には、無害なものも危険なものもあるという。中でも心臓病などが背景にある場合は要注意。不整脈そのものがそう悪くない場合でも、不整脈のために心臓の力が落ちて血液を十分送り出せなくなると重症になるという。
不整脈の重症度は、不整脈が心臓内のどこから発生しているかによって、ある程度わかるものだと米田氏は説明する。たとえば心筋梗塞を原因とした不整脈で、とくに心室性のものであれば要注意だったり、弁膜症のなかで大動脈弁狭窄症に合併する心房細動という心房性不整脈も危険なことがあったりする。
「不整脈は不整脈単独ではなく、その背景にある病気も考えて治療する必要があります。患者さんにおかれましては不整脈を無用に怖がる必要はありませんが、原因疾患がある場合などには油断禁物であることも知っておいてください。やるべきことは、気になる症状や健診結果が出れば、心臓に詳しい医師に相談することです」
1分1秒をあらそう「致死性不整脈」
不整脈の重症度はいろいろあるが、超重症不整脈、別名「致死性不整脈」と呼ばれるタイプの不整脈が発生した場合は、一刻も早い治療が必要となる。米田氏は、ただちに救急車を呼び、救急室のある病院へ急ぐよう警告する。
「致死性不整脈」の中には以下のようなものがあるという。
■ 心室細動
もっとも危険なタイプ。この場合、心臓はけいれんしているだけで、血液を送り出すことはできず、血圧はほぼゼロ、事実上心停止の状態になる。4分以内で脳死に至るという。心室細動が起こった場合は、ただちに心臓マッサージ・心肺蘇生や電気的除細動(電気ショック治療)を行う必要があり、AEDを早い段階で使えば改善する可能性があるという。
■心室頻拍
心室が毎分100~200回という速さで動き、送り出すべき血液が溜まる時間がないために、血液を十分送り出せず、血圧も下がる危険な状態。そのままでも死亡する恐れが大きいが、この心室頻拍が心室細動に移行すると、さらに死亡リスクが高くなる。多くの場合、心筋梗塞や心筋症などが背景にある。
■トルサード・ド・ポアン
心室頻拍の特殊なタイプ。死亡する恐れの高い不整脈で、心電図では「QT時間」が延長しているときに起こりやすい。
■房室ブロック
心臓の中の電気信号が途中で途切れてしまうために脈拍が極端に遅くなり、時には止まってしまう危険な不整脈。失神発作が起こったり、突然死になったりする。ペースメーカーで安全を確保できる。
■洞不全症候群
心臓の中の自然のペースメーカーが壊れてしまい、何秒かの間、心停止が見られる状態。この間の心電図はまったく平坦で、血圧もゼロに近づき危険。洞結節の機能が低下することによって、さまざまな徐脈性不整脈を起こす。これもペースメーカー治療が適応される。
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