三菱電機が労使協定(36協定)で定めた上限を超える残業を入社1年目の男性社員(31)にさせていたとして、厚生労働省神奈川労働局は11日、労働基準法違反容疑で法人としての同社と当時の上司1人を書類送検したと報じられている。
2016年より、36協定(サブロク協定)を超える違法残業に対する監視の目が厳しくなっている。労働基準法にある「36協定」とはどのような制度なのか。人事労務コンサルタントの小岩和男氏がAll Aboutの『残業(時間外労働・休日労働)トラブル防止対策』で次のように解説している。
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労働時間・休日とは
労働時間・休日には法令上の決まりがあり、労働基準法では、労働時間は1日8時間・1週40時間を超えて労働させることはできないとされている(一部例外事業あり)。また、休日については、毎週最低1日の休日か4週間を通じて4日以上の休日を与えることとされており、これを法定労働時間・法定休日としていると小岩氏は説明する。
「これが労働時間・休日の原則です。従って、原則として残業、休日労働は法律上できないことになっているのです。でも実際の企業活動ではこの通りにならず、同法で例外(クリアすべき要件あり)が認められています。この例外を認めてもらうための手続きを踏まないで残業をさせてしまうと、なんと刑事罰(6ヶ月以下の懲役、30万円以下の罰金)が課せられる可能性があります。」(小岩氏)
残業(時間外労働・休日労働)をさせるための必要な手続き
従業員に残業させるために、企業が実施しなければならないポイントとして小岩氏は以下の2点を挙げる。
- 就業規則等(労働組合との労働協約、個別従業員との労働契約を含む)に残業をさせる根拠規定(労働契約上の義務)を記載する
- 「時間外労働・休日労働に関する協定(36協定)」の締結・届出をする
36協定とは
時間外労働・休日労働に関する協定は、労働基準法の36条に規定されていることから、通称「36協定」と言われる。
この規定では、「時間外労働、休日労働に関する労使協定」(36協定)を締結し、所轄労働基準監督署長に届け出れば、従業員に残業をさせても法違反にならないという。なお、労使協定とは、労働者の過半数で組織されている労働組合、それがない場合は労働者の過半数を代表する者との書面協定のことを指す。
「企業に労働基準監督署による定期、臨時調査が入った場合、この36協定締結・届出の有無は、必ずといっていいほどチェックが入ります。手続きがなされていない場合は、是正勧告がなされることになります。」
36協定の作成方法と注意点
小岩氏は、36協定を作成するときに、実務上、次の事項を確実に押さえて手続きを踏むよう勧めている。
1. 時間外労働・休日労働の限度を、必要最小限に
厚生労働省から時間外労働の限度に関する基準(平成10年厚生労働省告示第154号)という通達が出されており、36協定の内容は、この基準に適合させる必要があるという。
2. 限度時間を超える場合には「特別条項付きの協定」が必要
一般的には、残業時間を1ヶ月45時間、1年間360時間以内で定めることが多いが、業務上この限度時間を超えてさらに労働させることがある場合は、「特別条項付きの36協定」を締結することが必要になる。この特別条項は、限度時間を超えて残業を行わなければならない特別な事情に限定され、臨時的に残業を行わせる必要のあるもので、全体として1年の半分を超えないものを指している。
3. 割増賃金の支払い義務
特別条項付きの協定を締結する際、限度時間を超えて働かせる一定期間ごとに割増賃金率を定めておく必要があると。時間外労働・休日労働をさせた場合は、割増賃金の支払いが必要になるためで、法定時間外労働の割増賃金率は25%以上、法定休日労働の割増賃金率は35%以上とされている。
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