日本レスリング協会の栄和人強化本部長は24日、都内で行われた代表合宿で、リオデジャネイロ五輪女子75キロ級代表の渡利璃穏(りお)選手(25)が悪性リンパ腫の一種「ホジキンリンパ腫」で闘病中であると明らかにした。NHKなどが報じた。
渡利選手はリオ五輪前の検査で胸部に異常があり、五輪後の精密検査でリンパ腫と判明したという。現在は抗がん剤で治療中という。
悪性リンパ腫とはどのような症状があり、治療をするのか。医学博士の狭間研至氏がAll Aboutの『悪性リンパ腫の原因・症状』と『悪性リンパ腫の検査・治療』で以下のように解説している。
**********
悪性リンパ腫とは
狭間氏によると、悪性リンパ腫は「血液のがん」とも言われる。がんのことを悪性腫瘍と言うが、「悪性」というのは細胞などが規律を持たずに無秩序に増え続けることを指すと狭間氏は説明する。
人間の体には、主に免疫の働きに関与する「リンパ系」組織があり、このリンパ系が本来の規律を守らずに無秩序に増え続けてしまう疾患が悪性リンパ腫。悪性リンパ腫が起きる原因は完全には解明されていないが、一部ウイルスによる感染をきっかけに発症するものがあるため、血液検査をすることがあるという。
悪性リンパ腫の症状・初期症状
狭間氏によると、悪性リンパ腫の主な症状は以下の通りという。
- 発熱……37℃前後の微熱が続く
- 全身倦怠感……なんとなく体がだるい。疲れがとれない
- 貧血……立ちくらみやふらつきが見られる。血液検査で指摘される
- 体重減少……ダイエットをしているわけでもないのに、半年で5kg、もしくは5%以上体重が減る
- 著しい寝汗…寝間着を着替える必要があるような寝汗が続く
- 皮膚の下のしこり…皮膚の下に弾性のあるできものができる。首や腋(わき)の下、足の付け根など、体表に近いリンパ節が腫れてできる。これで、初めて異常に気づくこともあるという。
狭間氏は、他のがんとの大きな違いとして「特徴的な症状が少ないこと」を挙げる。例えば、胃がんの場合は食欲不振や上腹部の痛み、肺がんの場合は咳や血痰などの特徴的な症状があるが、悪性リンパ腫の場合は、症状のほとんどが発熱や倦怠感などのよくある症状。何となく体調がすぐれないと病院を受診し、検査を進めるうちに悪性リンパ腫とわかるケースも少なくないという。
悪性リンパ腫の治療法は
狭間氏によると、通常の悪性腫瘍は、手術・抗がん剤・放射線の「3大療法」を組み合わせて治療するという。基本的には腫瘍が小さいときや腫瘍ができている部位が限られているときには手術が有効で、もともと腫瘍ができている箇所から血液やリンパ液の流れを介してがん細胞が全身に広がっている可能性があるときには、抗がん剤や放射線が有効という。
しかし、悪性リンパ腫は、もともと全身を巡っているリンパ組織の悪性腫瘍であり、一部の臓器に限定される時期がないといい、「治療のために手術でどこかを切除するという選択肢は基本的にない」と狭間氏は述べる。また、全身に放射線を使い続けることもできないため、3大療法の中でも「手術」「放射腺」という大きな選択肢が使えないことも悪性リンパ腫の治療の特徴と狭間氏は説明する。
狭間氏によると、この10年あまりの間に悪性リンパ腫の治療は大きく進歩しているという。また、悪性リンパ腫は比較的まれな疾患だが、早期発見・早期治療が重要なことは他のがんと同じであり、「気になる症状があれば、早めに近くの内科を受診してください」と述べている。
【関連リンク】