政府は7日、過労死等防止対策白書を初めて閣議決定した。
白書は、2014年に成立した過労死等防止対策推進法において、国会で提出することが定められている。これに伴い、厚生労働省は2015年12月~16年1月に、企業約1万社(回答は1743件)と労働者約2万人(同19,583件)を対象とする調査を実施し、結果を白書に盛り込んだ。
1週間の就業時間が60時間以上の雇用者の割合は減少傾向にあるが、性別、年齢層別には、30歳代、40歳代の男性で週60時間以上就業している者の割合が高い。
残業時間が過労死の目安とされる月80時間を超えた正社員がいた企業の割合は全体で 22.7%あり、業種別にみると「情報通信業」(44.4%)、「学術研究,専門・技術サービス業」(40.5%)、「運輸業,郵便業」(38.4%)の順に多かったという。
白書によると、過労死には、業務における過重な負荷による脳血管疾患・心臓疾患を原因とする死亡と、強い心理的負荷による精神障害を原因とする自殺による死亡があるという。
政府は今後、過労死等をゼロとするために週労働時間60時間以上の雇用者の割合を5%以下にすることを目指し取り組んでいくというが、労働者側の我々も自分の身を守るための行動をとることが重要だ。「まだ頑張れる」と無理をして命を落とす事例もあるといい、「隠れ疲労」を早期に自覚できることが必要である。これに関してカイロプラクティック理学士で疲労などに詳しい檜垣暁子氏がAll Aboutで以下のように解説している。
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疲れはどうして出るか
檜垣氏によると、そもそも疲れを感じるということは、体からの危険を知らせるものであり、「体調を崩す」「集中力が途切れる」「仕事の能率が低下する」といったサインでもあるとする。
この「疲れ」の感じ方には個人差があり、疲れていても疲れが表に出ないのは危険なことと指摘する。多少の無理がきく体として、疲れの実感をぼやかしてしまうと、急激に体調を崩す可能性を高めてしまうという。
例えば睡眠不足で仕事の疲れがなかなか抜けなくても、休日の趣味や好きなことに対しては、疲労をさほど感じなくなるケースも少なくないという。これによって疲れを隠してしまい(つまり「隠れ疲労」)、疲労が回復しないまま、通勤が続くという事態になると危険だという。
頑張れる人は要注意
檜垣氏は「気持ちを切り替えれば大丈夫」と自分を今以上に頑張らせることができ、連日の残業で寝不足が続いている過酷な状態でも乗り越えることができる人こそが、「隠れ疲労」に陥りやすく注意が必要としている。
意識をして疲れを隠そうとしなくても、結果的に「疲労を感じないように隠してしまう状態」になっているケースも含まれ、過酷な状況を乗り越えること自体を「楽しい!」と感じることができる人でも、気持ちとは裏腹に身体は「休みたい、寝かせてほしい」と疲労回復を要求しているかもしれないという。
隠れ疲労のチェックポイント
隠れ疲労に陥りやすいか否かは以下の項目から確認できる。
□多少疲れていても、楽しいイベントなどには参加すると疲れが消える
□人から頼られると、はりきって頑張るタイプだ
□大きな課題を成し終えたあとの達成感や充実感は、たまらなく好きだ
□自分へのご褒美があれば、つらいことでも乗り越えられる
□休日は、なるべく遊びや買い物など外出をするようにしている
□寝ている時間がもったいなく感じるので、眠くても起きて趣味などの時間に当てている
□責任感のある仕事を任されていて、今、まさにやる気に満ち溢れている
当てはまる項目が多いほど、隠れ疲労状態に陥りやすく、最悪の場合は突然倒れ、過労死になりかねないと檜垣氏は警告する。もし当てはまる場合は、自身のライフスタイルや1カ月のスケジュールを客観的に見直す必要があるかもしれない。
また、以下のポイントにも注意が必要で、傾向が当てはまる場合は、空き時間などで積極的に「身も心も休ませる」に徹してほしいと檜垣氏は訴える。
- 睡眠不足になりがち
- ぼ~っとリラックスする時間が足りない
- 食事をきちんととる時間が少ない
- 心身を活動的に維持している時間が長い
- 休息時間・疲労回復時間が少ない人で、健康のためと称して毎週スポーツに励んでいる
檜垣氏はストレス解消を名目にあちこち遊び回らず、体の力を抜きながら、のんびりと過ごすことも大事と指摘している。
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