歌舞伎俳優の市川海老蔵の妻で、乳がんで闘病中のフリーアナウンサー、小林麻央さんが20日、自身のブログを更新。生体検査(生検)の結果を告知された日の様子をつづり、医師から乳がんが脇のリンパ節に転移していたこと、現在は肺や骨にも転移があることを明かした。
がんの転移はどのようなメカニズムで起こるのか。生体検査はどのようなことを調べるのだろうか。また、がんの「ステージ」とはどのようなものなのか。がん治療に詳しい医学博士らがAll Aboutで解説をしている。
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がんとは
女性特有の病気について詳しい医師の山田恵子氏によると、「がん」とは、体を構成している正常な細胞が悪く変化して、本来の正常な機能を失って無秩序に増え続けるようになったものを指すという。「がん細胞」は、本来その細胞があった場所を越えて周囲の正常な組織や臓器を壊しながら広がるという。この広がり方はがんの種類や年齢などによって差があると山田氏は説明する。
がんの治療を始める前にする検査は
がん治療に詳しい医学博士の狭間研至氏によると、健康診断でがんを疑われると精密検査を受けることになる。万一がんの可能性があるのなら、一刻も早く治療したいと願うものだが、適切な治療を行うためには、以下の3つを調べなければならないと狭間氏は説明する。
- 本当にがんかどうかを確かめる(質的診断)
細胞の一部を採取して調べる「生体検査(生検)」で確認する - がんの場所を同定する(局在診断)
レントゲンやCT、超音波検査(エコー検査)などで明らかにする - がんがどの程度進行しているのかを見定める(病期診断)
もともとの病巣の大きさや進達度、リンパ節や他の臓器への転移の程度を検査して判定
病期診断の大まかな考え方、ステージは
病期診断では基本的にIーIVの4つのステージに分類し、「ステージI」「II期」という風に結果を告げると狭間氏は説明する。病巣の大きさなども確認するが、最も重要な指標となるのは、「他の臓器への転移があるかないか」だと狭間氏は述べる。
他臓器への転移があれば、「IV期(ステージIV)」という最も進んだ病期として判定される。
他臓器への転移がなければ、もともとの病巣の大きさとリンパ節への転移の程度を指標として分類するという。基本的には、病巣も小さくリンパ節への転移がない状態が「I期(ステージI)」。病巣が大きくなったり、リンパ節への転移が進むにつれて、II期(ステージII)、III期(ステージIII)とあがっていくという。
この分類は、どの部位にできたがんかによって多少異なるといい、またI期をIa期とIb期に分けるなど、細かく分類する場合もあると狭間氏は説明する。
なお、小林麻央さん同様に乳がんであることを明かしている女優の南果歩さんは「ステージI」にあると述べている。
がんのステージ・進行度の理解が大切なわけ
がんの病期(がんのステージ・進行度)を決めるには、いくつかの検査が必要になるため、がんの疑いが発覚してから治療が始まるまでには、通常2~4週間程度の時間がかかると狭間氏は述べる。
がん治療は手術、抗がん剤、放射線という3つの治療法を組み合わせて行っているといい、どの組み合わせ、順番で行くかは、3つの診断結果から検討されると狭間氏は説明する。
狭間氏によると、細胞の種類によって用いる抗がん剤の種類も変わるという。また、他臓器への転移があるIV期の場合には、基本的には手術は行わずに、抗がん剤や放射線の組み合わせで行うこともあるという。
がんの転移メカニズムとは
山田氏によると、例えば肺がんなら肺の正常細胞から、子宮がんなら元は子宮の正常細胞が変化したものであり、文字通り、肺がんは肺に、子宮がんは子宮にあるものだという。
ところが、がんが大きくなったり、勢いが強くなると、がん細胞は血液やリンパ液といった体を循環するものに乗り、最初にがんができた場所ではないところに流れ着き、そこでがん細胞が増え続けるという。たとえば、「肺がんが肝臓に転移する」ということは、「肺がん=肺の細胞から発生して、肺で大きくなったがん」が「肝臓に流れ着いて肝臓のなかで増殖している」ということになる。
つまり転移したがんは、場所は肝臓にあったとしても、もともとの肺がん(これを原発巣という)の特徴を備えるという。よって、効果的な薬物療法も原発のがんに準じて行うことになるという。さらに、例えば胃がんや大腸がんは肝臓に転移しやすいといったような「他の臓器との相性」があると山田氏は説明する。
がんの転移の仕方としてほかにも、播種性転移(がん細胞が腹水や胸水に散らばってお腹や胸のなか全体に広がる)という形もあるという。
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