韓国のドラマや映画を見ていると、日本では普段使わない独特の呼称が出てきます。オッパ、オンニ、ヒョン、ヌナ、マンネ……。K-POPファンの皆さんも、推しが出演するテレビ番組などで聞いたことがあるのでは? 日本以上に年齢による上下関係が厳しい韓国では、ある程度親しくなると年少者は年長者を「○○さん」から、お兄さん、お姉さんと呼ぶようになります。
オッパ、オンニ、ヒョン、ヌナ! 親しくなるほど呼称は大事
女性の立場から年上の男性はオッパ(오빠)、年上の女性をオンニ(언니)
男性の立場から年上の男性はヒョン(형)、年上の女性はヌナ(누나)
と呼びます。こういった呼称で呼び合うのは、親しいか、頻繁に顔を合わせる間柄にあるということ。年齢による上下関係がはっきりしており、かつ厳しいのが韓国。だから言葉遣いもとっても大切。1歳でも年上なら基本的に丁寧語で話します。これは小さな子ども同士の関係でも同じ。親しくなった後ほど、いい関係を維持するために呼称や言葉遣いが大事なんですね。
では、いつ「○○さん」からお兄さん、お姉さんという呼称に変えるのか。ケースバイケースですが、たとえばK-POPグループを例に出すと、練習生同士、特に同じグループでデビューが決まっているなど、これから先、活動を共にする間柄だとわかっている相手ならば、最初の自己紹介後に年齢を確認し合い、すぐにお兄さん、お姉さんの呼称で呼び始めます。
相手によっては慎重に
また、子どもをもつ母親同士の場合、最初は「○○ちゃんのお母さん」という表現でつきあいを始めますが、こちらもママ友という関係に発展する頃合いで、年下の人が年上の人を「お姉さん」と呼び始めます。年齢による上下関係が大切なだけに、韓国では相手に年齢を聞くことは日本のようにタブーではありません。といっても、女性(女性同士でも)にいきなり不躾に年齢を聞くのはシチュエーションによっては失礼になります。そろそろお互いの関係を一歩前進させてもいい頃かな、という時期を見計らって、遠慮がちに尋ねるのが礼儀です。
なんとなく相手の醸し出す雰囲気や外見で年齢を推察して、自然に呼称に変えていくケースもよくありますが、これは相手の年齢に相当な確信をもっていないとちょっとリスクがある方法かも。私もこのパターンでショックだった経験が……。
相手の女性の方が年上だと思っていたので、そろそろ彼女のことを「○○さん」から、「オンニ」と呼び方を変えようかなと思っていた矢先、彼女が私のことを「オンニ」と呼び始めました。「オンニ」と呼ばれはじめ驚いた私はある日、思い切って互いの年齢を確認したところ……彼女の方が……年上でした。
相手の女性は私のことを自分より年上だと思って「オンニ」と呼び始めたようだったので、「私……自分が思っているより、老けて見えるのかしら」なんてショックだったことが。呼称にまつわる、ちょっとトホホ……な韓国ではあるあるの経験です。
年齢に関する呼称は使うシーンを選んで
美容院や服屋などで、女性客が女性店員に対し「お姉さん(언니)」と声をかけることはありますが、女性客が初対面の男性店員に「お兄さん(오빠)」と声をかけることはあまりありません。時々、明洞(ミョンドン)の露店などで外国人女性観光客がお店の店員さんに「お兄さん(오빠)」と呼びかけているのを見ますが、時と場合によってはむしろ媚を感じさせる不自然な印象になることもあるので、少し注意が必要です。お店の店員さんへの声掛けの呼称もいろいろありますが「すいません、ちょっと……」という意味の「チョギヨ(저기요)」や「ヨギヨ(여기요)」という声掛けが無難です。
末っ子はかわいがられる!
メンバーが多いK-POPグループを見ていると、マンネ(막내)という表現もよく出てきますが、これは末っ子を意味しグループの場合はメンバーの中で最年少者を指します。末っ子がかわいがられるのは日本も同じですが、韓国はそれ以上にマンネはかわいがられるのです。
一番年下というのは韓国では役得感があり、周りから愛情をもって接してもらえることがよくあります。何かとマンネの存在は強調され、たとえば団体スポーツなどでも、一番年下がゴールを決めるなど活躍すると、解説員は「マンネがやりました!」など「マンネ」という表現で称賛することも。
同時にマンネはお兄さん、お姉さんたちに気を遣わなくてはいけない存在でもあります。年上を差し置いて煙草やお酒を口にするのはご法度ですし、空いている席があれば譲るのがマナー。飲み会などでは幹事の役を任されることもしばしばです。でも、上手に気を遣えるマンネはさらに愛されます。年上メンバーたちにいじられながらも、かわいがられているマンネアイドルの姿を見ると、なんとなくその辺りの事情も想像できるのではないでしょうか?
韓国ならではの人間関係を、呼称から探ってみるのも興味深いですよ。韓国ドラマや映画を見ながら呼称に気をつけてよく観察してみることで、以前は気づかなかった登場人物たちの微妙な心理に気づくかもしれません!