「今は売る座席がない」ほど……関西空港に中東系エアラインが集結した結果、道頓堀に変化が!?

関西国際空港に、「エミレーツ航空」をはじめ中東を拠点とする航空会社が相次いで就航している。今、中東系航空会社が人気の理由を、就航ラッシュで起きている現地の影響とともに紹介する。

大阪府の関西国際空港に、中東を拠点とする航空会社が相次いで就航している。日本へのインバウンド急増に加え、ヨーロッパ方面へ向かう際の乗り継ぎ先としての立地的なメリット、サービスの良さなどもある。中東系航空会社が人気であるその理由、また就航ラッシュで起きている現地の影響なども合わせて紹介する。

エミレーツ航空に加えて他社も次々就航

エミレーツ航空は大阪-ドバイ線を「A380」で運航する
エミレーツ航空は大阪-ドバイ線を「A380」で運航する
関西国際空港に就航する中東拠点の航空会社は、「エミレーツ航空」「エティハド航空」「カタール航空」の3社に加え、トルコ・イスタンブールを拠点とする「ターキッシュ・エアラインズ」がある。エミレーツ航空を除く3社は、新型コロナウイルスの感染拡大が収束した後、新規就航または運航再開した。

【世界の航空会社ランキングで中東系は高評価】

エミレーツ航空は、コロナ禍もずっと運航を続けていた一方、他の3社は就航こそコロナ前に発表していたものの、コロナ禍の影響で延期に。その後、日本の入国緩和を受け、相次いで就航した形だ。

ロシア領空飛行禁止で脚光、円安も拍車

カタール・ドーハのハマド国際空港。乗継客が非常に多い
カタール・ドーハのハマド国際空港。乗継客が非常に多い
日本と中東を行き来する旅行者や出張者らの数は、実のところ、以前も今もそれほど多くない。それでも就航するのは、ヨーロッパ方面との「乗り継ぎ」需要が大きいことに他ならない。

日本から中東へ向かう飛行時間は約10時間。これがヨーロッパ直行便だと10時間をゆうに超える。また、東南アジア経由だと少し迂回(うかい)するルートとなり、やや時間がかかってしまう。飛行機に乗り続ける時間が10時間を超えると、エコノミークラスだと心身ともに誰しも厳しい。

しかも今、ロシアによるウクライナ侵攻の影響でロシア領空を飛行することができず、直行便だと少なくとも13~14時間ほどかかる。一方、中東での乗り継ぎだと以前と変わらず、そのため中東経由の「南回りルート」に人気が集まっている。

円安によるインバウンドの急増もまた、就航ラッシュに拍車をかけている。ヨーロッパ在住だと、今の日本は物価が安くて「お得感」が大きい。日欧間の直行便ももちろん人気だが、中東経由は運賃がさらに安い傾向にある。某中東系航空会社の担当者いわく、「今は売る座席がない」と言うほど、外国人旅行客で座席が連日ほぼ埋まっているという。

サービスは高評価、拠点空港も充実

エミレーツ航空のプレミアム・エコノミー。ワンランク上の座席とサービスで快適
エミレーツ航空のプレミアム・エコノミー。ワンランク上の座席とサービスで快適
中東を拠点とする航空会社の魅力は、立地やルートだけではない。航空会社によるレベルの高いサービス、乗り継ぎする空港の充実さなども人気を集めている理由に挙げられる。

エミレーツ航空は2024年6月から、2階建ての大型機「エアバスA380」を、成田国際空港に続き、関西国際空港とドバイ国際空港を結ぶ便に就航した。世界最高級と名高いファーストクラスをはじめ、ビジネスクラスとエコノミークラス、さらにその中間としてプレミアム・エコノミーも搭載する。ワンランク上の座席やサービスなどあらゆる客層のニーズに応えられる形でグレードアップした感がある。

カタール航空は、大阪・関西-ドーハ線を2024年3月に新規就航。拠点のハマド国際空港は「世界最高の空港」と評判が高く、空港内にレストラン・カフェやショップが数多あるほか、乗り継ぎが長時間の乗客向けに無料ホテル宿泊サービスがあり、ラウンジの数も非常に多い。さらにドーハ市内ツアーなども用意する。
カタール航空は2024年3月1日、大阪-ドーハ線を運航再開した
カタール航空は2024年3月1日、大阪-ドーハ線を運航再開した
ターキッシュ・エアラインズやエティハド航空もサービス面では評判が良く、乗り継ぎの空港も利便性が高い。さらに、いずれの拠点空港もヨーロッパ路線が多く、空港内で快適に過ごせるうえ、スムーズに乗り継ぎできるのがメリットだ。エコノミークラスでも歯ブラシなどのアメニティーキットを提供し、さらに新機材を次々導入して機内で快適に過ごせるのも、これらの航空会社の特長である。

就航ラッシュの影響? 大阪・関西の今

大阪・道頓堀はインバウンド客で連日にぎわっている
大阪・道頓堀はインバウンド客で連日にぎわっている
関西国際空港で就航ラッシュが起きている一方、大阪の繁華街は今、外国人旅行客であふれている。特に、関西国際空港から直行できる南海なんば駅などでは、ヨーロッパ系の旅行者を見かける機会が、この半年でずいぶん増えた印象だ。

以前の日本がコロナ禍から入国緩和した2022年秋以降、韓国や台湾からの旅行客が一気に押し寄せ、道頓堀にある戎橋(えびすばし)などは、軒並み東アジア系の旅行客が目についた。今ももちろんいるものの、すでに日本旅行のリピーターとなって地方へ分散する傾向も見られる。

大阪だけでなく京都や奈良なども、ヨーロッパからと思われる旅行客が、ホテルなどでもとても多く、ホテルの相場は高騰している。2023年10月のエティハド航空、12月のターキッシュ・エアラインズ、そして2024年3月のカタール航空の就航と、決して無縁ではないだろう。2025年開催の大阪万博に興味を持ち、先に訪れている人々もいそうだ。

日本からの利用も実はメリットが多い理由

カタール航空の乗継客向け、ドーハ市内ツアーの様子。ラクダの見学もあった
カタール航空の乗継客向け、ドーハ市内ツアーの様子。ラクダの見学もあった
今はインバウンド人気に円安もあり、日本からヨーロッパへ旅行するのはなかなか厳しいのが現実。しかし、運航便があるということは、海外との行き来に便利であることに他ならない。

中東乗り継ぎで、ヨーロッパだけでなく、アフリカや中央アジアなどの国々へ行くこともできる。中には日本と比べて物価がまだ安い国・地域もある。なにより、体力的にも楽。もし機会があれば、4社競合で運賃が割安になっているタイミングなどを狙い、利用の選択肢として考えてみてはいかがだろうか。
 
この記事の筆者:シカマ アキ
大阪市出身。関西学院大学社会学部卒業後、読売新聞の記者として約7年、さまざまな取材活動に携わる。その後、国内外で雑誌やWebなど向けに取材、執筆、撮影。主なジャンルは、旅行、飛行機・空港、お土産、グルメなど。ニコンカレッジ講師をはじめ、空港や旅行会社などでのセミナーで講演活動も行う。
 
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