結婚に向いてない……どうすればいい?
結婚して10年以上たっているにもかかわらず、「今になって、結婚に向いていないと実感しているんです」と言う女性たちは少なくない。かつて、そんな話はほとんど聞いたことがなかったのだが、最近、ときどき耳にするようになっている。女性たちは結婚で何を失っているのだろう。
理想的な家庭を作りたかったのに
両親が離婚しているからこそ、理想的な家庭を作りたくてがんばってきたのに、実際は自分自身が結婚に向いていなかったのではないかと、日々もやもやしていると言うのはナホコさん(40歳)だ。30歳のときに2歳年上の男性と結婚、現在8歳になる娘がいる。
「出産と同時に退職、娘が小学校に上がってからパートで働いています。夫が家庭でくつろげるように、娘が楽しい思いをできるようにと、いつも家族のためにがんばってきました」
ただ、ここ数年、常に何かもやもやしたものを抱えるようになった。子どもはかわいいし、仕事で忙しい夫には感謝していると言いながら、「自分の人生を生きていない」という気持ちがどんどん強くなっているようだ。
「結婚していることが重荷になっているんですよね。常に母として妻としてどうあるべきかと考えているのですが、それが本当に自分のしたいことではないような気がしてきて。もちろん、離婚したいわけじゃないんです。ただ、このままでいいのか、ここでないどこかへ行きたい。そんな感じ。自分のわがままだとわかっているんですが」
たとえば、友人たちと会いたいと思っても、いちいち夫にお伺いを立てなければいけない。それを「相談」ととるか「お伺い」ととるかによって、自分の気持ちは異なる。ナホコさんは、「お伺いを立てなければいけない」と思ってしまうタイプなのだ。
「子どもがいるから、自由に夜出かけることはできない。この日は出かけたいので、早く帰って来てもらえるかしら、ダメかしらとまず夫に聞くしかないんですよね。夫がノーだったら、私は決して出かけることはできない。そういう些細な積み重ねが、心の奥に澱のようにたまっていっている」
日本ではなかなか子どものめんどうを見てもらえるシステムがない。ましてや、母親が遊びに行きたいから、という理由では誰かに来てもらうにも気が引ける。つまり、妻や母に自由な時間がないのが問題なのかもしれない。
「食べさせてもらっている」負い目
「仕事を辞めなければよかったと思うことはあります。夫に食べさせてもらっている負い目があるんですよね。それが自分の自由度を狭めている原因の一端になっていると思います」
仕事を辞めたのは、あくまでもナホコさん自身の選択ではあったが、実際、続けていくのがむずかしい状況ではあった。夫の仕事は時間が不規則だったので、全面的な協力は得られないとわかっていたからだ。
「夫は気むずかしいわけではないけれど、彼にとっては仕事が第一。その分、稼いできているんだからときっと彼は思っているはず。でも、人のお金で生活しているという負い目は私の中にありますね」
生活のために仕事を分担していると考えられれば、まだ少し気は楽なのだろうが、彼女は「夫の稼ぎで食べている自分」が、どこかすっきりしない。それゆえのもやもや感。
「家事を私に任せている夫は、生活者としては自立していない。私は経済的に自立できない。どっちもどっち、だからそれでいいんだと友だちに言われたんですが、それでも割り切れない。私は結婚というものに向いていないような気がします」
同じようにもやもやしている女性たちもいるのかな。ナホコさんは小さな声でそうつぶやいた。