高齢ドライバーによる重大な交通事故が全国で相次いでいる。

 

10月は横浜市内で87歳の男が運転する軽トラックが集団登校していた小学生の列に突っ込み、男児1人が死亡。今月12日には立川市の病院駐車場で83歳の女性の乗用車が暴走し、男女2人がはねられ死亡した。13日にも、小金井市で82歳の男性が運転する車が自転車に乗った女性とぶつかり死亡した。

 

警視庁によると、都内における交通事故の総件数は年々減少しているが、一方で高齢運転者(特殊車を含む原付以上を運転している65歳以上)が関与する交通事故の割合は増加傾向にあり、2014(平成26)年は総件数の20.4%を占めていたという。

 

相次ぐ事故を前に、高齢の親をもつ子ども世代の中には、運転免許証の自主返納を促したいと考える人がいるかもしれない。こうした時の心構えについて、介護ジャーナリストの小山朝子氏がAll Aboutの『高齢の親に免許返納させた3つの作戦』で以下のように解説している。

 

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免許返納の課題

高齢ドライバーの免許返納を考えるにあたって、いくつかの課題があるが、小山氏は以下の2点を中心に説明している。

 
1点目は公共交通機関が整備されていない地域の高齢者にとって、買い物や通院のために車が必要不可欠なケースがあること。自宅と病院間を送迎するサービスなどはまだ稀なケースで、多くの場合はタクシーを利用するなど、各自で代替手段を確保しなければならないのが実情であるということを忘れてはならない。

2点目は、運転をやめるか継続するかは個人の尊厳に関わることでもあるという点だ。運転を自らの「生きがい」や「楽しみ」と考える人の場合は、それを取り上げてしまうことは、生きがいをなくしてしまうことにつながりかねない。
 
改正道路交通法では、75歳以上の運転免許更新時に認知症の疑いがあると判断された場合、医師の診断が義務づけられた。自分では「まだまだ若い」とは思っていても、年を重ねれば肉体は確実に衰えていくものであり、高齢者の定義である65歳以上の人には、健康診断のようなシステムで運転能力を自覚できる検査の義務づけをするなど、もっと早い段階からのスクリーニングが必要ではないか、と小山氏は問題提起をしている。

こうした課題を踏まえた上で、実際に家族が免許返納を促す際はどうすればいいのか。高齢の父親に免許返納を促すことができた、ある家族の「3つの作戦」を紹介している。
  

作戦1:家族全員による連携プレー

この家族は当初、妻である母親が夫である父親に何度も促していたが、父親は頑として聞き入れなかった。そこで母親は、実家によく遊びに来る、父親とも関係性の良い長女に相談した。長女は説得を試みたが、長女の心配する気持ちも父親には届かず、努力は徒労に終わったのだという。

次に長女は兄である長男に相談。普段は多忙で、両親とは疎遠だった長男だったが、母親と妹の頼みを受け入れ父親に話をしてみたところ、父親はようやく免許返納を受け入れたという。

小山氏は、これは介護にも言えることだといい、「誰か1人が抱え込む」より、家族や友人、介護専門職などの力を借りることは、免許返納の説得という状況においても得策で、いつもとは違う人間が対応することで、人の心が変わることはよくあると指摘している。
  

作戦2:費用対効果を訴えた

説得の方法にも工夫があった。この長男は、「もう高齢だから」「認知機能が落ちているから」という点からの説得ではなく、「お金」のことから切り出したという。

現在、車を所有していることで費用はどれくらいかかっているのか、具体的な数字とともに提示。加えて、父親が所有している車が古い車で、自動車税が割増される点なども強調した。

その上で親が所有する古い車を指し、「この車にそれだけのコストをかける価値があるのかどうか」、さらに、「自治体によっては運転免許の自主返納をすることで、タクシーやバスの割引券配布などの優遇措置がある」ことも伝えた。

「年々リスクが高まることに高額なお金を費やすなら、そのお金をほかの楽しみに使うのも悪くないのではないか」と提案してみたという。コストの話をしてから、これまで母親や長女の話に耳を貸さなかった父親の態度が変わったそうだ。
  

作戦3:「持たないことで若返る」と「父親の深層心理」

長男が、友人から聞いた「過去の思い出の品に執着しているのは、過去に生きていることでもある。不要品を捨てれば今の生活を楽しみ、それが若返りにもつながる」といった内容のインターネット記事が、父親の免許返納にも通じると考えた点も大きかったそうだ。

父親の青春時代は、車は憧れの存在で、車が一種のステイタスと若さの象徴であり、そのため、車を手放したくないという思いが強いのではないかと長男は気付いたのだという。そこで、世間話のように「時代も変わり、現代人にとって車はもはや憧れの存在ではない。いまは持たない選択をする人も増えた」と、それとなく父親に話したそうだ。その後、この父親は免許を返納し、車を業者に買い取ってもらったという。

小山氏は、この例のように、免許返納の一翼を担うのは、子世代の知恵と行動力、そして疎遠になりがちな親子がコミュニケーションをはかるようになったことにあるとしており、運転免許をもつ親を持つ子世代は、我が身のこととして考えてほしいと述べている。

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