玄関がない? キッチンが個室? 中国の住宅事情

「所変われば品変わる」というように、中国の住宅には、日本人がえっ!と驚くいくつかの特徴があります。ここではその代表的なものを、なぜそうなったかという文化的背景を併せて紹介します。

中国の家には玄関がないって本当?

正面の白いドアがエントランスのドア。リビングのフローリングがドアまで続く

本当です。中国の家には、日本の家のような「玄関」という段差はなく、ドアを開けるとそのままリビングという家が少なくありません。

これは、家で靴を脱ぐ習慣がなかったことに所以します。90年代初期までは、都会のマンションでも、床はコンクリート打ちっぱなしの家がほとんどで、ベッドに入る以外、自宅でも靴のまま生活していました。

友人宅に招かれてドアを開けたとき、どこで靴を脱ぐか悩む日本人は少なくない

近年、フローリングや大理石など床材を施すことが一般的になり、中国でも自宅では靴を脱ぎ、スリッパなどで過ごす人が増えてきました。それでも、やはり玄関スペースはないため、日本人は「靴を脱ぐのはドアの外か?中か?」と悩むこともしばしば。

一般的に靴を脱ぐのは「ドアの中」。もちろん、各家庭で違う場合もあるので、中国人のお宅に招かれたときは、靴を脱ぐのかどうか、脱ぐならどこで脱ぐのかを家人に確認するのがベターです。
 

中国の家の窓には鉄格子!?

マンションの窓にずらりと設置される鉄格子に驚く日本人は多い

中国の家の窓の多くに鉄格子が設置されています。特に5階ぐらいまでの低層階にはほとんどついています。これは空き巣や泥棒を防ぐためです。中国は比較的治安が安定しているといえども貧富の差は大きく、盗難被害は少なくありません。

1階2階3階……とどんどん上にいき、十数階でも鉄格子をつける家も

狙われやすい1階や2階が鉄格子を設置すると、泥棒はその鉄格子をつたって上に登っていけるため、かなり上の階まで鉄格子が必要となるわけです。
 

日本で主流のDKやLDK、中国ではマイナー

左からエントランスドア、トイレ&バスルームのドア、キッチンのドア

ダイニングキッチンやリビングダイニングキッチン――いわゆる調理スペースと食べるところが一緒になっている間取りを、中国ではあまり見かけません。これはずばり、中華料理が油っぽいからです。

キッチンスペース。ガスの火力も換気扇も日本よりずっとハイパワー

中国で家のインテリアがブームになりだした頃、欧米を真似てリビングダイニングキッチンに仕上げる物件も現れたのですが、大抵の場合、住んで数カ月でリビングの壁や家具まで油まみれになり、後悔することに……。

ほとんどの家は写真のように、ドアのある独立型キッチンで、キッチン内は掃除しやすいタイル加工が施され、窓が設置されています。
 

中国のお風呂はトイレと一体型でシャワーメイン

標準的な中国のバスルーム。洗面所にトイレ、シャワーのみでバスタブはなし

中国の住宅は1つの空間にトイレと洗面所とお風呂が一緒に存在しています。これは水回りを1か所にまとめるという、いわゆる欧米スタイルなのですが、欧米のようにバスタブがなく、シャワーだけという住宅が少なくありません。

リラックス効果を求めて都市部を中心にバスタブを置く家も

それは、シャワーのほうが節水になり、病原菌などの感染の可能性が少ないからです。また、中国の南部は高温多湿で、浴槽に入るよりシャワーでさっぱりしたいという気候的な理由もあります。
 

中国の住宅はビッグサイズ

中国のミドルクラスの住宅(150平米弱)。天井の高さは、中国では280センチが一般的

中国では長く続いた一人っ子政策の影響で、3人世帯がとても多いのですが、その家族が暮らす住宅として平均的なものは、3室1庁(3部屋+リビング)で100平米前後のもの。3室1庁で150平米前後というのも一般的によくあります。日本人にとってはかなり広めですが、中国では特段大きな物件ではなく、大型物件となると200平米以上という感覚です。

これはやはり中国は日本より国土が巨大で、人口密度が低いからです。東京と北京を比べてみると、北京市の総面積は東京都の約7.5倍、人口は東京都の約1.5倍。そのため、ゆとりある設計の住宅が建てられるわけです。

多くの中国人は、3LDKで70平米前後――と聞くと、えっ!と驚くのですが、実際、日本を訪れて物件を見学すると、窮屈さを感じない、その機能的な作りに感嘆する人は少なくありません。日本の空間利用の巧みさは、まさに世界に誇れるレベルなのです。
 

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