私は「貧乏くじ」を引いたのか!?
人生、自分が選択できることとできないことがある。選択できることのひとつが「結婚」だ。だが自分で決めたことだって後悔はつきまとう。
「友人たちと30歳前には結婚したいよねと言っていたんです。28歳で結婚した私がいちばん乗り。当時はみんなに羨ましがられましたよ。30歳で第一子、33歳で第二子。子どもにも恵まれて、『なんだかんだ言っても、あなたがいちばん幸せだよね』と言われていた」
マイコさん(43歳)はそう話す。ところが、人生、いつ何が起こるかわからない。マイコさんの同い年の夫が3年前にうつ病を発症、休職を余儀なくされた。
「ちょうどそのころかな、30代前半で結婚して3年たらずで離婚した友人がいたんです。シングルマザーで大変だという話を聞いていたんですが、その彼女が再婚。しかも相手が会社役員。どうせ高齢なんじゃないのと思っていたら、なんと5歳も年下。しかも惚れられての結婚なんですって。彼は初婚。人生、そんなこともあるのねと思っていたら、昨年、ずっと未婚だった友人が42歳にして結婚。これまた相手は同世代。相手はすでに都内に広いマイホームをもっていて、彼女も専門職を続けながら幸せな生活を送っているらしい。それに比べて私は……とすっかり落ち込んでしまったんです」
義父の死、姑との同居……
マイコさんは結婚後に夫の父親が急死したため、姑をひきとって同居した。子どもたちのめんどうを見てもらいたかったのだが姑はそれを拒否。保育園のお迎えにさえめったに行ってくれず、彼女は自身の母や妹に助けてもらいながら子育てをしたという。
「結婚当初は共働きということもあって、お互いになんとなく家事分担をしていたような気がするんです。週末、たまった洗濯物をしていると夫は掃除をしてくれている、という感じで。ただ、姑が来たころから夫は家事をやらなくなった。いちばん忙しい子育ての時期だったのに」
姑は現在70歳になったが、元気で周りに友人も増え、年金を小遣いにして遊び回っているという。
「私の作ったものを食べるのがイヤみたいで、食事は別です。彼女は食べたいものを作って部屋で食べている。子どもたちには優しいみたいですけどね。舅の遺族年金もあるはずなんだけど、うちには一銭も入れてくれない。光熱費の一部くらい入れてもらえないかと夫に打診してみたけど、夫は言えないようですね」
この先、おそらく姑を看取ることになるのだろう。だがマイコさんは「愛情はもてませんから、施設に入ってもらうしかない」と淡々と言う。
羨ましがられた頃を思い出すことも
周りに羨ましがられた結婚当初のことを思い出すことはあるとマイコさんは言う。そして考える。
「どうしてもあのとき結婚する必要があるんだろうか。どうしても結婚したい相手だったのだろうか」と。
その後になって友人たちの人生が変わっていって、自分だけが割りを食ったような気持ちになっているのだ。1年の休職ののち、ようやく少しずつ働き出した夫だが、心身ともにあまり調子がいいとは言えない。
「その分、私ががんばらないといけないんですが、かなり疲れてきました。子どもたちもまだ小さいし、もし夫が会社を辞めたりしたら生活が立ちゆかなくなる。不安です。30歳前に結婚したいなんて思わず、もっとじっくり相手を見きわめてもよかったのに。なんだか自分だけが貧乏くじを引いたような気がして……」
ただ、見きわめようとして彼と結婚しなかったら、今でも未婚かもしれない。少なくとも今いる子どもたちには巡り会えていない可能性が高い。
「まあ、子どもたちは宝物ですからね。それでもやっぱり他の友人たちの幸せぶりが目につきますね。他人の幸せに目がいくのは、今、自分が幸せではないからだと思いますが」
ふうっと大きなため息をついたマイコさん。状況は変わるものだ。「貧乏くじ」はいつの日か「幸せくじ」へと変わっていくかもしれない。いや、変えていこうという姿勢が重要なのではないだろうか。