「当て逃げ」とは何か? 事故を起こした時にすべきこと・注意点

漫才師の方が当て逃げ事故を起こしてしまい、活動を自粛しているとの報道に接しました。このような事件を起こした人は、どのような刑事上の責任を問われるのでしょうか。当て逃げ時事故、接触事故の定義や、事故を起こした時にすべきこと、注意点を解説していただいた。

芸能人が「当て逃げ事故」。どのような罪に問われるか

最近、ある漫才師の方が当て逃げ事故を起こしてしまい、活動を自粛しているとの報道に接しました。このような事件(逃げているので、事故ではなく事件と表現するのが適切だと思います)を起こした人は、どのような刑事上の責任を問われるのでしょうか。

  

※なお、漫才師の方は衝突事故に気づかずにその場から立ち去ったという報道もあり、仮にそうだとすれば後の記述は当てはまりません。もちろん、気づいていたか否かは本人の弁解だけで決まるのではなく、事故状況等から客観的に判断されます。

  

「当て逃げ」「接触事故」は法律の概念ではない

報道をみていますと、今回の事件を「当て逃げ事故」とか「接触事故」という表現としているものが見られます。厳密には、これらの表現は、法律上の概念として存在しません。

  

自動車運転手が交通事故を起こして事故現場から逃げた場合、「当て逃げ」と「ひき逃げ」という使い分けをすることが一般だと思います。通常は「当て逃げ」は物損事故を起こした場合、「ひき逃げ」は人身事故を起こした場合で使い分けされます。さらに言うと物損事故は、相手の自動車にぶつけて壊した等の物的損害を発生させた事故、人身事故は生身の人間に衝突して怪我をさせたり死亡させたりする人身損害を発生させた事故を想定しています。人身事故から連想されるイメージは、歩行者や自転車を運転している人に自動車を衝突させてしまった、というものではないでしょうか。

  

道路交通法ではどのように定められている?

法律(道路交通法)の作りは、次のようになっています。

  1. 交通事故が発生した場合、交通事故に関係する車両の運転手は、運転を直ちに中止して、死傷者の救護・道路における危険防止等の必要な措置を取らないといけない。
  2. 警察官に事故状況等を報告もしないといけない。
  3. 事故により死傷者が発生していた場合で、運転手が1の措置を取らなかった場合には、運転手の運転により死傷者が発生した場合だと10年以下の懲役又は100万円以下の罰金(ただし、死傷者の発生が運転手の運転によるものではないときは、5年以下又は50万円以下)という刑事罰を受ける。
    事故により死傷者が発生してない場合でも、運転手が1の措置を取らなかった場合には、1年以下の懲役又は10万円以下の罰金という刑事罰を受ける

さきほど人身事故の一般的なイメージを説明しましたが、法律では、歩行者や自転車運転者に対するものではなく、事故による死傷者が発生している場合とそうでない場合とで刑罰の重さに違いが設けられていますから、事故で相手方車両の運転者が死傷した場合でもそのまま逃げてしまうと重い処罰を受けることになります。

  

逃げた場合の処罰の重さの違いはあれ、交通事故が発生した場合には、人身事故でも物損事故でも、運転手は1と2の措置を取る義務があり、1の措置を怠ると、事故の違いによる重さの違いはあるものの、いずれにしても刑事罰を受けることになります。

  

事故を起こした時にやるべきことは

以上のような法律による規制がある以上、事故を起こしてしまったらとにかく、自動車を停止させて事故現場で死傷者がいないか確認し、いる場合は速やかに救護するための措置(119番する等)を行う必要があります。また、これと並行して、例えば道路において事故車両が放置されている場合はこれを路肩等の安全な場所に移動させたりするなど事故現場が危険な状況とならないよう防止する措置を取る必要があります。そして、これらの措置が一段落すれば次は110番し、交通事故が起こったこと・その時間・具体的状況等を報告しないといけません。

  

以上のことは、何も難しいことではなく、交通事故を起こしてしまった以上当然やるべきことなのは理解できると思います。しかし、事故を起こすとパニックに陥りますので、そのまま逃げてしまいたい衝動に駆られてしまうこともあります。しかし、そこは強い意思を持って絶対に逃げないというのが大事です。逃げると刑事罰を受けることになることもさることながら、逃げずに救護義務を取ることによって被害者の命を救うことができる、事故の拡大を防ぐこともできるからです。

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