夫婦関係がぎくしゃくしていると感じるとき
ある日ふと、夫の受け答えに違和感を覚えたり、最近ゆっくり話していないなと感じたり。多忙な日常に紛れて、気づくと「これって、うまくいってないんじゃない?」と思うことがあるという女性たちの声は多い。
「だからといって、正面切って話し合いましょうというほどのことでもない。子どもの学校行事などがあれば、その話題で話せるし。そういうときは話し合って軌道修正しましょうということになるんでしょうけど、実際、わざわざ話し合う機会もないんですよね」
ヨリコさん(41歳)はそう言う。結婚して10年、8歳と7歳の年子を抱え、彼女自身も契約社員として働く身。とにかく毎日が慌ただしくて、夫とじっくり話す時間がとれないのは当たり前になっている。
「それでも先日、ふっと思ったんですよ。子どもが産まれてから、子どものこと以外で会話したことがあったかなって。好きで一緒になったはずなのに、時間的にはもちろん精神的にも余裕がない。テレビを観ている夫の横顔を見て、この人は何を考えて毎日を過ごしているんだろうと思って」
さりげなく、「今、何考えてるの?」と尋ねればよかったのだろうが、彼女はその一言を口に出すのが怖かったのだという。
波風立てないのがいちばんだけど
その裏には、「よけいなことを話して波風立つのがめんどう」という思いがある。
「話すより早く寝たいんですよね、私が。だから夫がもし興が乗って話し出したらめんどうだなと。こうやって夫婦の気持ちは乖離していくんでしょうか」
忙しい時期に夫婦でゆっくりと時間を過ごせないのは当然ではある。だが、すべてを「めんどう」で流してしまうと、のちのちあまりに気持ちが離れてしまっていることに愕然とするかもしれない。
「私もそうでした。50代半ばになってから、夫とは完全に家庭内別居。長年、寄り添えなかった気持ちを急に戻そうとしてもむずかしいんですよね。気づいたときに、夫婦ふたりだけの時間をもっと過ごしておけばよかったと思っています。わざわざ話し合うんじゃなくて、たとえば近所のカフェでちょっとお茶を飲むだけでもいいし、預けられるなら子どもを預けてふたりきりで食事に行ってもいい。そういう時間を年に数回でももてれば、今のような状況にはならなかったんじゃないかと思っています」
50代後半のリョウコさんは、しみじみとそう話してくれた。週末の夜、昔、デートしたときに行った映画のDVDを観ようと誘うだけでもふたりの雰囲気は異なるはずだと彼女は言う。
夫婦関係は生もの。放っておいたら腐敗していくかもしれない。