かつて美人だった彼女はどう変わったか
一般論だが、かつて美人でモテた友人が大人になってさらに幸せになっていると、「チッ」と思う気持ちが女性の中には潜んでいることが多い。もちろん妬みなのだが、その昔、「あんたは彼女の引き立て役だよね」と言われたサトコさん(42歳)が、かつての美人同級生に再会したときのことを話してくれた。
今も美人ではあるけれど
昨年、家族で実家に帰省したとき、サトコさんは中学まで仲のよかったマキさんの噂を聞いた。高校を出てから消息がわからなくなっていた彼女が、子どもを連れてひとりで戻ってきているのだという。母親と一緒に小さなアパートで暮らしているらしい。
「彼女の家はおとうさんが不動産で大成功して、市内屈指の高級住宅地に住んでいたんですよ。だけど高校卒業直前におとうさんが仕事を拡大しすぎて倒産、さらに離婚してしまった。彼女はその後、東京に出て水商売をしているとかモデルをしているとか、いろいろ噂はあったんですが、結局、わからずじまいでした」
中学時代、サトコさんはマキさんと仲がよかったのだが、あるとき同級生に「マキって、サトコといると美人度が倍になるよね」と言われてショックを受けた。隣にいるマキさんをちらりと見ると、満足そうに微笑んでいた。そこからサトコさんは彼女と距離を置くようになっていったという。
「噂を聞いたとき、マキに会いたいような会いたくないような、複雑な気持ちでした。女王様気質の彼女を私は嫌いではなかったけど、やはり引き立て役として私をそばに置いておきたかったのかなというのがずっと引っかかっていたので」
あの美人で気位の高いマキさんが、どういう人生を経て母親と子どもと3人で暮らすようになったのか。今はどんな女性になっているのか。興味は尽きなかった。
会ってみたら……
今年の正月、またも帰省したサトコさんは、街中でばったりマキさんに会った。
「あっ!と言ってお互いに立ち止まっちゃいました。彼女は小学校に上がったばかりという娘を連れていて。娘は彼女に似て美人でしたね。ちょっと立ち話しただけだけど、『結婚したら夫に暴力をふるわれてひどい目にあったの』と情けなさそうな顔をしていました。かつての彼女だったら、そんな自分の弱みをさらけ出すようなことはなかったのに、その一言で私はすぐ彼女に連絡先を聞きました。友だち関係を復活させたかった」
その後、ときどきメッセージのやりとりなどを続けている。東京に出てきたマキさんは、水商売を転々としながらひとりでがんばっていたそうだ。母への仕送りも欠かさなかった。そして30歳のとき、雇われではあるがお店のママとなった。そこにつけ込んできたのが暴力夫となった男性。
「結婚してすぐ夫は会社を辞め、彼女にお金をせびるようになったんですって。ずっと苦労の連続だったみたい。妊娠をきっかけに彼女は離婚を決意したそうです。そのとき離婚して本当によかったって言っていました。『昔の私、いやな女だったでしょ』と彼女が言ってきたことがあって、いろいろあったけどいい女になったなあと思いました。40歳にもなったら美人も不美人もないですよね。やっぱり人間性で勝負していかないと」
今、マキさんは地元でスナックを経営している。美人で人柄もいいママのもとへ、多くの客が愚痴をこぼしたり悩みを相談しに来たりするらしい。