32歳、3児の母。20代で結婚、出産、離婚を経て…

「浮気」「DV」「借金」。いわゆる離婚の3大理由以外の理由で、離婚を選ぶ人が増えているという。20歳で結婚、続けて3人の子を出産し25歳で3児の母に……。それでも離婚を決意した、32歳、マミさんのケース。

浮気、借金、暴力が離婚の三大理由と言われて久しい。今も変わりはないのかもしれないが、それ以外の理由で別れる女性たちも少なくない。では三大理由以外で女性が離婚を決意する理由は何なのか。それを探っていくと、「今どきの夫婦のありよう」や「妻が夫に求めること」などが見えてくるかもしれない。
 

20代で離婚… 3児の母、マミの場合

高校時代からつきあっていた同い年の彼と、短大卒業時に結婚したマミさん(32歳)。関東北部で生まれ育った。

「いわゆるデキ婚です。彼は高校を卒業して、親と同じ職人になって。ふたりとも地元が好きだったし友だちもたくさんいるし、こういう人生も幸せだなあと思っていました」

20歳で結婚、半年後には出産。親や友だちにも祝福された。2年後には第二子、25歳のときには3人の子持ちに。

「何人でも産んでやると思っていました。たくさんの子どもに囲まれるって楽しいから」

だが、そんな人生が狂ったのは27歳のとき。彼の父親が突然死、仕事がたちゆかなくなったのだ。そういうときの男は弱いというのがマミさんの実感。

「私は子どもを自分の親に預けて、とりあえずスナック勤めを始めました。だってお金がなかったら生活できないもの。だけど彼は荒れて昼間から酒を飲んで寝ているだけ。姑もがっくりきて寝込んでしまうし。保険もろくにかけてなかったから、舅の遺産もほとんどない。そもそもあの家に貯金はなかった」

そこで現実に目覚めたのは、マミさんだけだった。
 

20代のうちに人生をやり直したかった

短大を出てすぐ結婚、それからは子育てに明け暮れていたマミさんは、スナック勤めで初めて「世間」に目を向けた。

「スナック勤めといっても、ただお酒を作っていればいいわけじゃない。世間話のひとつもしなければいけないんですよね。それからは新聞を読んだりニュースを見たり。お客さんの勤め先に合わせて話題を振ったり、いろいろ勉強しました」

夫もようやく腰を上げ、ツテを頼って就職した。地元の小さな会社での営業だったが、最初は張り切っていたという。

「だけどどうも人間関係がうまくいかなかったみたい。彼も小さな世界で生きてきたから。結局、会社を辞めて警備員の仕事をするようになりました。だけどそこで今度は姑が倒れて……。家族なんだからみんなでがんばろうよと私は言ったんですが、夫はもう『なにもかもイヤになった』と。父親の自覚がなさすぎる。若くして結婚するってこういうことなのかと、私自身も情けなかった」

どうしたらいいのか、誰にも知恵が浮かばなかった。マミさんの両親は、とにかく子どもを連れて帰ってこいというばかり。

「夫ときちんと話し合おうと思いました。結婚してすぐ子どもが生まれて、考えたら夫とふたりで向き合ったことがなかったから。だけどすぐ、それはムダだとわかりました。彼も疲れ切っていたんでしょう。お互いに、結婚した当時の情熱も愛情もなくなっていた。生活を再建したいという前向きな考え方ができない彼と、これ以上一緒にいても意味がないと思って、私から離婚を切り出しました」

30歳前に人生をやり直したいと強く思ったそうだ。とりあえずは実家に戻った。夫婦ふたり暮らしとなっていた両親は大喜びだったが、マミさんは冷静だった。

「ちょうど父が定年になったので、お金を貸してもらえないかと頼みました。いつまでもスナックでバイトをしていてもしかたがない。うちの近く、学生も労働者も多いのに定食屋がないんですよ。そこで一念発起して店を始めたいと思って」

手頃な店を居抜きで借りられることになり、マミさんは保健所に通って飲食店を出せる資格を得た。近所の主婦で調理師と栄養士の資格をもっている人がいたので手を借りることにした。毎日準備に追われたが開店して2年、今は順調だ。

「別れた夫も地元にいますから、ときどき噂は聞くけど、働いたり働かなかったりしているみたいですね。今思うと、私はあのとき、本当に人生をムダにしたくない、ここで立ち止まっているのはイヤだとずっと思ってた。子どもがいるせいもあるかもしれないけど、自分が立ち止まって進歩していないと感じるような結婚生活だったら、放り出してやり直したほうがずっといいと思います」

時計を見ながら、「ああ、すみません。仕事と夕飯の支度が」と言うと、マミさんは自転車に乗って颯爽と走り去った。

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