ASKA、覚せい剤使用容疑で逮捕 なぜ薬物使用の再犯はなくならないか

警視庁が歌手のASKA元被告を覚せい剤取締法違反の容疑で逮捕する方針を固めたとする報道について28日、ASKA本人が自身のブログで「間違いですよ」「(陽性は)100%ありません」などと否定している。どうして薬物依存から脱することが難しいのだろうか。専門家が解説した。

警視庁は28日、覚せい剤取締法違反(使用)の疑いで、歌手のASKA(本名・宮崎重明)容疑者(58)を逮捕した。ASKA容疑者は2014年9月、同法違反などの罪で懲役3年、執行猶予4年の判決を受け、執行猶予中だった。

  

あすか
2014年に保釈された時のASKA容疑者(写真:Motoo Naka/アフロ)

 

警視庁が逮捕する方針を固めたと報道された際、ASKA容疑者本人が自身のブログで「間違いですよ」「(陽性は)100%ありません」などと否定していた。

   

薬物所持の再犯で有名人が逮捕されるニュースは、これまでも繰り返されている。どうして薬物依存から脱することが難しいのだろうか。これに関して、医学博士の西園寺克氏が、All Aboutの『再犯者が続出……人が薬物依存から脱出できない理由』で次のように解説している。

 

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強い意志さえあれば止められる?

過去にも、薬物所持の再犯で有名人が逮捕されるケースが見られたが、薬物依存は「強い意志さえあれば止められる、ということではない」と西園寺氏は述べる。

   

「強い意志がある人ですら、適切な治療を受けなければ止められず、また長期間に渡って再依存の可能性に怯えながら、治療を続けなければならないのです。それまで強い意志と努力で、人一倍華やかな人生を順調に築いてきた人ですら、安易な薬物利用に一生を狂わされてしまうのはこのためです」

  

覚せい剤による脳のダメージは修復できない

覚せい剤は「気分がよくなるもの」「使うとスカッとするもの」など、一時的な気分に働きかけるものだと認識されがちだが、覚せい剤の影響は決して一時的なものではないという。脳には、化学物質による刺激を受けることで、元に戻らなくなるほど変化してしまう部分があるのだと西園寺氏は説明する。

  

覚せい剤による後遺症は、この「戻ることのない変化」が脳に生じることで起こる。例えば、風邪薬をはじめとする普通の薬の場合、服用を止めて一定期間すれば身体への薬の影響はなくなる。しかし、覚せい剤にはこの作用がなく、一度摂取した薬物の影響がずっと身体に残るのだという。

  

長期間経ってからフラッシュバックが起こることも

強い意志と本格的な治療で覚せい剤を止めたとしても、長期間経ってから、薬物使用時と同様の妄想や幻聴などの症状が突如起きることもあり、これを「フラッシュバック」と呼ぶ。体内にできた化学物質が過去の覚せい剤の影響で、まるで覚せい剤のように作用してしまうためと考えられている。フラッシュバックによる不快な妄想や幻聴、強い不安感などの症状から解放されたくて、再び覚せい剤に手を伸ばし、悪循環に陥ってしまう人も少なくないと西園寺氏は述べる。

  

一度覚せい剤に手を染めると、元の身体には戻れなかったり、長期間苦しむことになったりするのは、フラッシュバックがあるためとも言える。

  

人が簡単に薬物依存に陥ってしまう理由

西園寺氏は、薬物依存が起こるメカニズムは、完全には解明されてはいないとしているが、「薬物依存症には、薬物の作用に対する『記憶』が関係していて、私たちの脳が薬物依存症を起こしやすいようにできているのは確かです」と述べている。

  

脳は、脳内でできた化学物質や体内で放出された化学物質により、鎮静(麻痺)したり、刺激を受けて興奮したりを繰り返している。化学物質に対する反応は、脳内の部位により異なる。薬物依存を起こす薬物を、少し単純化し過ぎだが、最も簡単に分けると麻痺系(抑制系)と興奮系(刺激系)に大別できる。麻痺系の代表はアルコール、興奮系の代表が覚せい剤と西園寺氏は説明する。

 

なお、依存性のあるものとしては、タバコ(ニコチン)やカフェイン、アルコールなどもある。西園寺氏は「合法・非合法の差はもちろん大きなものだが、自分は絶対に薬物依存にならないという過信は絶対に禁物」とし、どんな薬物でも肉体の一部である「脳」に作用し、ダイレクトに依存させる力を持っているということを忘れてはならないと述べている。

    

【関連リンク】

再犯者が続出……人が薬物依存から脱出できない理由

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