「相手が気にくわない」という理由でいじめに発展させないために

金沢市教委員会が2016年度が実施したいじめに関するアンケートで、小学生と中学生の約3割が「いじめられる人も悪いところがあると思う」と答えたという。どんな理由があれ、いじめは悪い。子どもに理解してもらい、相手が気にくわないという原因からいじめに発展させないためにすべきことは。

「いじめられる人も悪いところがある」の回答が3割?

東京電力福島第1原発事故で、福島県から横浜市へ避難した男子生徒がいじめを受けていた問題が連日ワイドショーなどで取り上げられています。そんな中、毎日新聞が26日、金沢市教委員会が2016年度、市立小・中・高校の全児童・生徒約3万5000人を対象に、いじめに関するアンケートを実施し、小学生と中学生のそれぞれ約3割が「いじめられる人も悪いところがあると思う」と答えたことが分かったと報じました。

  

「いじめられる方に原因がある」という考えについては、実は、いたるところで蔓延しているかもしれません。しかし、どんな理由があれ、いじめは悪い。こうしたことを子どもに理解してもらい、相手が気にくわないという原因からいじめに発展させないためにすべきことはあるのでしょうか。これに関して、いじめ相談員などを務める小野田真里子氏がAll Aboutの『いじめの発端「むかつく」心との向き合い方』で解説をしています。

  

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“ムカつく” “うざい”という言葉で片付けない

学校

いじめを行う理由に「いたずら」「からかい」などが挙げられますが、いずれも、いじめを行う側の心に「むかつく」という思いが生じる事にあると小野田氏は指摘しています。

  

「誰にでも気に入らない相手はいます。しかし、気に入らないからと言って嫌がらせをしたり、暴力をふるったりしてよいのでしょうか。“気に入らない” “いやだ”と思ったら、“ムカつく” “うざい”などという単純な言葉で片付けたりせずに、なぜそう思うのかしっかりと観察し、自分の心に問いかける習慣をつけましょう」

  

相手の行為に対してムカついたり、イラついている場合、相手の人格と行為を切り離して考えるようにするとよいといいます。また、相手の全てを否定するのではなく、相手の行為があなたを怒らせていることを伝えてほしいと小野田氏は述べています。

  

ムカつく原因は何なのか、点検を

さらに、ムカつく原因はその行為ではなくてムカつく側の心の中にある場合があります。以下の点を、子供と確認してみましょう。

  • いつからムカついているのか
  • きっかけはなんだったのか
  • 誰にムカついているのか、その行為をしている人にだけなのか
  • 誰にでもムカついているのか、自分にもムカついているのか
  • どんな出来事が自分は気に入らなかったのか

これらの点検が終わったら、次のような場合を考えるよう働きかけ、話し合ってみるのがいいといいます。

  

話し合うこと1:相手の事情を知る

相手の事情をしらないためにムカつくということはあります。例えば、毎朝、遅刻をする、宿題をやってこない、洋服も少し汚れている友達に対してムカついているとすると、以下のようなことが考えられるかもしれません。

  • 家庭の事情で気持ちが不安定で遅刻したり、洋服が汚れているということもある
  • 心や体に障害があって、他の人には簡単な事がその人には大変な努力を必要とする、または、努力してもできない人もいる

それぞれに事情があり、頑張りたくても頑張れない人もいる。また、何を大切にするか、頑張るのかは、人それぞれが自分で決める権利があり、本人以外が押し付けることではないと小野田氏は指摘しています。

    

「自分が嫌だと思っていることは伝えて、理由を聞いたり、協力を求めたりするようにしましょう。事情については話してくれる場合は話してくれない場合もあると思います。ムカつかないためには、きっと何かの事情があるのではと想像力を働かせる、人は人、自分は自分と割り切ることも必要です」

  

話し合うこと2:自分の価値観を見直す

自分とは違う考えを受け入れられないこと、どちらか一方が正しくて、もう一方は間違っていると思い込んでいると自分と異なる考えを許せなくなることもあります。

  

しかし、小野田氏は「社会では答えが一つしかないことのほうがむしろ少ない」とし、自分の意見を持つことは大切ですが、自分の考えと同じくらい人の考えも大切なのだと尊重してあげるようにすることが大事だとしている。他の人の言い分にも耳を傾け、自分の考え方に取り入れることができないかどうか考えてみることもできます。

  

話し合うこと3:苦手な人との適切な距離を保つ

苦手な人と無理してつきあおうとすると腹が立ったり、いじめたくなったりする気持ちが出てくることもありますが、無理に付き合うのでもなく、完全に付き合いをやめるのでもない、ほどほどの距離をという方法もあります。挨拶は最低限して、1対1ではなく数人でつきあうなどの工夫をすることも可能です。

  

「ムカつく」気持ちのコントロール方法

以上を話し合った上で、次のコントロール方法を伝えてほしいと小野田氏は言います。これは大人になっても社会生活を営む上で有用なこと。早くから習慣化することが大事なのかもしれません。

  • 自分と人とを比べない。自分は自分、人は人
  • 相手の悪い所だけではなく、良いところを見つける努力をする
  • 「感情的にならないように」と自分に言い聞かせる
  • 大人のコミュニケーションを身につける練習のつもりでつきあう
  • 他の人の心は変えられない、変えられるのは自分の心だけだと知る
  • 心の中できらっていても態度や言葉に出さない努力をする

  

【関連リンク】

いじめの発端「むかつく」心との向き合い方

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