世界遺産ならぬ「日本遺産」とは?
世界遺産ならぬ「日本遺産」なるものをご存じでしょうか?
文化庁では平成27年度から、地域の歴史的魅力や特色を通じて日本の文化や伝統を語るストーリーを「日本遺産」として認定する取り組みをスタート。すでに67件が登録されています。
「日本遺産」が一般的な文化遺産などと違うのは、認定されるのは「もの」ではなく、「ストーリー」であるということ。ストーリーの中核には、建造物や遺跡・名勝地、祭りなど、地域に根ざして継承・保存がなされている有形・無形文化財にまつわるものがすえられています。
これまで個々の遺産は「点」として指定・保存されていましたが、それらをストーリーでつなぐことで「面」としてパッケージ化でき、地域の魅力を発信しやすくなるのがメリットといえます。
ストーリーのテーマは、自然や産業、祭り・風習、生活文化などさまざま。過去には、いまや海外でも人気の忍者の姿に迫る「忍びの里 伊賀・甲賀―リアル忍者を求めて―」(滋賀県甲賀市、三重県伊賀市)や絹産業で家計を支えた女性に焦点をあてた「かああ天下ーぐんまの絹物語ー」(群馬県桐生市、甘楽町、中之条町、片品村)などユニークなストーリーも認定されています。
新規認定は13件!2018年度の「日本遺産」認定一覧
認定は年に一度。自治体から申請を受け付け、日本遺産審査委員会での審査を経て認定されます。
平成30年度は、葡萄やワイン作りの歴史を語る技術や建物が葡萄畑に溶け込んでいる『葡萄畑が織りなす風景-山梨県峡東地域-』(山梨県山梨市、笛吹市、甲州市)や桃太郎伝説にちなんだ『「桃太郎伝説」の生まれたまち おかやま ~古代吉備の遺産が誘う鬼退治の物語~』(岡山県岡山市、倉敷市、総社市、赤磐市)など全13ストーリーが選ばれました。ちなみに申請件数は76件だったそうです。
【平成30年度「日本遺産」認定一覧】 ※ストーリーのタイトル(申請者)の順に記載
- カムイと共に生きる上川アイヌ~大雪山のふところに伝承される神々の世界~(北海道上川町、旭川市、富良野市、愛別町、上士幌町、上富良野町、鹿追町、士幌町、新得町、当麻町、東川町、比布町)
- 山寺が支えた紅花文化(山形県山形市、寒河江市、天童市、尾花沢市、山辺町、中山町、河北町)
- 地下迷宮の秘密を探る旅 ~大谷石文化が息づくまち宇都宮~(栃木県宇都宮市)
- 明治貴族が描いた未来 ~那須野が原開拓浪漫譚~(栃木県那須塩原市、矢板市、大田原市、那須町)
- 宮大工の鑿(のみ)一丁から生まれた木彫刻美術館・井波(富山県南砺市)
- 葡萄畑が織りなす風景-山梨県峡東地域-(山梨県山梨市、笛吹市、甲州市)
- 星降る中部高地の縄文世界―数千年を遡る黒曜石鉱山と縄文人に出会う旅─(長野県茅野市、富士見町、原村、諏訪市、岡谷市、下諏訪町、長和町、川上村、山梨県甲府市、北杜市、韮崎市、南アルプス市、笛吹市、甲州市)
- 旅人たちの足跡残る悠久の石畳道 ―箱根八里で辿る遥かな江戸の旅路(静岡県三島市、函南町、神奈川県小田原市、箱根町)
- 「百世の安堵」~津波と復興の記憶が生きる広川の防災遺産~(和歌山県広川町)
- 「桃太郎伝説」の生まれたまち おかやま ~古代吉備の遺産が誘う鬼退治の物語~(岡山県岡山市、倉敷市、総社市、赤磐市)
- 瀬戸の夕凪が包む 国内随一の近世港町~セピア色の港町に日常が溶け込む鞆の浦~(広島県福山市)
- 鬼が仏になった里「くにさき」(大分県豊後高田市、国東市)
- 古代人のモニュメント -台地に絵を描く 南国宮崎の古墳景観-(宮崎県西都市、宮崎市、新富町)
“ストーリージェニック”な日本遺産は今後の注目度大
文化庁では今年4月に、首都圏・関西圏の18~69歳の男女1000人を対象にしたインターネット調査『「日本遺産」と「旅行」に関する調査』を実施しました。それによると、「日本遺産」について「知っている」と回答したのはわずか29.4%。一方で「興味がある」と回答した人は82.6%にのぼり、今後注目は高まっていきそうです。
また旅行に関しての項目で、他人に共有したくなる旅行中の写真や動画として最も多く挙げられたのは「有名な観光スポット」が59.0%で最多でしたが、「特別なストーリーや逸話がある場所・もの」が52.4%でそれに続き、「“インスタ映え”する美しい風景やグルメ」の49.0%を上回る結果に。
2018年の注目用語のひとつに「ストーリージェニック」という言葉があります。単純な見た目だけでなく、思わず発信したくなるようなストーリー性のあるものに使う表現ですが、日本遺産はまさにストーリージェニックな旅先といえるでしょう。
歴史や背景のおもしろさ知れば、その場所への興味も一層湧くはず。また、一過性のブームで終わらず、長く人の興味を惹きつけるものにもなるでしょう。次の旅先の候補には、日本遺産も検討してみては。