近ごろ「エモい」というキーワードでレトロ郵便局が話題になっていますが、郵便や切手の世界はノスタルジックな魅力にあふれています。切手収集家・郵便史研究家として活動する板橋祐己さんに、マニアな視点でその魅力を掘り下げてもらいます。シリーズ第3回は、郵便ポストのちょっと面白いお話(第2回はこちら)。
 

#3. 昭和レトロブームで「丸形ポスト」が見直されている


昭和レトロブームと相まって、戦後復興期の中で生まれた丸形ポストが見直されています。そこで今回は丸形ポストが生まれるまでの歴史的背景、郵便ポストのちょっと面白い話などを紹介したいと思います。どこにでもある郵便ポストですが、ビジネス文書、ラブレター、わび状、年賀状まで、さまざまな人の思いが交差する通過点でもあります。これまで郵便を利用した経験、ご自身の人生の歩みとも重ねながら、お読みいただきたいと思います。
 

Q.「郵便ポスト」は正式名称ではない?

郵便ポストには法律で定められた名称があり、正式には「郵便差出箱」といいます。もっともあまり浸透していないため、一般的には「郵便ポスト」でよいでしょう。会社や家庭などにある郵便受けのことを「ポスト」と呼ぶ場合もありますが、ここでは郵便物を差し出すためのものだけを扱いたいと思います。
平成8年(1996年)に登場した郵便差出箱13号。車いすの人や子どもでも投函しやすい高さになった
 

Q. 明治時代のポストは「旗」が目印?

郵便創業は明治4年3月(1871年4月)のこと。創業期の郵便ポストを紹介した明治の錦絵がわずかにあります。こちらは東京・京橋を描いた錦絵『東京名所四十八景・京はし』(昇斎一景/筆)で、よく見ると「郵便フラホ」と呼ばれる旗が描かれています。その下にある屋根付きの目安箱のようなものが「書状集め函」(当時の郵便ポスト)です。郵便ポストが設置されている場所を箱場(函場)といい、その場所を遠くからでも目立つように旗を立てていました。
(左)「東京名所四十八景・京はし」(昇斎一景)、(右)は一部拡大したもの。中央部分に「郵便」と書かれた旗が見える 資料協力:藤田金左衛門氏(福井県)
 

Q. 100歳超え、現役最古の郵便ポストはどこに?

現役郵便ポストの日本最古は、豊川稲荷(愛知県豊川市)にある明治45年(1912年)のタイプの郵便ポストです。戦前に使用されていた金属製の郵便ポストはほとんどが回収されてしまいました。しかし豊川稲荷の場合は「私設ポスト」だったため、例外的に継続使用されました。明治45年のタイプは雨よけの庇(ひさし)と内部に盗難防止弁をつけており、現在の丸形ポストの原型となった非常に貴重なポストです。
豊川稲荷境内に設置されている、明治45年型の郵便ポスト(現役最古)
 

Q. 現在の「丸形ポスト」はいつからある?

丸形ポストの中には、戦前の郵便ポストのほか、戦後の試作タイプなどもわずかに存在しますが、大半が昭和24年(1949年)に登場した通常の丸形ポストで、「郵便差出箱1号(丸型)」という正式名称があります。戦後復興期から高度経済成長期にかけて量産されましたが、鋳物の供給が難しくなったため、昭和45年(1970年)に「1号(角型)」に切り替わりました。現在使用されている丸形ポストは当時のものをペンキの塗り直しをしながら大切に使用しています。
「根石」と呼ばれる、台座に据え付けられた丸形ポスト
 

Q. 日本に1本だけ?「幻の郵便ポスト」

最後に極めて珍しい郵便ポストを紹介しましょう。郵政民営化前の郵便法令集を引くと、通常の郵便差出箱は1~14号までとなっていますが、極めて少ないのは6号です。郵便差出箱6号は昭和34年に登場し、一般差出用の口に加えて、配達郵便物の保管箱が一体となっています。現在は宮城県塩釜市で使用されている1本だけとみられます。
塩釜市に所在する郵便差出箱6号(「やまだ屋」前:宮城県塩釜市本町10-29)

日本各地に残る、貴重な郵便ポストを紹介しました。あなたはどのポストが好きですか?


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