東京ディズニーランドのアトラクションの1つ「ウエスタンリバー鉄道」。1983年4月15日の東京ディズニーランドオープン当初からある、人気アトラクションである。
蒸気機関車型のアトラクションだが、ウエスタンリバー鉄道のキャストは鉄道の運転免許をもっているのだろうか? 「All About」鉄道ガイドの野田隆が解説する。
(今回の質問)
ウエスタンリバー鉄道のキャストは鉄道の運転免許を持っているのか?
(回答)
本物のSLを運転するにはボイラーを扱う資格が必要である。
本物にこだわったディズニーランドのSL
東京ディズニーランド内にはウエスタンリバー鉄道というアトラクションがあり、SL(蒸気機関車)がけん引する列車が走っている。遊園地などには、SL列車が走っていることがよくあるが、その多くは、外見はSLであるものの、実態はディーゼル機関車であったり、バッテリーで駆動する動力車である。しかし、ウエスタンリバー鉄道のSLは小さいながらも本物の蒸気機関車だ。しかも、どこかで走っていた古い機関車を払い下げてもらったのではない。1982年に福島県にある協三工業という鉄道車両メーカーが、ディズニーランド用として新規に製造したものだ。新しい機関車ではあるが、19世紀のアメリカ西部開拓時代に走っていたノスタルジックな機関車をモデルにして現代によみがえらせた、本物の車両なのだ。
本物のSLを運転するには?
したがって、機関士(メンテナンスキャスト)は、本物の蒸気機関車を扱う仕事に必要なボイラー技士2級の免許が必要である。蒸気機関車は石炭を燃やして水を沸騰させ、そこで生じる蒸気の力で動く。ウエスタンリバー鉄道の場合は、石炭ではなく灯油(かつては重油)が使われているものの、専門的な知識や技能がなければ運転できない代物なのだ。駅に停車中には給水塔から機関車のテンダー(機関車本体の後ろにつながっている炭水車)に水を補給する作業も行う。見た目は格好いいけれど、かなりの重労働である。機関車も酷使しているので、1両でも故障したら大変だ。連日、朝から夜まで走るので、4両の機関車が在籍し、交代で走っている。
創業者ウォルト・ディズニーの夢
線路を大きな楕円状に敷き、駅を造る。そして駅周辺にさまざまな建物や施設を建ててリアルな街にしていく。ディズニーランドの原点は鉄道だったのだ。それも幼少の頃の思い出だった蒸気機関車の走る鉄道。それゆえ、汽車は本物でなければならないのだ。
東京ディズニーランドは鉄道が敷地の片隅に追いやられているが、本家アメリカのディズニーランドでは、鉄道が敷地の外周を1周している。ウォルト・ディズニーが趣味で製作していた鉄道模型のジオラマが発展拡大した「夢の世界」なのだ。
この記事の筆者:野田隆
名古屋市生まれ。生家の近くを走っていた中央西線のSL「D51」を見て育ったことから、鉄道ファン歴が始まる。早稲田大学大学院修了後、高校で語学を教える傍ら、ヨーロッパの鉄道旅行を楽しみ、『ヨーロッパ鉄道と音楽の旅』(近代文芸社)を出版。その後、守備範囲を国内にも広げ、2010年3月で教員を退職。旅行作家として活躍中。近著に『シニア鉄道旅の魅力』『にっぽんの鉄道150年』(共に平凡社新書)がある。
名古屋市生まれ。生家の近くを走っていた中央西線のSL「D51」を見て育ったことから、鉄道ファン歴が始まる。早稲田大学大学院修了後、高校で語学を教える傍ら、ヨーロッパの鉄道旅行を楽しみ、『ヨーロッパ鉄道と音楽の旅』(近代文芸社)を出版。その後、守備範囲を国内にも広げ、2010年3月で教員を退職。旅行作家として活躍中。近著に『シニア鉄道旅の魅力』『にっぽんの鉄道150年』(共に平凡社新書)がある。