大手広告代理店「電通」の新入社員だった高橋まつりさん(当時24歳)の自殺が労災認定された。
時事通信によると、高橋さんは11月上旬にはうつ病を発症しており、発症前1カ月の残業時間は約105時間と認定された。また高橋さんはSNSで「君の残業時間の20時間は会社にとって無駄」といった上司からパワハラ発言を繰り返されていたことを明かしている。
大幅な残業をしなければいけない状況に追い込まれたり、パワハラ発言などに苦しめられたりする事態に陥ったとしても我慢してしまう場合があるかもしれないが、命を絶ってからでは遅い。どのような時に声を上げ、自分の身を守れば良いのか。これに関して精神保健福祉士の大美賀直子氏はAll Aboutで以下のように解説している。
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パワハラ行為類型とは
大美賀氏によると、パワーハラスメント(パワハラ)を受けている人は、自分が職場でされて不快に思うことが、パワハラの「6つの行為類型」に当たるかどうかを、よく振り返ってみることが大切という。
パワハラの「6つの行為類型」は、2012年に厚生労働省の円卓会議によって発表されていると大美賀氏は説明しており、以下の6つの行為は、パワハラに当たるとされている。(※ただし、これだけをパワハラだと限定しているわけではない)
- 身体的な攻撃(殴ったり、蹴ったりという身体的暴力、暴行、傷害)
- 精神的な攻撃(脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言)(例)部下を指導する際に、「君は何をやらせてもダメだな……」などと、うっかり口をすべらせてしまう。これは指導を超えて相手の人格を非難していることになる
- 人間関係からの切り離し(隔離・仲間外れ・無視)
- 過大な要求(業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害)
- 過小な要求(業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと)
- 個の侵害(私的なことに過度に立ち入ること、プライバシーの過剰な詮索)
パワハラから身を守るには
こうしたパワハラ行為を受けていることが分かった場合は、
- 周りの信頼できる人
- 職場の相談窓口
- 自治体にある電話相談窓口
- 都道府県労働局、労働基準監督署の総合労働相談コーナー
などに相談してみることを大美賀氏は勧める。
大美賀氏によると、「このくらい耐えられなきゃ、生き残っていけない」「上司だって、同じようなパワハラを受けてきたんだ」といった考えから、我慢してしまう人もいるが、そうしてストレスを抱え込むと、心の病を発症してしまうこともあるという。そのうえで、「『嫌だ』『怖い』『不快だ』といった、素直な感じ方を大切にすること。そして、周囲に相談をしましょう。すると、自分1人では気づかないような、よい解決策が見つかるかもしれません」と大美賀氏は述べている。
働くことは、パワハラに耐えることではなく、労働者には、パワハラに振り回されず、まっとうに仕事をする権利があることを覚えておきたい。
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