熱中症は「気象災害」といっても過言ではない?
マスクで過ごす二度目の夏がやってきました。東京都心は先週、6月8日~10日にかけて三日連続の真夏日となり、力強い日差しが身体にこたえた人も多かったのではないでしょうか。西日本や東海も梅雨の晴れ間となり、6月7日~13日にかけて熱中症で救急搬送された人の数は全国で1830人にのぼり、前の週に比べて1000人以上増加しました。
熱中症が原因で命を落とす人の数は大雨や台風で犠牲になる人の数を大きく上回る年があり、近年では平成30年に1500人を超えました(※)。この年は西日本や東日本を中心に猛暑となり、埼玉県・熊谷市では気温41.1℃を観測して、国内の観測史上最高の記録を更新しました。もはや熱中症は「気象災害」のひとつといえます。
「災害級の暑さ」ということばが流行語に選ばれ、多くの人の暑さに対する心構えも変えました。気象キャスターである私も「災害級の暑さ」や「危険な暑さ」という表現を用い、放送で熱中症への警戒を呼び掛けたことが強く記憶に残っています。
昨年(2020年)も西日本や東日本が梅雨明けした8月中旬、静岡県・浜松市で最高気温41.1℃を観測しました。1日の最高気温が30℃以上の日は「真夏日」、35℃以上の日は「猛暑日」とされていますが、40℃以上の暑さを表す表現はまだありません。このまま毎年のように「40度超えの暑さ」を観測すると、暑さを表す新語が求められるようになるかもしれません。
「梅雨の晴れ間」に“久しぶりの外出”は要注意
特に熱中症に注意したい時期は「梅雨の晴れ間」です。くもりや雨の日が続く中、突然強い日差しが照りつけて気温が急激に上がるときは、まだ身体が暑さに慣れておらず熱中症になりやすくなります。関東など東日本や北日本の梅雨時は、雨と冷たい空気の影響で気温が下がる「梅雨寒(つゆざむ)」と呼ばれる日が続くことがあるため、より一層気温の変化が激しくなりやすいのです。さらに、自宅で過ごすことが多い中、最近はワクチン接種の動きが進み、晴れ間を利用して接種のために久しぶりに外へ出る人もいるのではないでしょうか。長引くコロナ禍の影響で身体が暑さに慣れていく「暑熱順化(しょねつじゅんか)」が進められていないと、熱中症のリスクが高まると考えられます。対策としては、お風呂に入ったり、軽い運動で汗をかいたりすることが効果的です。
新たな情報「熱中症警戒アラート」の確認を
今年から新たに暑さに対する注意喚起の情報が全国で運用されています。去年の夏に関東甲信地方で試行運用された「熱中症警戒アラート」です。以前は最高気温がおおむね35℃以上の日に出される「高温注意情報」で暑さへの注意が呼び掛けられていました。大きな違いは発表の基準として、熱中症警戒アラートでは気温だけでなく「湿度」や「輻射熱(日射しを浴びたときに受ける熱など)」を取り入れた「暑さ指数」が使用されている点です。
熱中症警戒アラートは気象庁や環境省のホームページで確認することができます。
熱中症の危険は誰にもある!? 健康な若者も対策を
お年寄りや小さな子どもは体温調節が苦手で熱中症になりやすいといわれています。しかし、消防庁の発表では、熱中症になるのは子どもやお年寄りの割合が高い一方で、若い人の数も一定数いることが見逃せません。マスク着用時は“いつも以上”に注意! 目安は「コップ約6杯分」
環境省と厚生労働省では、屋外で人と2メートル以上離れて十分な距離を取れている時はマスクを外し、のどが渇いていなくてもこまめに水分を摂るよう呼び掛けています。ポイントは「のどが渇いたなあ」と感じる前に水分補給をすることです。マスクをしていると喉の渇きに気づきづらく、気づかないうちに脱水症状を引き起こすおそれがあるといわれています。気象庁が発表した3カ月予報によると、6~8月にかけての夏の期間は暖かい空気に覆われやすい時期があり、西日本から北日本で平均気温が「平年並みか高い」見込みです。マスクで過ごす二度目の夏、十分な対策を取り安全に過ごしましょう。
※熱中症の状況と対策について(2021年1月、環境省)