レアルを追い詰めるも、鹿島が準優勝
日本サッカー界にとって、少し早いクリスマスプレゼントだっただろう。
12月18日に行なわれたクラブW杯決勝で、鹿島アントラーズがレアル・マドリード(以下レアル)を慌てさせた。9分に先制されるものの、44分、52分に柴崎岳がゴールをあげ、2対1と逆転する。60分にクリスティアーノ・ロナウドにPKを決められて追いつかれ、延長戦では2ゴールを奪われた。2対4で振り切られたものの、世界的なスターを揃えるヨーロッパ王者をギリギリまで追い詰めたのだ。
鹿島は守りを固めていない。いつもどおりのサッカーを表現した。しかも、外国人助っ人に頼っていない。準々決勝以降の3試合はスタメンを日本人選手で固め、全4試合であげた9ゴールはすべて日本人選手が記録している。日本人選手を中心としたチーム作りでレアルとぶつかり、スーパースターたちの眼の色を変えさえたところに、クラブW杯準優勝の大きな価値がある。
もしもレアルが10人になっていたら……
勝敗を分けた場面として、後半終了間際のファウルに触れなければならない。レアルのセルヒオ・ラモスが、警告に相当する反則を冒したのだ。彼はすでに警告を受けており、この場面では退場を宣告されるはずだった。ところが、ザンビアからやってきた主審はイエローカードを出さず、セルヒオ・ラモスは試合終了までピッチに立ったのだった。レアルへの配慮が働いたのは明らかだった。酷い誤審である。
ただ、まったく違う考え方もできる。セルヒオ・ラモスが退場し、10人になったレアルを鹿島が破っていたら。かつてのフランスの英雄・ジネディーヌ・ジダン監督のもとで公式戦の無敗記録を更新中のスペインの超ビッグクラブを、世界的にはほとんど知られていない極東のクラブが退けていたら。
メディアは大変な騒ぎになる。負けてなお「鹿島は良くやった」という論調が大勢を占めているのだ。もし優勝していたら、鹿島というチームは、鹿島の選手は、称賛の嵐に包まれていただろう。相手が10人になったことは記憶の彼方へ追いやられ、勝ったことがすべてを洗い流していたに違いない。
日本サッカーが示した可能性と力の差
日本サッカーの、日本人の可能性を示した鹿島の戦いは、2016年シーズンの最後に届いた最高のプレゼントと言っていい。ただ、彼らは勝てなかったのだ。延長戦でレアルに突き放されたのだ。足りなかったものは必ずある。ゲームの細部を比べていけば、技術でも、戦術でも、フィジカルでも、メンタルでも、レアルが上回っていたのは間違いないのである。
だから、「2位も最下位も一緒」というキャプテン小笠原満男のコメントが、とても頼もしい。レアルを追い詰めた末の準優勝にも、この37歳の元日本代表はいつもと同じ言葉を残した。
クラブ世界一にはなれなかったが、鹿島はかけがえのない時間を過ごした。彼らは満足をしていない。来シーズンはさらに逞しい姿を見せてくれるだろう。それだけに、「レアルが10人になっていたら」という「If(イフ)」は、もう忘れようと思うのである。
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