時天空が現役引退、年寄襲名へ 悪性リンパ腫の治療とは

日本相撲協会は26日、悪性リンパ腫で闘病中の元小結時天空(36)=本名時天空慶晃、モンゴル出身、時津風部屋=が現役を引退し、年寄「間垣」を襲名すると発表した。時事通信などが報じている。25日の理事会で承認され、29日に時津風部屋で引退会見が行われるという。悪性リンパ腫とはどのような症状があり、治療をするのか。

日本相撲協会は26日、悪性リンパ腫で闘病中の元小結時天空(36)=本名時天空慶晃、モンゴル出身、時津風部屋=が現役を引退し、年寄「間垣」を襲名すると発表した。時事通信などが報じている。25日の理事会で承認され、29日に時津風部屋で引退会見が行われるという。

 

時天空は2015年7月に肋骨周辺に痛みを訴え、悪性リンパ腫と診断された。抗がん剤治療などのため、昨年11月の九州場所から休場していた。

 

悪性リンパ腫とはどのような症状があり、治療をするのか。医学博士の狭間研至氏がAll Aboutで以下のように解説している。

 

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悪性リンパ腫とは

狭間氏によると、悪性リンパ腫は「血液のがん」とも言われる。がんのことを悪性腫瘍と言うが、「悪性」というのは細胞などが規律を持たずに無秩序に増え続けることを指すと狭間氏は説明する。

 

人間の体には、主に免疫の働きに関与する「リンパ系」組織があり、このリンパ系が本来の規律を守らずに無秩序に増え続けてしまう疾患が悪性リンパ腫と狭間氏は述べる。

 

悪性リンパ腫が起きる原因は完全には解明されていないが、一部ウイルスによる感染をきっかけに発症するものがあるため、血液検査をすることがあるという。

 

悪性リンパ腫の症状・初期症状

狭間氏によると、悪性リンパ腫の主な症状は以下の通りという。

  • 発熱……37℃前後の微熱が続く
  • 全身倦怠感……なんとなく体がだるい。疲れがとれない
  • 貧血……立ちくらみやふらつきが見られる。血液検査で指摘される
  • 体重減少……ダイエットをしているわけでもないのに、半年で5kg、もしくは5%以上体重が減る
  • 著しい寝汗…寝間着を着替える必要があるような寝汗が続く
  • 皮膚の下のしこり…皮膚の下に弾性のあるできものができる

 

しこりは首や腋(わき)の下、足の付け根など、体表に近いリンパ節が腫れてできる。これらのしこりで、初めて異常に気づくこともあるという。

 

狭間氏は、他のがんとの大きな違いとして「特徴的な症状が少ないこと」を挙げる。例えば、胃がんの場合は食欲不振や上腹部の痛み、肺がんの場合は咳や血痰などの特徴的な症状があるが、悪性リンパ腫の場合は、症状のほとんどが発熱や倦怠感などのよくある症状。何となく体調がすぐれないと病院を受診し、検査を進めるうちに悪性リンパ腫とわかるケースも少なくないという。

 

悪性リンパ腫の治療法は

狭間氏によると、通常の悪性腫瘍は、手術・抗がん剤・放射線の「3大療法」を組み合わせて治療するという。基本的には腫瘍が小さいときや腫瘍ができている部位が限られているときには手術が有効で、もともと腫瘍ができている箇所から血液やリンパ液の流れを介してがん細胞が全身に広がっている可能性があるときには、抗がん剤や放射線が有効という。

 

しかし、悪性リンパ腫は、もともと全身を巡っているリンパ組織の悪性腫瘍であり、一部の臓器に限定される時期がないといい、「治療のために手術でどこかを切除するという選択肢は基本的にない」と狭間氏は述べる(ただし、病理組織の確認のために腫脹したリンパ節を切除・摘出する場合や、消化管の閉塞症状を改善するために一部を切除することはあるという)。また、全身に放射線を使い続けることもできないため、3大療法の中でも「手術」「放射腺」という大きな選択肢が使えないことも悪性リンパ腫の治療の特徴と狭間氏は説明する。

 

悪性リンパ腫に有効な治療と5年生存率

3つの武器のうち2つが使えない一方、悪性リンパ腫は胃がんや肺がんなど一般的ながんに比べ、抗がん剤が非常に良く効くことが知られていると、狭間氏は述べる。

 

リンパ組織以外で腫瘍が形成されている部位があれば、そこに放射線を照射して部分的に治療することもできるという。また、血液に関わる病気なので、「造血幹細胞移植」という通常のがんでは行われないような移植手術による治療法が有効な場合もあるという。

 

狭間氏は、「日本では悪性リンパ腫に対して専門家による最善の治療を受ける体制が整ってきています。がん治療の指標である5年生存率も、細胞の性質によって多少異なりますが、一般のがんと大差ないところまで来ています。適切な治療を受けるのを諦めてはいけません」と述べている。

 

悪性リンパ腫の治療目的は「完全寛解(かんぜんかんかい)」

一般的ながんの場合、治療の目標は腫瘍がある部分の完全切除で、早期発見・早期治療で腫瘍が小さいうちにしっかりと切除する「絶対的治癒切除」を目指すが、悪性リンパ腫の場合は切除という選択肢がなく、最初に発見された状態で、すでに体の一部だけに留まっている状態ではないため、通常のがんと同じ治療目標を持つことはできないと狭間氏は説明する。

 

よって、悪性リンパ腫の治療では、抗がん剤や放射線治療、造血幹細胞移植など様々な治療によって、体の中から悪性細胞をなくしてしまうことを最終目的とするという。

 

狭間氏によると、がんの色々な症状や血液検査数値の乱れ、CTなどの画像診断の異常が収まることを「寛解(かんかい)」と呼ぶが、悪性リンパ腫治療で目指すのは寛解状態に入ったあと、再発がない状態がずっと続く、「完全寛解」という状態だという(5年以上続けば「治癒、完治」という場合もある)。

 

狭間氏によると、この10年あまりの間に悪性リンパ腫の治療は大きく進歩しているという。また、悪性リンパ腫は比較的まれな疾患だが、早期発見・早期治療が重要なことは他のがんと同じであり、「気になる症状があれば、早めに近くの内科を受診してください」と述べている。

 

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