梅毒患者が急増 どのような症状、検査、治療をするのか

「過去の病気」と認識されてきた梅毒患者が増えているという。2016年は2015年を上回る患者数が報告されている。どのような症状や検査、治療をするのか、専門家が解説した。

「過去の病気」と認識されてきた梅毒患者が増えているという。

  

山陽新聞によると、2016年の岡山県内患者数は、8月末時点で24人(男17人、女7人)と、すでに最近10年で最も多かった昨年の25人に迫る勢いだと報じている。

  

国立感染症研究所の報告でも、2010年以降梅毒の報告数は増加傾向に転じており、2016年3月までの報告は、昨年と同様傾向で増加が継続していて、2016年3月30日時点で梅毒と診断・報告された症例数は796例(暫定値)で、2015年の同時期の2倍だったという。

 

梅毒とはどのような病気なのか。All Aboutの専門家が以下のように解説している。

 

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梅毒とは

性感染症内科医師の内田千秋氏によると、梅毒は、梅毒トレポネーマによる感染症で、主に性行為や類似行為により感染する性病で、感染経路は皮膚や粘膜の小さな傷などである。

日本では、第二次世界大戦後の1955年に大流行がみられ、その後も一時的な流行はあったが、現在では過去の病気として、梅毒を診療したことのある医師も少なくなっていると内田氏は述べている。

 

日本産婦人科学会専門医である清水なほみ氏によると、妊娠中に母体が梅毒に感染していると、赤ちゃんが「先天性梅毒」になる危険性があるが、最近は妊娠初期に行う採血で必ず梅毒の感染の有無を調べるため、先天性梅毒もほとんどみられないという。

 

梅毒の原因と症状は

清水氏によると、梅毒トレポネーマ(Treponema pallidum subspecies pallidum、以下T.p.)という細菌が皮膚や粘膜の小さな傷から侵入する事で感染し、傷から入ったT.p.は血液に乗って全身に広がり、皮膚や内臓に様々な症状を引き起こすという。梅毒は第1期から第4期まで、感染からの時間とともに症状の出方が変化していくと清水氏は説明している。

 

■ 第1期

感染から約3週間後に、原因となるT.p.が侵入した局所に、小豆大~そら豆大の軟骨のようにコリコリしたしこりが出現する。これを初期硬結と言うと清水氏は説明する。初期硬結はだんだん周囲に広がって硬くなり、中心に潰瘍ができて「硬性下疳(こうせいげかん)」と呼ばれるできものになる。いずれも痛みなどの自覚症状はなく、男性では陰茎、女性では小陰唇や大陰唇に発生することがほとんどと清水氏は述べている。

 

しこりができてしばらくすると、足の付け根のリンパ節が腫れてくるが、押さえても痛みがないのが特徴だという。

 

清水氏によると、これらの症状は放置しても2~3週間で自然に消えて、約3ヵ月後に第2期の症状が出るまで無症状となるといい、「そのため、全く無症状で梅毒に感染した状態を保っている時期が存在することになります」と清水氏は述べている。

 

■ 第2期

T.p.が血液に乗って全身にばら撒かれた状態。感染から約3ヵ月後に、様々な性質・状態の発疹が全身に出現するという。

 

■ 第3期

感染から3年以上経って、皮下にゴム状の腫瘍ができてくることがあるという。

 

■ 第4期

梅毒による血管の炎症や神経の障害による進行性の麻痺などが現れる。

 

なお、現在、第3~4期梅毒を見ることはほとんどないと清水氏は述べている。

 

梅毒の検査とは

内田氏によると、梅毒の検査は、血液中に抗体があるかどうかで判定するという。感染機会から約1ヶ月後に検査ができるようになるといい、検査方法は、脂質抗原法とTP抗原法の2種類を組み合わせて総合的に判断するという。

 

なお、TP抗原法では、一度感染して、陽性と判定されると、一生、陰性化することはないため、完治した後に、再度感染した可能性がある場合は、脂質抗原法で検査することを内田氏は勧めている。

 

梅毒の治療とは

ペニシリンを服用することで、初期の梅毒は完治すると内田氏は述べている。薬を服用する期間は、初期の梅毒感染の場合は2~4週間、中期の梅毒感染の場合は、8週間~12週間が必要になるという。

 

梅毒の予防法

清水氏は予防法として、「コンドームを初めから毎回正しく使うことが最も有効」としている。また梅毒に感染しているとHIVへの感染率が高くなり、またHIVに感染している人は梅毒にもかかりやすいため、どちらかへの感染が確認されたら必ずもう片方の検査もしておいた方がベターと述べている。

 

【関連リンク】

梅毒の症状、原因、治療法

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