40代後半は女のクライシス。そう感じている当事者たちは多い。
「40代前半は心身ともに絶好調だったのに、46歳になったとたんやけに白髪が増えて老眼が出てきて、シミも気になってきた。と思っていたら、なんだかわけのわからない体調不良に悩まされるようになったんですよね」
ミキコさん(48歳)は、ため息をつきながら言った。更年期という言葉は知っていたが、つい先日までごく普通に暮らしていたのに、今はどうにも体調がすぐれない。同時に気持ちも鬱々としてしまうのだという。
「どこがどう具合が悪いとはっきりしていないから困るんですよね。頭痛、胃腸の不良、不眠などなどいろいろなことが重なって気分もすぐれない」
彼女がかなりひどい体調不良を感じるようになったのは、昨春、下の娘が高校を卒業してから。上の子が大学を出て就職、同時に下の娘も遠方の専門学校に通うことになり、急にふたりともいなくなったのだ。それまで低空飛行でがんばってきたのが、一気に墜落したような気分なのだそう。
「医者に行ったら、ある種の燃え尽き症候群というか、もう子どもにも手がかからなくなって一息ついた。ほっとしたことで逆に心身ともにがっくりきたみたいですね。基本的には更年期なんでしょうけど」
そんなとき頼りになるはずの夫だが、子どもたちが独立した今、問われるのが今までの夫婦関係だ。結婚して24年たつが、「正直言って、夫がどういう人間なのかいまだにわからない」とミキコさんは言う。
夫婦関係を再構築する時期なのかも
結婚し、子どもが生まれ、ミキコさん自身もパートで家計を助けながら懸命にがんばってきた。この24年間、夫とどういうやりとりをしてきたか、夫とどんな思い出を育んできたか、ほとんど覚えていないという。
「むしろ、子どもが病気になって大変だったときにあの人は何もしてくれなかったとか、結局、なんだかんだで家のことは全部私がやってきたとか、夫へのいい感情はあまりないんですよね。むしろ夫がストレスだったかもしれない。だからふたりきりになった今、よけいに気分がすぐれないんじゃないかな」
多くの家庭は子ども中心に回っていくから、ミキコさんの告白は他人事ではないはずだ。
「とはいえ、下の娘に仕送りもしなくちゃいけないので、まだまだ本当はラクになったわけではないんです。がんばらないといけないのにパートに行くのがやっと。最近は食事を作るのもつらくて、出来合いのものを買ったり冷凍食品をチンしたり。夫は『病名もついてないなら、怠け病じゃないのか』と苛立っています。そう言われるとますます落ち込むんですよね」
男には更年期のことはわからない。個人差が大きいから、なにごともなく過ぎてしまう人もいるし、さまざまな要因が重なってミキコさんのようにつらい思いをする人もいる。更年期外来などに夫を連れていって医師から説明してもらう手もある。大事なのは、ここで夫がどれだけ歩み寄れるかなのだ。そうしなければ、今後、長く続く人生をふたりで過ごしてはいかれない。
「一度、夫とはきちんと話したいと思っています。私が感じている、自分の体調への危機感、夫婦の関係の危うさを夫はまったく感じていないから」
妻の更年期は、夫婦の関係の危機の第一歩なのかもしれない。そして夫婦関係再構築の第一歩でもある。