境遇が似た女友だちとの距離のとり方
つい最近、夫の転勤を機に故郷に戻ったチアキさん(45歳)。旧友たちと再会を果たすも、どう距離をとったらいいかわからないこともよくあり、困っているという。
なんとなくお互いに探りを入れてしまう
結婚して15年。夫の転勤先がたまたまチアキさんの故郷に近かったため、家族で東京から引っ越したのが今年の春。中学に入ったばかりの長女と小学生の長男がいる。
「一応、県庁所在地なんですが東京とは比べものにならないくらい街が小さい。だから繁華街などに行くと、幼なじみにばったり会ったりすることが多いんですよ」
仲がよかった女友だちは、彼女が帰ってきたことを知っているが情報が行き渡っているわけでもない。ばったり会ったとき、「どうしたの? 離婚したの?」と言われたこともある。
「故郷に帰ってくるのは離婚した場合だけじゃないのにね。何人かに言われてみて、不思議な反応だなあと思っています。夫の転勤で帰ってきたとわかっても、なんだか探りを入れられるんですよね。夫がどこに勤めているのか、私自身が仕事をしているのか、どこに住んでいるのか……。多くの場合は向こうも家庭をもっているので、いったんよそに出た私が今、どういう生活をしているのか知りたいんでしょう。それで最後に、またねと別れるんですが、だいたい連絡先は教えあわないことが多いですね(笑)」
既婚で子どももいて、同じような境遇のはずなのに、連絡先を交換していいかどうか迷っている感じが伝わってくるという。
「一度、よそに出た人をどう迎えていいかわからない、どう距離をとったらいいかわからないと思っているのかもしれません。私が勤務していた会社もたまたまこちらに支社があるので私も仕事を続けていますし」
パートでなく正社員だとわかったとたん、「ふうん、またね」と言った友人もいるそうだ。
「既婚、子どもありという共通点だけでは心を許せないと言われているような気がして、なんだか寂しいです」
気まずいPTA
仕事をしながらも長男の通う学校でPTAの役員を引き受けてしまったチアキさん。
「仕事をしているから、が理由にならないんですよね。ほとんどの人がパートで働いているし。だけど先日、役員会の日にどうしても抜けられない会議があって、事前に連絡した上で遅れて役員会に行ったんです。連絡してあったのに、『こんなに遅れるなんて聞いてなかった』と嫌みを言われました」
遅れたくて遅れたわけではない。平謝りに謝ったが、他の人たちの冷たい目線がつらかったという。「私は故郷だからと気楽に戻ってきたんですが、周りから見ればやはり“よそ者”なんでしょうか。中学時代の同級生も役員にいるものの、全然庇ってはくれない。ある意味で、地方の都市って周りの人のことがわかっている分、むしろ世界が狭くて束縛感が強いですね。早く夫に別の地域にまた転勤してほしいくらいです」
せっかく帰ってきた地元、知り合いが多い土地なのに、わかりあえるはずがかえってわかりあえない。そんなもどかしさをチアキさんは感じているようだ。