日韓の往来が自由にできなくなって、1年以上が過ぎた。韓国旅行リピーターたちは、かつての旅の思い出をSNSで共有しつつ、いつかまた渡韓できる日を心待ちにしている。コロナ収束後にはどんな旅をしようか、まずどこを訪れようか。
おすすめしたいのは、テーマがある韓国の地方旅だ。テーマがあると旅はもっと楽しくなる。たとえば、文化財を巡る旅、偉人の軌跡を辿る旅、特産品や郷土料理を満喫する旅、なんてのもいい。
選んだ場所は大邱広域市(テグこういきし)。都会でありながら人も観光地も密すぎない、ほどよい距離感が保たれた街。都市と自然がバランスよく共存する街。訪れた人はどこか懐かしい居心地のよさを感じるであろう、初めての地方旅にはもってこいの都市だ。
今回選んだテーマはずばり「美活」。といっても、対象は何も女性に限らない。心身ともに健康でリラックスした状態をめざす「ウェルネス(Wellness)」がキーワードだからだ。
大邱広域市の寿城区(スソンく)観光課が推薦する数ある美活スポットの中から、今注目したい11カ所を1泊2日かけて巡ってみた。読者の皆さんにも、記事を通してしばし疑似トリップを楽しんでいただきたい。
薬食同源、身体にいいものを食す
今回の旅では、ホテルでの朝食を除いた3食全て薬膳を満喫した。まず旅の幕開けとして訪れたのは、大邱の高級レストラン街ドゥランキルに位置する龍地峯(ヨンジボン)。
韓国の料理対決番組で優勝、薬膳の専門課程を修了した料理研究家の韓定食レストランだ。
両斑という貴族の食事を現代風に再解釈した料理の数々は実に鮮やか。食材が本来有する色と味わいをそのまま生かし、丁寧に発酵させた天然の調味料で味つけがされる。
食事をしながら胃が癒さていくような感覚は、翌日訪れたチョンアラムでも感じた。ひじきとあわびの栄養ごはんや、山菜のナムルが味わい深い。インスタントに慣れてしまった舌が、健康的な味覚を取り戻していくようだ。
美活だからといって、サムギョプサルは外せない。そこで訪れたのは、薬膳の副菜が脇をかためる、ヘルシーに肉を食べられる店ヨルムバッテトンだ。
熟成させた分厚いサムギョプサルのジューシーさに舌鼓を打つ。薬膳サラダと一緒に頬張ると、なおおいしい。サムギョプサルと野菜の相性がいいということを再確認した。
韓方の世界をちょっぴり覗く
大邱広域市は、朝鮮時代から続く韓方薬材流通の一大拠点だった。現在も韓方薬局が軒を連ねる薬令市(ヤンニョンシ)があり、韓国でも有数の韓方の街として知られている。
大邱の韓方医療の中心でもある大邱韓方病院(テグハンバンビョウォン)を見学したが、薬材が入った薬棚が並ぶ様子は圧巻だ。薬剤師がいくつか取り出して見せてれくれたが、なるほど、陳皮や甘草など、薬材を実際に目で見て説明を聞くとおもしろい。
こちらの病院では観光客でも韓方美容針やカッピング、歪んだ骨や筋肉を矯正するチュナ療法などを体験できる。予約をすると日本語の通訳士がサポートしてくれるから、言葉の心配は不要だ。
韓方医学の権威が院長を務める太乙養生韓医院(テウルヤンセンハニウォン)にも立ち寄った。オリジナル韓方茶ブランドも展開している韓方病院だけあり、韓方ティーセラピーを体験できる。
チャート式の診断に答えるだけで、自分の体質に合った韓方茶がわかるので、誰でも楽しくトライできる。この診断によると、私の体質には桑の葉のお茶が合うようだ。帰りがけにちゃっかりお土産として購入したのは言うまでもない。
スキンケアと花茶でヒーリング
韓国で美活をする人がよく利用するのが皮膚科だ。黄金皮膚科(ファングムピブクァ)では、外国人でもさまざまな美容プログラムを体験できる。短い旅の合間だからこそ、ヒーリングの意味も込めて手軽に体験できるスキンケア、LDM再生管理を受けてみた。
ひんやりとしたクリームが肌に浸透していくのが心地よい。肌のトーンアップ、保湿、毛穴ケア、美白のための約30分。疲れた肌と身体がリフレッシュした。
次は心と目の保養をすべく、花茶教育院コッチャランへ。透明のグラスに注がれる花茶はうっとりするほど鮮やかだ。梅、木蓮、マリーゴールドなどの花茶を堪能した。美しいものを愛で、身体に取り入れる、優雅で贅沢なひと時であった。
博物館で歴史と伝統に触れる
初めて大邱を訪れた人におすすめしたい博物館が、国立大邱博物館だ。主に大邱・慶北地域で発掘された遺物が展示された常設展示の他、歴史文化財について深く掘り下げた特別展示がある。
この博物館のもう1つの見どころは、韓服デザイナー故イ・ヨンヒの作品展示スペースだ。韓国の伝統衣装「韓服(ハンボッ)」を現代風にアレンジし、韓国人として初のパリ、プレタポルテデビュー。韓服(Hanbok)という用語を世界に広めた人物である。
今でこそモダンなデザインの韓服は珍しいものではなくなったが、その先駆けともなった彼女の作品の数々は、今見ても新鮮である。美しい生地とその色彩にも魅せられる。
博物館繍(ス)にも是非足を運んでほしい。ごく小さな規模の博物館だが、朝鮮時代のさまざまな刺繍作品が展示されている。
特に印象深いのは、長方形の伝統的な枕だ。結婚を控えた娘たちが幸福を祈願してつくったもので、断面には、無病息災、多男出産、富などを象徴する花や文字など、細かな刺繍が施されている。
よく見ると花の横に蝶が飛び交うデザインが多い。館長の説明によると、蝶は自由を意味するとのこと。結婚生活においても自由を願った古の女性たちの想いに切なくなる。果たして現代の既婚女性はどれほどの自由を手にしただろうか……。
ドラマロケ地で大邱を一望する
今回の旅のテーマは美活だが、韓ドラファンなら撮影地を巡る旅もよさそうだ。大邱で撮影された作品は多い。
かつての鉄道橋を観光スポットにした峨洋汽車(アヤンキチャッ)キルでは「Oh My Venus」が、琵瑟山(ピスルサン)では「オクニョ~運命の女」、オッゴル村やキム・グァンソク通り、イーワールド等では「ジキルとハイドに恋した私」、啓明大学・大明キャンパスでは、「ミスター・サンシャイン」や「ラブレイン」他、とにかく多くの作品が撮影されている。
今回訪れたアプ山展望台もそんな韓ドラ撮影地の1カ所。今をときめく俳優パク・ソジュンが主演を努める「キム秘書はいったい、なぜ?」14話に登場している。ケーブルカーで頂上まで登ると、眼下には大邱のパノラマが広がっている。清々しい空気に身体を包まれ、気分がいい。一度は訪れたい絶景スポットだ。
宿泊したホテルインターブルゴも「九尾狐外伝」や「怪傑春香」等のドラマが撮影されている。大邱国際空港からは車で約10分という便利なアクセス。シンプルなインテリアのゲストルームが居心地いい。ホテルも5つ星だが、ビュッフェもまた星5つに相当するおいしさだ。いつも予約で埋まっているほど高評価な人気料理の数々を、逃さず味わってほしい。
知っておくとお得なサービス
今回の美活の旅はこれらの場所を訪れたが、訪れるべきスポットはまだまだ数多くある。大邱市が発行するパンフレットなどを参考に、自分のアンテナがピピっと反応する場所を選び、自分だけのテーマあるコースをつくってみてはどうだろう?
さて、寿城区(スソンく)をメインに巡った今回の美活旅には、日本語の通訳士が同行してくれた。そこで、最後にこのサービスを簡単に紹介しておこう。
寿城区の医療観光サービスを通して寿城区指定の皮膚科や韓方病院を利用すると、治療・施術時間以外に3時間まで通訳士が同行してくれる。時間内なら、空港までの出迎えや観光地への同行も可能だ。移動のための車両提供もあり、治療・施術費以外の支払いは不要。ただし、3時間超過で通訳士の同行を必要とする場合は、別途通訳料が発生する。
利用できるサービスは上手に旅に取り入れるのがお得だ。アフターコロナの旅は、こういった便利なサービスを利用し、まずはテーマのある大邱旅から始めてはどうだろう?
<問い合わせ>
電話:+82-53-663-5200
Eメール:medicalsuseong@korea.kr(日本語可)
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