配偶者控除、見直しを検討へ どのような制度になる?

自民党の二階俊博幹事長は30日の記者会見で、専業主婦世帯を優遇する所得税の「配偶者控除」の見直しについて検討する考えを示したと、朝日新聞などが報じている。年末に、2017年度与党税制改正大綱をとりまとめる際に、盛り込む方針という。これまでの配偶者控除とはどのようなものだったか。そして今後はどのような制度になるのか。専門家が解説した。

自民党の二階俊博幹事長は30日の記者会見で、専業主婦世帯の所得税優遇策である「配偶者控除」の見直しについて、検討する考えを示したと、朝日新聞などが報じている。年末に、2017年度与党税制改正大綱をとりまとめる際に、盛り込む方針という。

 

女性の社会進出や共働き世帯が多くなっている一方で、配偶者控除が女性の労働参加の「壁」となっているといい、二階幹事長は「時代の変化をとらえて税制を適切に変えていくことは必要。党としても支持したい」と述べたという。

 

この配偶者控除の見直しについて、ファイナンシャルプランナーの福一由紀氏がAll Aboutで以下のように解説している。

 

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2017年からは「配偶者控除」から「夫婦控除」に?

福一氏によると、女性が働きやすい環境になるように、共働きの子育て世帯を意識した新制度導入の検討を政府がはじめており、早ければ2017年から導入されるという。

 

現在検討されている中で一番有力なのが、「夫婦世帯」を対象とする新たな控除の創設という。この控除は、配偶者の収入に関わらず適用される見通しで、どのような働き方を選択しても同じ結果となる中立的な制度になるという。夫婦で子どもを産み育てようとする夫婦に対する優遇策で、今までの配偶者控除とは全く異なる制度となるようだと福一氏は述べている。

 

福一氏は配偶者控除の廃止と新しい制度の導入によって、専業主婦やパート主婦に対する「税の優遇」がなくなるため、女性の働き方に大きな変化をもたらすものとなると指摘している。

 

配偶者控除とは? 「103万円の壁」とは?

福一氏によると、「配偶者控除」は、一定の所得以内の配偶者がいるなら所得税を安くするというもので、専業主婦やパート主婦の家庭では、夫の所得税が減税されているということになる。

 

「一定の所得」とは、パートなどでいう給与所得では「年収103万円」となる。世帯収入を減らさないために、パートの収入を年収103万円以内におさめようとすることから「103万円の壁」と言われ、女性の労働参加の壁となっていた。

 

この配偶者控除が廃止されると、妻の年収によって夫の所得税が変わらないことになる。よって福一氏は「今後の家計を安定させるには、世帯収入アップが不可欠。妻も働くことに越したことはありません」と述べている。

 

「130万円の壁」も「106万円の壁」になる?

所得税の配偶者控除の「103万円の壁」の他にも、パートなどの主婦を悩ませるものとして「130万円の壁」があると福一氏は説明する。

 

「130万円の壁」とは、夫が会社員や公務員の場合、妻の年収が130万円までであれば、年金や健康保険の被扶養者になり保険料負担が必要ないという。つまり、年収130万円を超えると、年金や健康保険の保険料を自分自身で支払うことになる。保険料負担も家計への影響が大きいため、年収130万円というのも大きな壁になっている。

 

この130万円の壁が、一部の人にとっては「106万円の壁」に2016年10月から引き下げられることになると福一氏は説明している。

 

2016年10月から、パートなどの短時間労働者の厚生年金適用の基準が拡大される。福一氏によると、短時間労働者へのセーフティネットの拡大が目的だが、保険料の負担も大きなものになると指摘している。

  

現在は週30時間以上のパートで厚生年金に加入することになっているが、2016年10月からは、

  1. 週20時間以上
  2. 年収106万円以上
  3. 勤務期間1年以上
  4. 従業員501人以上の企業

上記の基準すべてを満たす場合、厚生年金に加入することになるという。その後も、従業員数の規制を緩めて対象者を増やす方向だと福一氏は説明している。

 

「106万円の壁」などがある中で、賢く世帯収入を増やしていくには以下のステップをとることがお勧めだと福一氏は述べている。

 

ステップ1:猶予期間中に仕事探し

現在働いていない妻が育児などとの両立をしながら働くために、猶予期間を有効に使うべきだと福一氏は説明する。配偶者控除がなくなる時期は早くても2017年1月であり、「それまでの間に職場や仕事を探して、働き始めることを目標にしましょう。長く働ける、収入アップが見込める仕事を選ぶのがポイント」と福一氏は述べている。

 

ステップ2:キャリアアップを目指す

仕事を始めても、がむしゃらにただ働くだけというのはNGで、「配偶者控除が利用できる間は、ウォーミングアップ期間と考えるのが得策」と福一氏は述べる。目先の収入を増やすより、キャリアップにつながること、時給が増える方法を考えることが重要とのことだ。福一氏は、資格をとったり、仕事に必要な勉強をしたりするなど、力を蓄えることを勧めている。

 

ステップ3:廃止と同時に年収160万円以上を目指す

配偶者控除の廃止が決まったら、そこからは一気に年収アップを目指し、年収160万円以上を目標にするといいと福一氏は述べる。

 

これは、社会保険(年金、健康保険)が夫の扶養からはずれ、自分自身で厚生年金や健康保険の保険料を払っても、世帯収入が減らないところまで働くためだという。また、一般的に年収160万円を超えるとその負担分を超えて手取りが増えていくためだという。

 

福一氏は「配偶者控除の制度を最後まで利用して恩恵を受け、廃止と同時にドンと稼ぐ。 今、フルタイムで働くことができない環境の妻にとっては理想のパターン」としている。

 

【関連リンク】

配偶者控除廃止?損をしない共働きへの3ステップ

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