国立感染症研究所は、11月28日~12月4日の期間中の感染症発生動向調査を公開し、ノロウイルスなどを含む感染性胃腸炎の患者報告数が全国の患者報告数は、前週から1万4000人以上増え、5万4876人(前週は4万607人)。1医療機関当たりでみると17.37人で、過去10年の同時期比較をすると、2006年、2012年に次いで多い数字となっている。「感染性胃腸炎流行警報」を発令している都道府県もあり、注意をしていきたい。
吐き気や下痢といった症状が伴うノロウイルスの感染を拡大させないためには、まずは各々が予防対策をしなければならない。これに関して、消化器系病気に詳しい医師の染谷貴志氏がAll Aboutの『ノロウイルス・ロタウイルスの検査・予防・治療法』の中で、次のように解説している。
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ノロウイルスの感染予防と対策方法は?
染谷氏によると、感染経路を考えると、手洗い、調理器具の衛生管理が重要だという。
■手洗いの方法
手洗いは、調理を行う前、飲食業を行っている場合は食事を提供する前、食事の前、トイレに行った後、下痢等の患者の汚物処理やオムツ交換等を行った後など、手袋をして直接触れないようにしていても必ず行うよう述べている。
「石けんを十分泡立て、手の指の間、爪の間、手首などまでしっかり洗うことが大切です。石けん自体にはノロウイルスを直接死滅する効果はありませんが、通常の水洗いでは落としにくい手の脂等の汚れを落とすことにより、ウイルスを手指から剥がれやすくする効果があります」
■食品・調理器具の衛生管理方法
現時点で正確な数値はないが、食品の中心温度85度以上で1分間以上の加熱を行えば、感染性はなくなるとされている。そのため、特に子どもやお年寄りなどの抵抗力の弱い人は、中心部までしっかり加熱することが予防として有効。
集団感染を防ぐためには
家庭内や集団で生活している施設においてノロウイルスが発生した場合、集団感染を防ぐためには、ノロウイルスに感染した人の糞便や吐物からの二次感染、ヒトからヒトへの直接感染、飛沫感染を予防する必要がある。ノロウイルス感染による嘔吐、下痢では、嘔吐物、糞便ともに大量にウイルスが存在しているので、その取り扱いには十分注意が必要だと染谷氏は述べている。
「また、ノロウイルスは乾燥すると容易に空中に漂い、これが口に入って感染することがあるので、吐物や糞便は乾燥しないうちに、床等に残らないよう速やかに処理し、処理した後はウイルスが屋外に出て行くよう空気の流れに注意しながら十分に喚気を行うことが感染防止に重要です。殺菌には熱湯あるいは家庭用に販売されている液体の塩素系漂白剤、殺菌剤を使用します。アルコールや逆性石鹸にはあまり殺菌効果はありません。
汚れてしまった洋服、ふとん等は、付着した汚物中のウイルスが飛び散らないように処理する必要があります。
まず使い捨てのマスクと手袋を着用し、便や嘔吐物はペーパータオル等で取り除き、ビニール袋に入れます。残った糞便や嘔吐物の上にペーパータオルをかぶせ、その上から50倍~100倍に薄めた市販の塩素系漂白剤を十分浸るように注ぎ、汚染場所を広げないようにペーパータオルでよく拭きます。そうした後、洗剤を入れた水の中で静かにもみ洗いします。下洗いした洋服類の消毒は85度・1分間以上の熱水洗濯が適していますが、家庭であれば普通に洗濯をした後、乾燥機にかける、スチームアイロンを使用するなどの手段も有効です」
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