青学・原晋監督 常勝チームを作った“伝説の営業マン流”マネジメント

2017年の箱根駅伝では、青山学院大学が往路、復路とも制し、3連覇を果たした。チームを牽引するのは原晋監督。数年前まで箱根出場もできなかった弱小チームだった青学大を、どのようにして常勝チームに変えたのか。原晋監督のマネジメント手法を分析した。

毎年選手が入れ替わる大学チームの3連覇は偉業

毎年恒例、正月三が日の風物詩、箱根駅伝が開催され、青山学院大学が往路、復路とも制し大会3連覇を達成しました。

  

ひと口に3連覇といっても、毎年選手が入れ替わる大学チームの3連覇は、その数字以上に大変な偉業であると言えるでしょう。実際、初優勝した2015年のエントリー10選手のうち今年も箱根路を走った選手は3人。つまり初優勝チームから2年間で7人が入れ替わっているわけで、個々の選手の強さというよりも、そこはかとないチームの底力の違いが3連覇をもたらしたと言えそうです。

  

原マネジメントのキーワードは「営業」

チームを牽引するのは原晋監督。数年前までは、箱根出場もおぼつかない弱小チームだった青学大を、一体どのような手法で常勝チームに作り変えたのか気になるところです。原監督の経歴をひも解けば、選手としての陸上競技引退後、電力会社で売上げトップを記録する「伝説の営業マン」だったという逸話の持ち主でした。原監督は、その経験をチーム指導に活かしているのです。すなわち、原マネジメントのキーワードは「営業」なのです。

  

hara
優勝を決め、沿道の声に応える青山学院大の原晋監督(写真:田村翔/アフロスポーツ)

  

原マネジメントのポイントは大きく2点。ひとつは、営業には欠かせない「コミュニケーション」の重視。いまひとつは、営業についてまわる「目標」に対峙する姿勢と、その「目標」達成に向けPDCA(Plan、Do、Check、Action)サイクルを回す活動スタイルの徹底です。

  

1:上意下達ではない「聞く」コミュニケーション

「コミュケーション」では、「話す」だけでなく「聞く」をクローズアップして、とにかく量を確保しているようです。監督は家族住み込みで選手たちと生活を共にし、圧倒的なコミュニケーション量の確保に努めているとしています。従来の運動部指導からはおよそ常識破りの、上意下達ではないコミュニケーションスタイルが、選手との距離感を縮め強力な信頼関係を築く礎になっているのです。

  

2:期限を設けた「目標」と達成に向けたPDCA

一方の「目標」との対峙に関しては、単に数字を掲げるだけでなく、期限を設けて達成に向けて選手を動かすこと。その目標が達成されれば次なる目標と期限が定められ、達成できなければ新たなアプローチを検討する。この手のやり方は、実績が上がる営業部隊では必ずと言っていいほど励行されている管理手法でもあります。PDCAサイクルを回しながら、その繰り返しの中で個々の選手たちの記録を着実に伸ばしていき、個々人の能力を引き出すことでエース選手に頼らないチームとしての成長を実現していくのです。

  

はからずも常勝営業チームの作り方をも実証

「目標」への対峙という点からは、監督自らも就任時に「箱根駅伝に3年で出場、5年でシード権、10年で優勝争い」という明確な目標を掲げ、PDCAサイクルを回しながら選手を引っ張ってきた結果が今の常勝青学大駅伝チームなのです。陸上選手としては大成できなかった伝説の営業マンが見出した原流マネジメント手法は、はからずも常勝営業チームの作り方をも実証したことにもなるのではないかと思います。

  

実によく耳にする「営業が育たない」「営業チームの実績が伸びない」という企業経営者や管理者のお悩みですが、上意下達ではないコミュニケーションと実績への対峙を軸として展開する原流マネジメント手法を、自社の管理に取り入れてみてはいかがでしょう。

  

【関連リンク】

2017年箱根駅伝 青山学院大が3年連続総合優勝!記念クイズ

Lineで送る Facebookでシェア
はてなブックマークに追加

注目の連載

  • 意外と知らないグルメのひみつ

    日本のにんにくは中国産が9割。「国産にんにく」と「中国産にんにく」の違いとは? 3つの産地で比較

  • ヒナタカの雑食系映画論

    都知事選を想起させる? 映画『もしも徳川家康が総理大臣になったら』の「大真面目な面白さ」を解説

  • 植草美幸の恋愛・結婚相談ー編集部選ー

    「彼氏と結婚したい!」25歳女性、「結婚なんかしなくていい」と言う気難しい父親の悩み相談

  • ここがヘンだよ、ニッポン企業

    性加害疑惑・伊東純也選手のプーマ広告が復活 「告発女性を逆に訴える」という対応はアリだったのか?