東レは、経口プロスタサイクリン(PGI2)製剤 ラプロス(R)について、2017年1月13日付で猫の慢性腎臓病治療薬としての製造販売承認を取得したと24日に発表した。4月から共立製薬を発売元として発売開始予定という。
東レによると、身近なペットとして親しまれている猫にとってかかりやすい病気の一つに慢性腎臓病が挙げられるが、猫の慢性腎臓病は、病態が解明されていないことも多く、治療の選択肢は限られていたという。
ラプロス(R)の薬理作用によって腎臓の虚血および低酸素状態を改善させると考えられており、腎機能の低下を抑制し臨床症状を改善させるとみられるという。なお、国内で「腎機能低下の抑制」を効能効果として承認を取得した薬剤はラプロス(R)が初めてであり、「猫医療に心強い治療選択肢を提供することができた」と東レは発表している。
猫がなぜ腎臓機能が低下しやすいのか、猫を飼う上で注意するべき点については東京都動物愛護推進員で猫ライターの岩田麻美子氏がAll Aboutの『猫の腎臓と腎機能の状態を知るための検査』で解説をしている。
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猫は砂漠出身であるため、飲水量が少ない動物
岩田氏によると、猫は元々砂漠出身であるため、飲水量が少ない動物で、体内で水を有効に使うために尿の濃縮率が高く、濃い尿をする。腎臓は非常によく働く臓器だが、それらが腎臓に一層の負担をかけるため、高齢になるとほとんどの猫の腎臓機能は低下してしまうという。
腎臓にはどんな機能がある?
腎臓は、血管、糸球体(腎臓の毛細血管)、尿細管(体液の内容の調節を行う)、間質(血管・糸球体+ボウマン嚢・尿細管などの構造の間にあり、これらを支える組織)で成り立つ。
腎臓には、心臓が迫出する血液が腎臓に流れ込み、動脈は枝分かれして糸球体に至る。糸球体の毛細血管の中を流れるうちに一部は濾過され、血管の外に出て行く。糸球体で濾過された糸球体濾液はボウマン嚢から尿細管へ流れ込み、体に必要な色々な物質を吸収し通常その約99%は血管に戻る。尿細管で吸収された残り(老廃物や毒物・薬物など)は尿として排出される。
糸球体からここまでの構造をネフロンと呼び、腎臓はこのネフロンが片方で100万個集まってできているという。
なお、腎臓は単なる有害物質を取り除くだけの濾過装置ではなく、尿細管を流れるうちに、老廃物と体に必要なブドウ糖やアミノ酸などの有用な物質をより分けて、また血液中のミネラルのバランスによってナトリウム・カリウム・カルシウムなど色々な物質の吸収・排泄を調節して血液に戻してくれる役割もある。
また体内の水分調節も行い、水分が過剰な場合はたくさんオシッコを出し、脱水があるときは水を再吸収してオシッコの量を減らすという。
腎臓機能が低下していくとどんな症状が出る?
腎機能障害が進行すると、
- 食欲不振
- 多飲
- 体重減少
- 活動的でなくなる
- 多尿
- 息切れ
- 毛並みが悪くなる
といった症状がみられる。嘔吐が伴う場合もあるが、嘔吐は急性腎不全の時の方によく見られる症状という。また、高血圧を合併することも多く、心臓にも負担がかかるため、脳内出血や心臓発作を起こすこともある。
腎臓は、日々濾過するときに毒素にさらされる危険性の高い臓器で、年齢と共にネフロンが減少。また、腎臓は再生することができない臓器なので、失ってしまったネフロンの代わりは、残ったネフロンが今まで以上に働き、残ったネフロンも次第に壊れ、慢性腎不全が進行していくという。
腎不全とは、腎機能の3/4以上が失われた状態だが、腎臓が1/3しか稼働していなくても、症状がみられないことの方が多いので注意が必要そうだ。症状が見られていなくても常日頃から猫の様子を観察し、また定期的に健康診断を行って猫の状態を知ることも大切にしたい。
慢性腎不全に至った場合は?
症状が進んでしまうと、輸液や輸血、薬物治療が必要になる。
「人間の場合ですと、人工透析装置を使い、身体の中の不要物を濾過することも可能ですが、猫の人工透析を行ってくれる施設は世界的に見てもほとんどありません。というのも、猫の場合は血液量が少ないので、それにあった装置の開発が困難だからです。
慢性腎不全に至った猫の場合、根本的な治療は期待できず、今以上腎臓機能が低下することを遅らせる、今の機能を少しでも長く維持することが治療となります」
猫の腎臓に負担をかけない生活を心がけること
猫の腎臓に負担をかけないためには以下のような工夫が必要と岩田氏は説明する。
- 少しでもたくさんお水を飲んでくれる工夫
- 年齢に応じた適切な食餌
- 我慢することなく使える複数の清潔なトイレ
- 適度な運動
- ストレスの少ない生活
これらは、腎臓の為だけでなく、猫にとって必要な生活様式と岩田氏は述べる。症状が出てわかる状態では症状が進行しているといえ、早めに対策をしておきたい。
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