沖縄県保健医療部は28日、河川の水などから感染するレプトスピラ症の患者確認報告数が26日の時点で計30例となり、統計のある2003年以降、最多の年間報告数となっていると発表した。
26日の時点で新たに判明した20例のうち11例の患者は、8月6~7日に国頭郡国頭村の奥間川へ川遊びに行き、8~12日後に発熱、筋肉痛及び結膜充血等を発症し、レプトスピラ症と診断されたという。
レプトスピラ症の原因菌は、ネズミやマングース等の野生動物の体内に潜んでおり、尿中にある同菌を排出することで土壌や河川を汚染することがあるという。沖縄県は、皮膚に傷がある場合は河川での遊泳を控え、河川でのレジャー後、2週間以内に症状が出たら、すぐに医療機関を受診するよう呼び掛けている。
レプトスピラ症とは一体どのような病気なのだろうか。この病気や、同様にヒトと動物が共通して感染する病気について、ドッグライターの大塚良重氏がAll Aboutで解説している。
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レプトスピラ症とは(症状・感染経路・治療法)
大塚氏によると、この病気に感染したネズミや家畜動物などの尿で汚染された土や水などから感染するという。
ヒトが感染すると、発熱(38℃以上)や頭痛など軽度のものから、重症になるケースもあると大塚氏は説明する。沖縄県によると、ほかにも筋肉痛・関節痛、結膜充血などが主な症状にあるとしている。国立感染症研究所によると重症の場合は黄疸、出血、腎障害を伴い、ワイル病といわれるという。沖縄県は治療しないと死に至ることもあるとして注意を呼び掛けている。
沖縄県の発表によると、病原性レプトスピラ(学名:Leptospira interrogans)が原因で、潜伏期間3~14日。感染経路は、病原性レプトスピラを保有している保菌動物の尿で汚染された土壌や、水と接触する際に、皮膚の傷、鼻や目の粘膜を通して感染するという。なおヒトからヒトへの感染はない。
治療はペニシリンやストレプトマイシンなどの抗生物質が有効とされている。
大塚氏によると、犬にはワクチンがあるため、体の状況が許すのであれば接種しておいたほうがいいと述べている。
ヒトと動物に共通して感染する病気がある
大塚氏によると、レプトスピラ症のように、ヒトと動物に共通して感染する病気というものがあり、その数は300近くもあるという。厚生労働省ではヒトの健康を基盤に考えるという観点から、動物由来感染症という言葉を使っていると大塚氏は述べる。ズーノーシスと言う場合もある。
感染に関係する動物としては、牛や豚などの家畜動物、鳥類、野生動物、げっ歯類などの他、犬やネコなど身近な動物も含まれるという。
ズーノーシスの感染経路
感染経路については、いくつかに分けることができると大塚氏は説明する。
■直接的な感染
- 咬まれたことによる傷、舐められることなど(例:狂犬病、パスツレラ症)
- 引っかき傷(例:ネコひっかき病)
- 感染部位などに接触(例:疥癬、皮膚糸状菌症)
- 皮膚からの進入(例:野兎病)
- 流産した胎児などに接触(例:ブルセラ症)
- 咳やクシャミ、鼻汁などから感染(例:結核、オウム病)
- 便や尿中の病原体から感染(例:回虫症、ブルセラ症、レプトスピラ症)
など
■間接的な感染
- ノミやダニ、蚊などが介在して感染(例:日本脳炎、Q熱)
- 土壌や水などの汚染(例:回虫症、トキソプラズマ症)
など
日本国内で気をつけたいズーノーシス
大塚氏は、国内において存在するとされるズーノーシスのうち、主に犬と関連する注意したいズーノーシスとして以下のものを挙げている。
■犬ブルセラ症
感染犬の排泄物や、流産した胎児、胎盤などに接触することで感染。感染犬は無症状であることが多いものの、妊娠した牝犬であれば流産や死産を起こしたりするという。
ヒトに感染した場合、症状は熱性疾患と類似しているが、全身的な疼痛感、倦怠感、衰弱、うつ状態と、発熱が見られる。一部では泌尿生殖器に症状が現れるという。
■パスツレラ症
咬まれたことによる傷などから感染したり、呼吸器系を通して感染したりする。この菌を保有している犬は無症状だが、ヒトが感染すると、傷口が赤くなったり、腫れたりする他、呼吸器系に影響が出た場合には、気管支炎や肺炎になることもあるという。
■犬回虫症
感染犬の便の中に排出された虫卵を、手指で触れたり、それに汚染されたものを口にしたりしてヒトに感染するという。幼虫が体内を移行することで(幼虫移行症)、いろいろな臓器に進入、場合によっては失明など重大な症状を引き起こすことがあるという。ヒトでは、特に低年齢の子供が感染しやすいので、手洗いなどで予防してほしいと大塚氏が述べている。
■皮膚糸状菌症
カビの一種に感染することで、円形に脱毛したり、かさぶた状になったり、皮膚と被毛に変化が見られるという。局所的なものから、全身に広がるケースもあり。ヒトに感染すると、皮膚に円形の赤みができたりするという。
ズーノーシスの予防法
大塚氏は、ヒトであれ、動物であれ、病気というものは限りなく存在するものであり、情報を得て、予防できるところは予防し、ペットなどの日頃の手入れや生活環境などを気配りしてあげることが大事だと述べている。
大塚氏はズーノーシスから愛犬を守るために気を付けるべきポイントとして以下のものを挙げている。
- 愛犬の健康状態をチェックする(定期的に健康診断を受けるなど)
- 各種予防ワクチンは、健康状態や状況が許す限り接種する(高齢の場合や病気がある場合は、無理に接種せず、動物病院で相談する)
- 異変を見つけたら、なるべく早めに病院へ。病気の早期発見・早期治療につとめる
- 手入れはこまめに(体の変化にも早めに気づける)
- 生活環境などを含め、なるべく清潔を心がける
- 食事や運動にも気配りし、健全な体を作る(病気への抵抗力を高めることにもなる)
- ノミやダニが関連して病気になることもあるため、寄せつけない環境作りをする(野山、草むらで遊んだ後にはチェックをする)
- ストレスがかからないように、休める時間・環境を作る気配りを
ヒトの予防としては以下の注意をしたい。
- 咬まれるなどの傷を受けた場合には、傷口をよく洗って、念のために消毒する
- 子供やお年寄り、何らかの病気がある人は、免疫力もやや弱い傾向にあるため、動物と触れ合った後には手洗いを習慣づけて、感染リスクを下げる
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