毎日新聞によると、「慢性活動性EBウイルス感染症(CAEBV)」で2015年に亡くなった人気声優、松来未祐さん(享年38)をしのぶイベント「39(サンキュー)! 未祐ちゃん」が11日、東京都の科学技術館で開かれた。
慢性活動性EBウイルス感染症は、日本人成人の9割以上が感染しているとされるウイルスが原因でごくまれに発症する難病。松来さんは生前、知名度が低い同病の啓発を望んでいたといい、イベントに集まった約1000人のファンが生前の松来さんに思いをはせたと毎日新聞は報じている。
EBウイルスとはどのようなウイルスで、慢性活動性EBウイルス感染症とはどのような病気なのだろうか。医学博士の清益功浩氏が、EBウイルス感染症の症状について、All Aboutで以下のように解説している。
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EBウイルスとは
清益氏によると、「EBウイルス」は発見者の名前に因んで付けられたEpstein-Barrを略して、EBウイルスと言われていると説明する。水疱瘡やヘルペス性口内炎の原因のウイルスと似たヘルペス属ウイルスで、免疫細胞の1つであるB細胞に感染するという。EBウイルスはヒトに感染すると、伝染性単核症という病気を起こす。伝染性単核症は、ヒトからヒトへ唾液を介して感染するので、俗に「キス病」とも呼ばれていると清益氏は述べる。
どのような人が感染する? 潜伏期間は?
EBウイルスによる伝染性単核症は、主に思春期、成人に多く見られる症状。乳幼児期にEBウイルスに感染しても、症状があまり出ない不顕性感染になるが、幼児でたまに伝染性単核症として発症することもあるという。
感染から発症までの潜伏期間は4~6週間。
伝染性単核症の症状
伝染性単核症の主な症状は、
- 1週間近く続く38℃以上の発熱
- リンパ節腫脹
- 肝臓と脾臓が大きく腫れてしまう肝脾腫(かんぴしゅ)
- 扁桃に白い膿のようなついた扁桃炎
- 赤い発疹
などが見られるという。
発疹については、扁桃炎と考えてペニシリン系抗菌薬を使用してしまうと、赤い発疹を起こすという。
合併症としては、
- 髄膜炎や脳炎
- 片方の手足が麻痺する急性片麻痺
- 四肢の運動神経の麻痺を起こすGuillain‐Barre症候群(ギラン・バレー症候群)
- 目が見えなくなる視神経炎
- 顔面神経麻痺を含めた脳神経麻痺や末梢神経炎
- 赤血球が壊れてしまう溶血性貧血
- 出血を止めるための血小板が少なくなる血小板減少
- 白血球、赤血球、血小板ができなくなる再生不良性貧血
- 血液のがんといわれる悪性リンパ腫
- 心筋炎
- 心膜炎
- 肺炎
- 気道が狭くなる気道閉塞
などがあるという。
EBウイルス感染の検査
上記の症状が見られたら、血液検査を行う。EBウイルスに感染すると血液中の白血球の数が増え、特に形が変わった異型リンパ球が見られるという。
EBウイルスに対する様々な種類の抗体を測定すると、EBウイルス感染の確定診断やウイルスの感染状態を見るのに役立つという。
慢性活動性EBウイルス感染症とは
EBNAという抗体が、長い間陽性にならない場合は、慢性活動性EBウイルス感染症や慢性疲労症候群、蚊アレルギーの可能性があるという。
慢性活動性EBウイルス感染症は、発熱、疲労感が続き、免疫が低下したり、悪性リンパ腫を発症したりするという。
慢性疲労症候群は名前の通り、疲労感から何もできない状態が長く続くという。
EBウイルス感染の治療
EBウイルスには特効薬はなく、自然に治るという。血液検査で、EBNA抗体が見られると治癒の目安となるという。
EBウイルス感染が疑われる場合は、ペニシリン系抗菌薬の使用で発疹が出現するので、使用を避けるべきだと清益氏は指摘する。
重篤な合併症のある例や、遺伝的に免疫不全のある人に感染すると、抗ウイルス薬を使用することになるが、EBウイルスに対する抗ウイルス薬は無いので、EBウイルスに近いとされるヘルペス、水疱瘡、サイトメガロウイルスに対する抗ウイルス薬が効果的だと報告されているという。
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